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エアウォーク  作者: 隠戸海斗
第二期
84/102

第六話

「・・・・・・今の撮った?」

「・・・・・・はい、激写もいいところです先輩」


響と凛菜がポカーンとした様子で試合を見ていた。


「・・・・・・驚いたわね。

 観客が混じってるとはいえ、全国クラスのカズ君率いる明工大3人が先制取られるなんて」

「はい、その前の女の子のダブルクラッチも綺麗で思わず撮ってました。

 結局入りませんでしたけど・・・・・・」


二人の目がキラリと光った。


「これは予想以上にいい拾い物ね」

「はい先輩、帰ったら決定的に調べましょう」

「徹底的ね」

「はい」


そして二人はいつにもましてレポートや写真に手間をかけていった。


「まぁ、カズ君たちがこのまま終わるわけも無いけどね」

「もちろんです先輩。

 まだ始まって3分も経ってません」




「ナイスフォロー竹内」

「ナイスだよ竹内君」


パァン、と竹内とハイタッチする麗奈と俊介。

その後ろにはなんだかいじけた周とそれを慰めるまろんがいた。


「あ、その前のダブルクラッチもお見事でしたよ」

「・・・・・・うん、別に泣いてなんか無いよ」


やがて俊介が周の肩を叩きながら「惜しかったよ」とフォローすると元気を取り戻した。


「よし!この調子でいこう!」

「「おう!」」

「うん!」

「はいです!」


そして5人はそれぞれマークに付いた。




「・・・スマン、綺麗に抜かれた」

「お前があっさりダブルクラッチ決められるとはな。

 いや、入ってはいないけど」


謝る上松にカズは笑顔で答える。

抜かれて情けないというような叱咤は見られない。


「金の卵、見つけたぜ」


そう言ってクックックッと笑った。

そして。


「上松、俺はあの女の相手をするぞ」

「・・・・・・分かった。

 だが俺もあの背が高い奴の相手をしないとならない。

 それにこっちには観客も混じってるしなぁ」

「じゃあ吉田に働いてもらおうか。

 俺も手を貸すよ」


そう話しながらノブはコートの外から上松にパスを出し、試合を再開させる。

上松は吉田にパスをだす。


「ボールとられてもすぐに止めてやるから、好きに攻めていきな」


そして吉田は観客だった高校生にそういいながらボールを渡した。

高校生は頷いてドリブルで進んでいった。

その後ろに吉田はついていく。

これはオフェンスでもディフェンスでも役に立つ位置取りだ。

攻めている味方がボールを奪われてもすぐにマークにつけるし、守っている味方が抜かれても同様にマークにつける。

右から抜かれたら右に、左から抜かれたら左に、と。

後ろの者が足止めしている間に、前の者は敵を挟み込むか他の敵のマークについたりできるのだ。


さて、高校生の相手についたのは麗奈だった。

なんとか抜こうと身体を左右に振り強引に突っ走ろうとするが、麗奈が伸ばした手にボールを奪われてしまう。

そのまま麗奈は攻め込もうとするが吉田が目の前に立ちはだかり、ドリブルをしながらも足を止める。

吉田の作戦通りだ。

麗奈は吉田を抜こうと色々手を打つ。

ドリブルする手を左右入れ替えたり、身体を左右に振ったり。


(・・・・・・コイツ、結構器用だな)


吉田がそう思っていると麗奈の後ろからボールに手を伸ばそうとしている高校生の姿が見える。


(よし、とってやれ)


吉田は麗奈の意識をこちらに向けたままボールをとらせようとしていた。

だが。



(・・・・・・?一瞬視線が動いたね・・・・・・)


麗奈は吉田のただそれだけの動きで、後ろから誰かがボールを狙っているのか?と察した。

こちらもチラッと周囲を見る。

まず目に入るのは竹内と上松。

今竹内に渡すのはキツイか・・・・・・。

続いて目に入るのはまろん、その近くにいるのは中学生だった。

あれなら抜けるだろう。

そう思いながら麗奈はボールを吉田から遠ざけるように身体を引く。

必然的に後ろの高校生にボールが近づく。


((今だ!))


吉田と高校生が同時にそう思った瞬間、ボールに高校生の手が伸ばされる。


「わっ!?」


麗奈は驚いたようにボールをキャッチし、ドリブルを止めてしまう。


(チャンスだ!)


それを奪おうと吉田が手を伸ばす。

が、次の瞬間には麗奈は高校生に気を取られたような姿勢のままほぼ背後に位置するまろんにパスを出していた。


「んな!?」


こちらの動きを察していた!?

驚いた吉田はパスを止めることができず、鮮やかなパスはまろんの手に渡ろうとしていた。

が、竹内と上松の影からノブが飛び出してきてボールをカットした。


んなところにいたの!?と思う間もなく高速でこちらのゴール下まで切り込んでくるノブ。

それに合わせてぴったりついていくのは周だった。


(・・・・・・ドリブルしてる分いつもより遅いかもしれないが・・・・・・俺に追いついてくるとは・・・)


ノブは走りながら周に感心していた。

そしてゴール下。

ノブはドリブルをやめてジャンプする。

ボールは右手、周のいる側だ。

身長差からして周が止められるのはボールを頭上まで持っていかれる前、まさに今この時しかない。

ボールが外に零れてしまっても構わないからとにかく止める!

