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おだまり!  作者: 倉名依都
17/33

16.転移

あはは、と立体映像の神サマと一緒に笑いながら、こんなことじゃいかん、と思い直したね、俺は。


「神サマ、俺は行きたいと思ってんだ。多少準備もしたけど、公爵令嬢の状況、教えてくれる?」

「ああ、もちろんだよ。

帝国の名前はイェシーバ帝国。で、皇太子はブライトンというんだ。

婚約者の公爵令嬢は、ジュラルディン。サスキント公爵家の一の姫だね」

え~っと……イェシーバ? サスキント? ま、いいか。


「公爵家と帝室は親戚関係にあるからね、普通は公爵家から皇太子妃は出ないんだけど。

この世代はたまたま非常に恵まれているというか、血縁が薄くてねぇ、皇妃も公爵夫人も帝室と血縁がなかった。千載一遇というので、皇太子妃が公爵家から迎えられることになった」」

うわ~~、スッゴ! 

人権?それって美味しいの? つー世界なんだなぁ~~

自己決定権は迷子中かぁ。


「皇太子も一の姫も健康に育ったので、姫が12歳になってから婚約式が行われて、ふたりは初めて顔を合わせた。

皇太子は別に女性に特別な好みはなかったし、母皇妃の後姿を見て育ってきたからね、役割を果たしてくれるなら、まあ、誰でもよかった。

ジュラルディンは美しいし、ラッキーと思ったんじゃないかな。

紺色の長い髪は緩いウエーブが掛かっていて、グレーの虹彩なんだよ。

幼くとも十分に美しいうえに、母親は妖艶な美人で婚約者を決闘で決めた伝説の侯爵令嬢だからねぇ。実は結構武闘派で、毎朝ランニングしてる人なんだけどね、まあ知ってるのはごく少数さ」


「本人は?」

「そこがねぇ」

「好きな子がいた?」

「いや、特には。そもそも出会うチャンスがない育てられ方だよ」

「そうか、生まれながらの皇妃候補だもんな、そうなるよな」

「そゆこと。

単に嫌だったんだよ。12歳ころの女の子って、男子のこと気持ち悪がらない?」

「あ、わかる。

坂下とその話をしたことがあるけど、ニキビだのヒゲだの、脂っぽくなる男子がキモワルらしいね。

12歳って、日本じゃ小学校6年か中学校1年なんだよな。

女子が男子に近寄りたがらなくなる頃かなぁ」


「そうらしいねぇ。

まあ、そういう年齢的なこともあるんだと思うけど、ジュラはそもそも男と言っても父と二人の兄、精々執事や護衛騎士くらいしか接点がなかったところに、いきなり婚約者だろ?

で、婚約式でワルツを踊ったのよ、ふたりで」

「うわ~~、ムリゲー。皇太子その時何歳? げ、16歳か、高1年か2年だなぁ。中1の女子に高2の男子をあてがうとか、ゲロゲロ~

4年後の夫ですよとか言われても、キモワルとしか思えないだろよ、気の毒」

「だよね。帰宅して全身を擦るように洗って、手なんか石鹸で10回以上洗ったよ」

おい、見てたんかい!


「で、今ジュラちゃん何歳?」

「15歳だね~、来年結婚なんだけど」

「ええー! 16歳で結婚かよ。 無茶苦茶じゃん。児童保護法ないのか。

児童生徒に性的行為をしてはならない!」


「そうなんだよ、わかってくれてうれしいねぇ。

要するにさ、寿命が短いわけよ。

ここの惑星の、たとえば、君が住んでる日本だと、平均余命とか80歳越えてるでしょ?

それって、今年生まれた赤ちゃんはたぶん80歳以上生きるよ、ってことじゃない。

でも、帝国は皇族でも60歳行けば長生きなんだよ、全人類平均で40歳そこそこ」

「そうか、還暦で長寿か」

「カンレキ? ちょっと待って」

神サマは一瞬沈黙した。用語を検索しているのだろう。

「ああ、12の動物が1年担当して、10支か。公倍数を求めて60年か、一巡りして生まれた年の組み合わせに戻ったって意味ね、なるほどね~、おもしろいね。こういう数え方もあるんだね、四則計算が普及してなくても意外と覚えやすいね。

