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エアウォーク  作者: 隠戸海斗
第二期
79/102

第一話

秋もそろそろ終わり、冬にかかろうかという今日この頃。

いつもの練習場には何故かポカーンと口を開けた一同の姿があった。

その原因はというと。



「・・・・・・な、なにさ・・・・・・」

「れ、麗奈ちゃん・・・・・・だよね?

 髪の毛切ったの?」

「そ、そうだよ、見ての通りさ」


周の言葉に麗奈が照れながら答える。

元々下ろせば長かったリーゼント風の髪型、それを短くし、前髪は軽く目にかかるくらいに整えられたショートヘア。

確実に不良にしか見られなかった前の髪型に比べれば、このショートヘアは確実におしゃれであろう。

もっというならば。


「か、かわいい~!」


である。


「ちょ!」


周がそう叫びながら麗奈に飛びついた。


「なになに、麗奈ちゃんってば。

 やっぱりおしゃれすればこんなに可愛いんじゃない。

 元々スタイルもよかったんだし~。

 あ~も~、なんていうの?可愛い!!」

「ちょ!やめ!ひっつくなって!周!ちょ!誰か止めて!」


ぎゅ~っとへばりつき、顔に擦り寄る周を引き剥がそうとする麗奈。

助けを求めるが周りにいるのはまだポカーンとしている方々か、もしくは周同様に擦り寄ろうとしている方々。

どちらも助けになりそうにない。


しばしそんな状況が続き、やがて俊介が周を引き剥がしてどうにか事を納めた。


「で、でも・・・・・・なんでまた急に髪形変えたんですか?」

「ん?いや、特に理由はないんだけどね。

 あ、そうか、しゅんはまだ女の髪型に意味を求めたい年頃なんだね」

「え?いや、そういうわけでは・・・・・・」


一応先ほど助けたはずなのだが、急にからかわれる。

助けなくてもよかったかなと少しだけ膨れる俊介であった。


「でもこれから寒くなるよ?

