第三章「ストレガ義賊団と商隊の裏事情」 4
私たち5人は森林地帯を甘い匂いを目印に歩いている。
風が抜けるたびに周囲の草葉が揺れ、そのたびに獣の襲撃の可能性が脳裏をよぎり警戒心が上がる。
私は周囲に視線を送りつつ、武器として貸し出された槍を杖代わりに進んでいく。
半刻ほどだろうか、何度かの進路を変更しつつ、木々の隙間を抜けつつ、森の奥へ奥へと進んでいく。
やがて開けた草原に出た。
「あの草か。マティーニ、どうだろうか」
目的の薬草以外にも複数の花や植物が咲き乱れている。
私はその中から一番匂いが強い草を選びマティーニに確かめた。
「ええ。ほら見なさい! あんたたちの鼻がおかしいのよ!」
マティーニ以外の三人は確かめるように鼻を動かしているが、やはり何も感じないようで首をかしげている。
「残念だけど、マティ。私には分からないわ」
「全然わからんっす」
「俺もだ。まてまて、二人ともそんな顔しなさんなって?」
かなりはっきりとした濃い匂いのなのだが、確認できるのは私とマティーニの二人だけのようだ。
マティーニは納得できないのか頬を膨らませている。
「もういいわ。とにかく取りましょう。みんないい? 事前の打ち合わせでも確かめたけど、薬草を抜いた瞬間、私たちは襲撃にあう可能性が高いわ。シャンディとギムレットが薬草を抜く、私を入れた残りは、三方向から魔物の襲撃に備える。いいわね」
ふてくされながらも目的は間違えず、彼女は指示を出す。
その確認に全員はうなずいた。
そこから手早く近づき、私たちは打ち合わせ通りに薬草を取り囲む。
「こいつでいいのかい?」
「ええ、そうよ。早く抜いてしまいましょう」
ギムレットとシャンディは薬草を抜き始める。
濃い甘い香りが寄り強烈に漂う。むせ返るほどではないがかなり強烈なにおいだ。
「マティーニ、これはかなり匂うな……」
「ええ、甘すぎてちょっと苦手なのよね、この匂い」
警戒を怠らないように周囲に気を配るのも忘れてはいけない。
槍を構え、葉擦れの音に耳を傾け、視線は周囲をまんべんなく、一点に集中しすぎないように気を配る。
ややあって、ギムレットたち採取組が声を上げる。
「終わったぜ。早く離れちまおう」
「ちょっとまって! 匂いが消えた。いつものパターンなら魔物が来るわ!」
マティーニの静止の声に私も周囲のにおいを確かめる。
確かにあれだけはっきりとしていた甘い匂いが消えかけている。
ふと、鼻から匂いが下に逃げていく奇妙な感じを覚える。
どういうことだ。まさか……。
「皆、下だ! ここから退避しよう!」
私はとっさに警戒の声を張り上げる。
みんなが呆けた顔をしたが、次の瞬間、地鳴りに近い音がし始めたので急いで退避を始めた。
薬草を抜き取った場所の地面が盛り上がっていく。
その盛り上がりは私たちの伸長の三倍以上に膨れ上がり、高い部分からその体が露出してくる。
現れたそれは岩石でできた体躯、手足が生えているので人に近い形をとっていた。
「ゴーレム! まじっすか! やばいっすよマティーニ姐さん!!」
ガフが声を上げる。
マティーニも渋い顔で現れた魔物をにらみつけている。
「でもやるしかないわよ! こんな奴に追いかけながら周囲に気を配るなんてあんたできるの!」
「無理っすよ!」
涙目になりながらガフは剣を抜き前に出る、私も槍を構え彼に続き、マティーニを後ろに控えるようにした。ギムレットとシャンディは後ろを警戒するために大きく下がる。
「行くわよ! 私たち三人で攻撃、ギムレットとシャンディは退路の確保。倒さなくてもいい、動けないようにして逃げるわよ!」
彼女の号令で戦闘が始まった。