そう思って手を伸ばす。


だがノブはそれを見切っていたかのようにボールを左手に持ち変える。

そしてゴールを行き過ぎたところから後ろにボールを放り投げる。

ボールは何度かリングに跳ね、そして網を通過した。

周が先ほど失敗したダブルクラッチ、それを今度はノブが華麗に決めてみせたのだ。


わっと歓声が上がる。

得点はあっさり同点だ。


「ダブルクラッチってのはこうやるんだよ」

「ぬぬぬぬ・・・!!」


余裕の笑みを浮かべるノブに、周は悔しそうに声を上げる。

ノブは笑顔で自陣に戻っていった。


「あ、周ちゃん・・・」


ドンマイ、と声をかけようと俊介が近寄ったが、周は口元に笑みを浮かべていた。


「・・・・・・ふふふ、やっぱりこうでなくっちゃね」


そう呟いて俊介の存在に気づいた周は、俊介の肩をぽんと叩く。


「やりかえされたらさらにやりかえすよ、しゅんくん」

「あ、うん」


周は俊介が思ったよりもショックを受けていないようだ。

いや、むしろいつも以上に楽しそうだ。


「ほらしゅんくん、パス出すよ」


ボールを拾ってエンドラインの外から俊介に声をかける周。


「うん、分かった」


俊介は答えてボールを受け取る。

そしてすぐに返す。

ドリブルで進んでいくと立ちはだかるのはノブ。


「おし、さぁこい」

「望むところですよ」


両者が相対した。

それを見て俊介は思った。


周ちゃんはいつもの練習でも楽しそうだけど、やっぱり試合している時が一番輝いてる、と。




スピードで振り切れないのは最初にレイアップを止められた時に分かった。

ではテクニックではどうか。

右へ左へ、身体を振り、ドリブルする手を切り替え、ターンし、すぐに切り返す。

しかしあっさりと抜かれるノブではない。

さすが全国区である。

色々試していると、不意にノブの右腕が大きく上がる。


(・・・・・・この下通れるかな?)


試してみようと、ノブの大きく上がった右腕の下をくぐるようにドリブルで切り込む周。


「!」


タタンと踏み込むと完全には抜きされていないが、前進できた。

やった、と思ったのもつかの間、パァンとボールを奪われた。


「え!?」


奪っていったのは吉田。

最初から待ち構えていたらしい。

ということは、先ほどのノブの腕の動きは隙ではなく始めから周を誘導するための作戦だったのだろう。

してやられた。


が、再びパァン!とそのボールは奪われた。


「ん何!?」


思わず吉田が声を上げる。

奪っていったのは俊介。


(・・・・・・まぁ、いきなりあんな隙が出来るのはおかしいなと思ってたけど・・・)


ずっと周の後ろでフォローしていたのだ。

味方の後ろに位置取る、それは先ほど吉田がやっていたのと同じ行動だ。


「くっ!」


吉田がすぐに追いかける。

そしてノブも俊介を追いかけようとする。

しかしそこは周がノブを押さえる。


「!」


走れはするが俊介に近寄れないノブ。

上松は近くにいたが竹内から離れられない。

この状況で竹内をフリーにしてあっさりパスを通されたら誰も止められないからだ。

残るは観客だった中学生と高校生。

しかしそんな二人に止められる俊介ではない。

後ろからは吉田が接近する。

ドリブルしている俊介よりも足の速い吉田と追いかけっこをすれば、すぐに追いつかれてしまうだろう。


だが追いつくには相応の距離がいるのだ。

このまま俊介がゴール下まで行ってレイアップを決めようとすればそれまでに追いつくことは出来ただろう。


しかし彼最大の武器はこの距離から放つロングシュート。


ザッと立ち止まり、シュートモーションを取る俊介。

吉田や観客だった二人が止めに入る間もなくシュートが放たれた。

すぐに上松がゴール下を陣取る。

ゴール下にいるセンターとしては当然の行動だろうが、やはり先ほど麗奈が3Pを外したのを見ていたせいだろう。


スパァンと音を立ててボールはリングを通過した。


一瞬間を置いて歓声が上がる。


得点は2-5、周たちが再びリードを取った。



(ふむ、いいシュートモーションだな)


ノブはアゴをさするような仕草で俊介を見ていた。

そのシュートモーションを見れば普段の練習の仕方やシュートの精度もある程度分かる。

ただ一度のシュートモーションで彼はそれを見抜いていた。


今はいないが、かつての彼のチームメイトにも同様にシュート精度の高いロングシューターがいたからだ。


ノブは走ってきた俊介に声をかける。


「ナイスシュート」


と。

敵から褒められたことで一瞬驚いた俊介だったが、すぐに返事をした。


「どうも」


そして二人はすれ違う。



「ナイスシュート」


今度は周が声をかけてきた。

俊介も今度は笑顔で答える。


「うん、ありがとう」


そして二人はハイタッチした。



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