うん、わかった」


「つまり、早く死ぬから早めに子どもを産めってことなんだ?」

「まあ、そんな感じなかぁ、正直言ってよくわからないんだ。

最初は普通だったんだよ、僕の星でも。16歳で結婚とかなかった。人は25,6歳から結婚し始めて、ひとりかふたりの子を産んだ。

子どもが乳幼児期に手厚く保護されて、高い確率で無事に大人になっていたからかな。

次第に結婚年齢が低くなって、王族や貴族から順に若年齢結婚が目立つようになってねぇ」


「なるほどねぇ、皇太子妃の出産ともなれば、HPポーション浴びせるようにしても助けちゃうわけだ」

「そうだよ。王家の女性が出産時に出血多量とかで死ぬことはないね」

「おまけに、生まれた子どもは貴族夫人が乳母になって育てるから、別に母親が精神的に子どもでもいい、ってか!」

「ま、そゆこと」


「よしわかった、神サマ、この件俺ががっちり引き受けるぜ。

大体なー、16歳とか高校生だろ。

通学電車で、左手は吊り輪右手は自作の単語帳で、1日10個英単語を覚える、そういう年齢なんだよ。

それを結婚させて、早々出産させる? どんな虐待だ!」


「まあ、まあ、落ち着いて、落ち着いて。

僕としてはすごくありがたいけどねぇ。

本当にいいの? 公爵令嬢って女の子よ?」

「おう、気にすんな、俺が男だからいいんだよ、な」

レンはにやりと笑った。

「なぁ、神サマ、どんな外見でも、俺は男だぜ。

皇太子がどんないいオトコでも、金があっても権力があっても。なんちゅーか? 18歳の俺が、19歳のヤローに惚れると思うか、趣味が違いすぎる」


「そうかい、頼めるかい」

「いいとも、思いっきりやってやる。

どうせ俺の命は大して長くない、何もできないまま死ぬと思っていたよ。

16歳で結婚させられそうな女の子のために何かできるなら、ずっといい人生だったと思えるさ」


「うん、お願いするけど、どうする?

依頼を終わらせたら男に戻りたい?」

「あ、うーん」

男性体への情報再移転か~、バグや情報劣化で泣きを見るかもなぁ、う~ん。


「いや、いいわ。ありがとうな、神サマ。

うまくいったらジュラと入れ替わるわ。

ジュラが結婚してもいいと本心から思ったら、侍女と姫が入れ替わればいいんだから」

「それでレンはどうするの?」

「あー、そうだなぁ

坂下が、依頼が終わったら会いに来て、とか言ってたからなぁ。

旅に出るのもいいかもなぁ」


神サマはにっこりと笑った。

ヒトの愚かさも勇気も、この神サマはたくさん見てきた。

この賢い男の子は、遺伝子の悪戯で病とともに生き、若いままに天寿が尽きかけている。生涯の半分を、ただただ活字を友としてベッドで過ごしてきた子が、自分の守護する惑星で生き直せるのは悪くない


「それじゃあレン、行こうか。

交代した時のために、身分と資産は思いっきり盛っておくよ。王国ひとつ分くらいね。

それと、こちらのことは任せておいて、苦しまずに静かに亡くなったようにしておくよ」

「そこはよろしくな、神サマ。

おふくろがあまり泣かないようにしてやってくれると助かる」

「わかったよ。

こちらこそジュラルディンを頼むね、本当に思い詰めてるんだ。

でも彼女を失うことは僕の星にとってすごくよくないことなんだ。

僕の惑星のためには、彼女が幸せな出産をして女の子を産んでくれること、その女の子が更に女の子を産んでくれることが必要なんだ」

「ああ、全力出すぜ。なんか遺伝子的な問題があるんだな、それを失いたくないとか、そういう系?任しとけよ、少なくとも死んでたまるかと思わせてやるぜ。

失敗した時は俺のクローン遺伝子でなんとかなるかもしれねぇしな、神サマ」

神サマはビミョーな表情になった。


「そうか、そうなんだな、コピーじゃダメなんだな。生き残らせて女の子を産んでもらわないとなんないのか。 逆に言えば、万が一の場合は皇太子の嫁にならなくてもいいんだな」


「うん、そうだよ、大事なのはジュラルディンだよ、代わりがいないんだ。 

頼むね、レン」

神サマは頷き、レンはゆっくりと意識を失った。


失った意識の中に、ジュラルディンの記憶情報と、レンが公女として生きて行くための情報、さらにジュラルディンを侍女として滑り込ませるために神が改竄する前後情報が大量に流しこまれる。


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