第四話
最後にやってきた麗奈は公園の人ごみ具合に少々驚いた。
一瞬いつもの不良たちがはやし立てているのかと思ったが、見渡す限りにはいない。
むしろ子供達の方が多いだろうか。
大人や高校生くらいもちらほら見えるが。
ふと、目が合う男がいた。
前回会ったときにあっさりとボールを奪っていった男。
麗奈はまだ彼の名を知らない。
そして笑顔で小さく手を振ってくるのが少し気に入らない。
軽く頭を下げてあとは無視してやる。
「おっす周」
「あ、麗奈ちゃん」
周がドリブルの練習を中断して麗奈の元にやってくる。
「あいつの左右にいるのが仲間?」
「多分。
ちゃんと紹介されたわけじゃないけどね」
「でも三人だけじゃ・・・・・・足りないよね」
「・・・・・・・・・・・・あ、ホントだ。
まだ二人来てないのかな」
言われるまで気づかなかったのかい、と少しあきれる麗奈。
「まだ来るのかもしれないね。
あ、ちょっとボール貸してくれるかい?
走ってきたから身体はほぐれてるんだが、ちょっとボールには触っておきたいんだ」
「うん、いいよ」
と、周からボールを受け取ってドリブルでコートを回り始める麗奈。
「あ、そうだ」
周はそれを見送るとなにやら思い立ったようで、ノブの元へ走っていった。
「どうもこんにちは。
今日はよろしくお願いします」
ペコッと頭を下げる周。
「ああ、よろしく。
すまないね、本来ならこっちから挨拶に行くべきだった」
「いえいえ、お構いなく。
そちらのお二人が仲間ですか?」
「ああ、そうだ。
こっちが吉田、こっちが上松だ。
どっちも高校、大学と一緒だ」
「「よろしく」」
ノブに紹介された二人が頭を下げる。
周も頭を下げた。
そして上松の方を見ながら尋ねる。
「背高いですね、何cmあるんですか?」
「ん?196だ」
「うわ、竹内君より高いわ・・・」
「竹内ってそっちの背の高いのかい?」
「はい、そうですよ。
あ、そういえばまだ二人いないみたいですけど・・・・・・」
「このコートには来てるよ」
「そうなんですか。
あ、それでは試合のときにまた改めて」
周がそう言って話を切り上げると再び頭を下げて立ち去っていった。
「・・・・・・にしてもノブ」
「なんだ?吉田」
「最近思ったんだが、お前ずいぶん明るくなったな」
「・・・・・・まぁ、な」
吉田の言葉に少し肩を落とすノブ。
「・・・・・・うるさいのと別の大学に行ったらなんだか寂しくてな。
自然とこうなった」
「あ~、はは、そうか」
「確かにカズはうるさかったが・・・・・・お前がそうなるとはな」
そう言って笑い会う。
そこには彼らにしか分からない空気があった。
「・・・・・・今ノブくんに挨拶した女の子・・・・・・」
「はい、先輩。
あの白い髪の子ですね。
結構可愛いです」
レポートを書きながら、カメラを持つ凛菜に話しかける響。
まだ試合前だというのに二ページ目が埋まろうとしている。
写真のスペースが取ってある他は、「今日の試合には同大学の選手と共に参加の模様。」とか「今日の高橋展也もいつも通り格好いい。」とか「上着の隙間から見える黒シャツで試合に挑むのであろうか。今から楽しみである。」などと書かれてある。
「・・・・・・まさか対戦相手かしら」
「いえまさか。
あれはどう見てもファンです」
「なるほど、ファンね、図々しいわね」
「でも「握手してください」とかやってなかったみたいです。
その辺は馴れ馴れしくない、程をわきまえたファンだと思いますよ先輩」
「なるほど、いいところに目をつけたわね」
そういうと響は再びレポートにペンを走らせ始めた。
「見ず知らずの可愛い女の子が挨拶にいく辺り、高橋展也の魅力は今日も溢れんばかりである。」と書き、レポートは三ページ目に入った。
「あ、凛菜?今のノブくんの横顔も撮っておきなさい」
「バッチリ撮ってありますよ先輩、20枚くらい」
「さすがね、凛菜」
この調子で試合最後まで持つのだろうかというと持つのである。
なぜなら彼女らが持って来たカバンには予備のレポートとフィルムが大量に入っているのだから。
ちなみに取材ということで会社経費、ゆえに彼女達の懐は欠片も痛まないのである。
時刻は2時までもう10分を切ろうかというところだ。
各々練習したり身体を動かしたりする中、ノブが立ち上がり周たちの方に向かう。
