第三章「ストレガ義賊団と商隊の裏事情」 6
状況を整理しよう。
敵のゴーレムは剣戟、炎が効かない、氷をもって封印することも無理だった。おまけに再生能力がある。あと試していないのは大きな衝撃をぶつけることだが、私たち三人、いや全員ともハンマーなどの武器は持ち合わせてない。
「マティーニ、あの氷をぶつけるなんてことはできないのか?」
「精霊術師はそこに現象を起こすだけよ。風を操ったりすることはできるけど、その場にあるものを移動させたりはできないわ」
「くそ、どうするんすか!」
打てる手が出てこないからかガフが焦り始めている。せめて対抗できる武器があればだが、無いものを願っても仕方がない。
……武器と言えば、先ほどガフの剣がゴーレムに張り付いて落ちていった。あれは何だったんだ?
土や草には反応しなかった、剣のみがそうなっている反応。思いたるとしたら磁石がすぐに思いついつくが、だとしたらあの岩石すべてが磁石だというのだろうか。
しかし地中にある岩石が全て磁石だったというのも不可解だ。それなら岩石そのものに磁石の力を付与してしまうほうがいいだろう。
付与というのは、つまり、何者かそういう現象を操る存在がいて、ゴーレムを操っているといるということか?
「ガフ落ち着いてくれ。状況の確認だ! 周囲にはゴーレム以外には何もいないか?」
「いないっすね。どうしたんすか」
「ということは――――操っている存在のはゴーレムの中にいるということか」
「どういうことよ!」
私は二人に、ここまでの状況を整理し、自分の考えを手短に話した。
岩石が磁石のような性質を持っており、それを付与する存在がゴーレムの中に存在する可能性。
「なるほど、あの巨体は鎧というわけね。確かに筋は通っている」
「だとして、どうするんすか? あの岩石めちゃくちゃ硬くてどうしようもできないっすよ!」
そうだ、それだけではいけない。中にいると思われる存在を引きずり出すには岩石の鎧を何とかしないといけない。威力の高い衝撃を絶え間なくヤツに与えないと―――。
ふと、脳裏にダイキリの部族の記憶が蘇ってきた。あれはいつのことだったか、空から氷の塊が半日の間絶え間なく降ってきたことがあった。中には拳ほど大きさの氷もあり、幸いだれもケガはなかったものの、家屋が破壊され普及するのに時間がかかった。
あの威力なら岩石であってもただでは済まないはずだ。そしてそれができる存在がいる。
「マティーニ、あの氷の塊を解いて、代わりに空に氷を作れるか。」
「出来なくはないけど、大きくなるまでに落ちてくるわよ」
「それならば、拳ほどの大きさにして落としてくれないか。一つではなく複数。風を操れるのだから使えばなんとかなるはずだ」
「それならできるわ。でも狙いはどうするのよ、そんな複雑なことに加えて狙いをつけろなんて無理よ」
「そこは私が行く。どうやらあのゴーレムは私をよく狙ってくる。私がおとりになってヤツをあの場にとどめておくから、降る前に合図をくれ」
「……わかったわ。でもね、無理は無しよ」
「わかった。ガフはやつの本体を見つけるのを頼む。可能なら攻撃も」
「わかったっす。まったくあんたリーダーに向いてるっすよ」
話はまとまり私はゴーレムに向かい飛び出した。
「こっちだ!」
槍を薙ぐようにゴーレムの足に打ち付ける。
吸いつくような手ごたえ、やはり磁石のようになっている。
「―――――――!!」
叫び声と共に振り上げるこぶし。大丈夫だ。よく見れば避けることは可能のはずだ。
大きく下がり、振り下ろされたこぶしを回避する。
達人のようなぎりぎりの回避はしない。とにかくヤツをこの場にとどめることを優先させる。
「まだまだ!」
風が体を打ち付けて、足をさらおうとするのを耐える。
再びゴーレムがこぶしを振り上げてくる。
それを今度は左に避け、そのままゴーレムに向かって走る。
股の下を抜け、再び足に槍を打ち付ける。
「―――――――!!」
声を上げこちらを振り向いてくるゴーレム。これでマティーニとガフに背を向ける形になった。
もう少しだ、もう少し時間を稼げ!
「次!」
三度のゴーレムからの攻撃。今度は左右から挟み込むように両手を合わせようとしてくる。
大きく後ろにステップを踏む。二度飛び、最後に大きく後ろに飛び込む。
地面に倒れこむ形になったが、馬から落ちたときの要領で体を回し、膝をつく体制に戻してから立ち上がる。
「出来たわ! 落とすわよっ!!」
マティーニが声を上げた。私は急いで距離をとる。
その少しの間に氷の粒がパラパラと降り始めてきた。
やがてその氷の塊は大きく、岩の雪崩がごとくゴーレムにぶつかり続ける
ぶつかる氷は岩石を打ち砕き、抜き、ゴーレムは瓦解を始めていった。
「ガフ! 岩石以外に何か見えるか!」
「見えたっす! 胸のあたり赤い宝石みたいなもの!」
「氷の雨が止んだらそれを壊すぞ!」
やがて氷の雨が止み、ゴーレムは完全に崩れ去った。
しかし再生し始めたのか、徐々に地面が盛り上がり始めていく。
「ガフ、宝石を砕くぞ!」
「おうっす!」
盛り上がる地面、突き出す岩石に足を取られないように気を付けながら私は赤い宝石に走り寄る!
「くらえっ!」
持っている槍を叩きつけ破壊を試みる。
鈍い音と共にヒビが入る。
だが次の瞬間、聞いたことのない何かがはじける音と主に私の槍は吹き飛ばされた。
「くっ」
「これでとどめっすよ!」
追走してきたガフがショートソードを叩きつける。
さすがに二度の衝撃に耐えられなかったのか赤い宝石は砕け散った。同時に紫の光が一瞬周囲に走り、あたりの地面の盛り上がりが止まった。
どうやら、なんとかなったようだ。
「か、勝ったっすよ!」
「ああ、助かったよ、ガフ」
「いやー。あんたのおかげっすよ」
「二人とも無事! 浮かれている場合じゃないわ、早くギムレットとシャンディに合流しましょう!」
そう、ここはまだ魔物の巣窟。いくらゴーレムを倒されたといえ、消耗しきる前に脱出しないといけない。
私たちはマティーニの声に従い、先行したギムレットたちと追いかけることにした。




