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ルコアル精霊譚  作者: 鏡読み
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第三章「ストレガ義賊団と商隊の裏事情」 3

 マティーニが薬草を取りに行くといった森林地帯は拠点にしている村から1日ほど歩いたところにあった。あたりを木々が埋め尽くし、獣道が入り組む天然の迷宮。その中を霊素の影響を受けた獣や、人知外の生物などがうごめいている。これらの人知外の怪物を私たちは総じて魔物と呼んでいる。

 さすがにそのようなところに行くにあたって、三人のうち二人は戦闘技術が護身程度の実力なので、もう二人義賊団から同行者が付いてきていた。


「燃えて! 爆ぜろ!!」


 マティーニの力強い声。

 次の瞬間、私の眼前に飛び出してきた狼のような獣は全身を炎に包まれ、爆発四散した。


「ふっ、ふふ、あはははははー、ひゃー、スッキリするわ」

「さっすが姐さんです! 俺なんて剣を振る暇すらなかったっす」


 豪快に笑うマティーニのそばで妙な訛りを交えながら同行者の一人であるガフは剣をしまいはじめた。

 短髪でがっしりとした筋肉質の体つきの男性だ。皮をなめした防具を巻き付けている。身長はやや私より高い。武器は小ぶりなショートソードを左右の腰に4本ぶら下げており、状況により、片手、二刀流、投擲と魔物の攻撃をけん制し、敵の攻撃をうまくいなしている。


「見てください、この狼の皮。マティの精霊術でも燃え尽きていないわ! すごいどうして!」


 爆発四散した狼の元へ駆け寄り地面に落ちた皮を拾っていく女性がシャンディ。

 私たち5人の中では一番背が低く、短めの髪もあいまって遠くから見ると少年のようにも見えなくもない。彼女の役割としては薬師。傷薬や薬草などを持ち運び、ケガや毒に対応するようにしている。


「なんだあれは、精霊術の枠を外れている」

「だよなぁ。それに、おいおい、なんか人格変わってないか」


 私とギムレットは慣れた動きの三人を眺めながら、ほぼ立ち惚けるしかなかった。

 ややあって、拾うものを拾いきったのかシャンディがカバンを背負い戻ってくる。

 その様子を確認しマティーニは声を上げた。


「さあ、休憩はおしまい。どんどん行くわよ! 目的地はまだ先なのよ!」


 彼女の掛け声にそれぞれ返事を上げ、私とギムレットは左右、ガフは先頭に、マティーニとシャンディを囲うように陣形を組みなおし、森の中を進み始める。

 魔物たちは基本的に単独で行動しているので、こちらは連携し対処を行うのが基本だ。

 私たち三人で魔物の突進や強襲を抑え、そこをマティーニの精霊術で吹き飛ばす。

 精霊術の手順を飛ばして使えるマティーニがいるからこその陣形だ。

 

「マティ、なんだか上機嫌ね」

「そりゃね、シャンディ。最近頭の痛いことが多かったから大いに八つ当たりさせてもらうわ!」


 こちらに害をなす存在の魔物に思わず同情してしまいそうになってしまった。

 しかし気を緩めることはできない。魔物は千差万別でたったの一撃で人の腕を落とせるものから、剣が効かないもの、精霊術などに強い耐性を持っているものもいる。

 警戒を続けつつ、私たちはマティーニの指揮で森の奥まで進んでいった。


「うん?」


 ふと鼻をやわらかい甘い香りがかすめた。草木とは違うどちらかという果実に近い匂いだ。

 周りとみてもそのような果実は見当たらない、気のせいだろうか。

 隣を見ればマティーニも匂いを確かめるように鼻を動かしている。

 そして匂いが流れた向きに進路を指示し、進行を修正し進めている。

 それを二回、三回……どうやら、匂いの方向に進んでいるようだ


「マティーニ、探している薬草というのは甘い香りがするものなのか?」

「へ? そうだけど、あんたわかるの?」

「ああ、先ほどから果実のような匂い感じる」


 私の言葉にマティーニが目を見開いた。

 何か気に障ったようなことでもいったのだろうか。


「ちょ、ちょっとまって。ガフ、先頭交代よ! こいつを前に立たせて」


 ……よくわからないが、気に障ることを言ったのだろう。

 マティーニは興奮しているのか、少し早口でまくし立てた。


「あんた、その匂いの方向に向かって歩いてくれない。アタシの見立てが本当ならそれで薬草を見つけられるから、ほら見なさいガフ、シャンディ! やっぱりあの薬草は匂いがするのよ!」

「そういわれましても、シャンディはどうっすか?」

「以前も言ったけど、私とガフにはその匂いはわからないの。……今も草木のにおいしかわからないわ」


 どういうことだろうか、二人には感じ取れない匂いを私とマティーニは感じ取れている。

 ギムレットにも視線を送ってみたが、俺はさっぱりと手を広げ首を横に振っていた。

 

「さあ、進みましょう。そして私のことを犬だのなんだの影で言っていたやつらを見返してやるのよ」

「それもうだいぶ昔のことっすよ……」


 私はガフと立ち位置を交代し、匂いの方向を目指して歩き始めた。

 彼女に根に持たれるようなことはしないでおこうと、私は心に刻み込みつつ。


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