一方周たちもそれを迎える。
「時間までまだあるが、全員揃ったみたいだし。
ウォームアップも済んだら始めちゃおうかと思うんだが」
「はい、いいですよ」
周が頷くとノブは吉田と上松の元へ戻っていった。
「・・・・・・あの二人も全国クラスかい」
「うん、高校も同級生って言ってたから間違いないと思うよ」
「あんたこういうときにはホント頭が働くんだねぇ」
挨拶に行ったとき、さりげなく探りを入れていたようだ。
事バスケに関しては、いつもの天然混じりなイメージからかけ離れる周であった。
「でも、結局残りの二人は誰だか分からないんですよね」
まろんがそういうと腕組みする周。
「う~ん、来てるとは言ってたけどね。
何処かから隠れて私たちのデータを取ってたり・・・・・・」
と、そこまで言って周、麗奈、まろん、竹内は揃って、先ほどからレポートを取ったりカメラを構えたりしてる二人の女性を見る。
「いやいや・・・・・・多分あの人たちは違うから」
俊介がそういうと納得したのか視線をそらす。
「・・・・・・まぁ、最悪その二人も全国クラスと思ってた方がいいだろうな」
「だね。
なんにしても今更出来ることなんて無いし。
今までの練習の成果、発揮しよう」
竹内と俊介がそういうと、残りの三人も頷く。
「みんな」
周が口を開いた。
「前回の全国大会では・・・・・・」
「・・・全国には行ってないぞ。
全国に通じる大会な」
竹内の言葉に笑いながら頷く周。
「そうそう、そうでした。
あの時は笹塚さん達に酷い目に合わされちゃったけど・・・・・・。
でも、あれから私たちもきっと成長してる。
その成果、皆に見せてやろうよ!」
「うん!」
「ああ!」
「おう!」
「はいです!」
五人は円陣を組み、手を合わせる。
「行くよ!グレートパワフル一億万年ウルトラグレートミサイルアタッカーズ!」
「そのチーム名は変えようよ」
「そのチーム名は変えなよ」
「そのチーム名は変えろよ」
「そのチーム名は変えましょうよ」
総ツッコミをくらう周であった。
「てへへ・・・」
「・・・ったく・・・・・・まぁ、おかげで変な緊張は消えたかな」
「そうみたいだねぇ」
竹内と麗奈がそういう。
意図せず、意図してかもしれないが、周の一言でチームに笑顔が戻ったのだった。
コートに立つ周、俊介、麗奈、竹内、まろん。
そしてその向かいに立つ元悠里ヶ丘高校の全国クラス、ノブ、吉田、上松。
おそらく今でも全国クラスなのだろう。
「・・・・・・あの・・・・・・残りの二人は?」
俊介がそういうとノブがズイッと周の前に出てくる。
「その前に挨拶だけ済ませようか。
今日はよろしく」
「はい、よろしくお願いします」
両者は握手を交わした。
そしてノブはくるっと背を向けると観客に声をかけた。
「よし、みんな。
うちは二人余ってるんだが、よかったら誰か入らないか?」
と。
「・・・え!?」
「なっ!?」
「・・・マジ?」
「本気かよ・・・」
「え?え?」
周たちにも衝撃が走る。
まさか本気で言っているのか?と。
「・・・・・・ホントにやりやがった」
「まぁ、いいだろこういうのも」
吉田と上松は納得の上のようだが。
観客からもざわめきが上がる。
が、やがて何人か手が挙がる。
「じゃあ、そこの君とそこの君おいで。
あぁ、もし疲れたら他の人と代わってもいいからね」
ノブはそう言って高校生と中学生くらいの観客二人をコートに入れる。
「・・・・・・というわけだ。
残りの二人は観客から入れさせてもらうよ。
俺たち三人は抜けないけど。
そちらも自由に入れ替えていい。
これでどうだい?」
ノブはそう言って挑発的に笑う。
一般人を入れるということは正直舐めてるということだ。
それを受けて周たちも笑った。
「じょーとーです!」
「二言はありませんよね」
「ブッ潰してやろうじゃん」
「舐められたもんだな」
「や、やってやります!」
そしてコート決めが行なわれ、全員が配置に付いた。
試合が始まる。
「・・・・・・で、審判は?」
「・・・・・・あ」
上松の言葉にマヌケな声を上げるノブ。
この辺うっかり屋さんらしい。
結局バスケに詳しい観客がいたのでその人に笛を渡し、任せることになったのであった。
キャラクターにうっかりミスをなすりつけるなんて酷い作者がいたものだ(