 髪の毛長いほうが温かいでしょ?」

「そんな言うほど変わらないでしょ」


周の言葉に麗奈が笑いながらそう返す。


「むしろ少しでも長く布団に入っていたくなるからね。

 髪型セットの時間を短縮できるし、まぁいいかなって」

「へ~」


周は自分の髪を撫でながら話を聞いている。


「そういう周は髪型ずっとそのままかい?」

「うん、大体これくらいになるように切ってもらってる」

「そういえば子供の頃からそうだよね」


俊介の言葉に頷く周。


「長いと走るときになびいてね、なんていうの?風を感じるのが好きなの」

「ほ~、いいね、周らしくて」

「えへへ~」

「んでも、周が髪の毛短くしたらどうなるんだろうね」


ふと麗奈がそういう。

その言葉に一同は、ん~と考える。


白髪ショートヘアの周。


「・・・・・・似合わないわけじゃないけどちょっと違和感あるかな」


恋二の言葉に頷く一同。

周はまだ考えているが。


「ん~、そうかな」

「じゃあさ」


ふと、愛奈がゴムを取り出す。

どこから取り出したのかは分からないが。


「ちょっとお姉ちゃんの髪型いじってみようよ」

「ふぇ?」


ゴムを両手にじりっと近寄る愛奈。

別に髪形を変えることに抵抗は無いが、その愛奈の構えにびくっと引く周。


「あたしもちょっと見てみたいかな」

「れ、麗奈ちゃん!?」


愛奈同様にじりじりと近寄る麗奈。


そして周が追い回されることになるのだった。


「・・・・・・練習はまだやらないのか」

「・・・あはは・・・・・・そうみたいだね・・・・・・」


竹内と俊介が思わず呟く。

どうやらまだしばらく髪型の話を引っ張るらしい。



「はい、ポニーテール」


「はい、ツインテール」


「はい、三つ編み」


「はい、お団子頭」


愛奈が手際よく周の髪型を次々に変えていく。

愛奈自身髪は長い方なのでもしかしたら自分で色々遊んでいるのかもしれない。


髪型が変わるたびに周りから声が上がる。

男性陣含め。


「後ろで髪をまとめるだけでも印象変わりますね」

「・・・ツインテールのお姉ちゃん、新鮮・・・」

「三つ編みって最近あんまり見ない気がするな」

「髪が長いからお団子は結構大きくなるんだね」

「ほらほら、髪の毛絡まってるよ、ちゃんとしてあげな」


そんなこんなで周の髪の毛でたっぷり遊んだ後、ようやくボールを取り出したのであった。



「うぅ~・・・・・・動いてなかったからね、ちょっと寒い」

「そうだね、準備運動からしっかりやろうか」


手を擦り合わせている周に俊介がそう提案すると、あっさりと受け入れられた。


「よし、じゃあラジオ体操でもやろうか」


周がそういうと皆は笑った。

笑いながらもしっかり付き合う辺りノリがいい。




そうやって身体をほぐしているときだった、不意に来客が訪れたのは。


「・・・・・・む?」


身体を捻った拍子にコートを囲う金網の入り口が見える。

そこに中学生くらいの少年がいた。

そしてその後ろから身長190弱くらいの茶色い上着の男が入ってくる。


「ほら、今日も使ってる」

「ああ、ホントだな」


少年の言葉に頷く男。



「・・・・・・なんでしょうね?」

「さぁね・・・・・・、コート使わせてほしいとかかね」


まろんの言葉にそう返す麗奈。

自分で言っておいて、あぁありえるかもと納得している。

やがて向こうからこちらに男がやってくる。


「・・・・・・ちょっと話聞いてみる」

「あ、僕も行くよ」


しばらく柔軟をしていた周だったが、やはり男が気になるのか走っていった。

俊介もそれに続く。

周が話を聞くというところにほんの少し不安を覚えたからだというのは内緒だ。

それから、この男をどこかで見た気がしたからだ。



「どうも初めまして」

「ああ、初めまして」


ペコッと頭を下げる周。

頭は下げないもののあいさつをする男。


「えと・・・何かご用でしょうか」

「ああ、リーダーは誰かな?」

「私です」


男の言葉に返事をする周。

少し不安そうな表情だ。

俊介もこの男が何を言い出すのだろうかと少々不安だ。

男は二人の顔を見て口を開いた。


「いや、俺は正直あまりこんなこと言いたくは無いんだがね。

 ここしばらくこの公園の練習場をずっと占拠している人たちがいると聞いたんだ」

「・・・・・・!」


それは・・・・・・間違いなく自分達であろう。

男は厳しい口調ではないが言葉を続ける。


「気軽に輪に入れるような連中ならいいんだが、ちょっとした遊び気分で来た奴らはちょっと使わせて欲しいと言い出す勇気がないんだと」

「え、でも、私達は特にそんな拒否したりする気は・・・・・・。

 誰でも練習に受け入れますよ」


周はそう返す。

しかし男の態度は変わらない。


「そう気軽に入れる空気ならいいさ。

 でもここで練習したいと言い出せない連中もいる。

 特に遊び気分で来た小中学生とかはね」

「・・・むぅ・・・・・・」


言われてみれば確かにそうかもしれない。

本格的な練習ならまだしも遊びで来たのならば別の場所に行ったり帰ってしまったりするだろう。


「公園は公共の場だ。

 本来ならこうして独占することは控えるべきなんだよ」

「・・・・・・うゅ・・・・・・」

「た、確かにそうです」


押され気味な周に助け舟を出す俊介。


「占拠と取られてしまっても仕方ない使い方をしていたかもしれません。

 ですが僕達にそんな気はありません。

 今後は少しでも自重しますし、グループ外の方々も積極的に受け入れますから・・・・・・。

 何卒、これからもここで練習させてもらえませんか?」


俊介はそう言って頭を下げる。

周もつられて頭を下げる。


「うん、話の分かる人たちでよかった」


と、男がそういう。

顔を上げると男の笑顔が目に入った。

そしてくるっと後ろを向く。


「OKだとよ、これからは遠慮なくここで練習しなよ」

「やった!じゃあ皆にもそう伝えてきます」


少年は男の言葉に飛び跳ねて喜ぶと、何処かへ走っていった。

とりあえず一安心といったところか。

これからは少し試合形式の練習も控えた方がいいのかもしれないが、ひとまず練習自体は続けられそうだ。

ほっとする周と俊介。



「でさ」


と、言葉を続ける男。

まだ話があったのかと一瞬ずっこけかける二人。


「まぁ、建前はこの辺にしておいてだ。

 俺の本題はここから」


今のが建前?

では本題とはどんな話であろうか?


「えと・・・どんなお話でしょうか?」


俊介がそういうと男が返事をする。


「ああ、俺もバスケをやっているんだ。

 もしよかったらなんだが・・・・・・こっちはこっちでメンバー揃えるからさ。

 試合やらないか?」


その言葉に一瞬二人の思考が止まる。


「・・・し、試合ですか・・・・・・?」

「試合ですか!」


そして聞き返すような口調の俊介に対して元気のいい周の言葉。

それはまるで「大歓迎です!ぜひとも!」と言っているかのようだった。

おそらく実際これから言うだろう。


「大歓迎です!ぜひとも!!」

「そうか、ホントに話の分かる人でよかった」


予想通りの周の言葉にため息をつく俊介。

いや、予想より大分元気がよかった気がする。


「あ、あの、試合って・・・・・・ここでですか?」


俊介の言葉に、男は周囲を見渡しながら答える。


「ああ、そうだな。

 天気が崩れないといいけど。

 あ、もしかしてフィールドの慣れとか気にしてるのかな?」


その通り。

屋外、しかもこの場所での試合となればこちらのほうが慣れている分有利なのではないだろうか、と俊介は考えたのだ。

だが男は軽く地面を靴で擦ったり踏んだりしながら答えた。


「大丈夫だと思うよ、これくらいなら。

 俺もこういう環境で練習してたからね」

「おーい、話はまだかい?」


男とそんな風に話をしていると、やがて麗奈がボールを持ってやってきた。

どうやら話しているうちに体操は終わったらしい。


「あ、うん。

 えっと・・・じゃあ、いつにしますか?」



パッと茶色い上着をその場に残したまま、背後から麗奈のボールに手が伸ばされ、あっという間にボールが奪われる。


「!?」

「・・・!?」

「え!?」

「!?」


麗奈がやってきて自分から注意がそれたことを察知したらしい男が、一瞬で麗奈の背後にいた。

そしてそのままドリブルでゴールに向かう。


「んあ!?」


周が目で追ったときには既にゴール下付近。

それほど遠いわけではないがかなり速い。

そこには男の動きに反応したらしい竹内が待ち構えていた。


だが、一瞬男の体が左にぶれ、それに気をとられて動きが止まった隙に右からあっさりと抜かれた。


「!」


竹内が振り向いた時には男はゴールの向こうから、ゴールに背を向けたままボールを放り投げていた。


ポーンと宙を舞ったボールはリングに数回バウンドするとその中を通った。



「1週間後。

 天気が崩れてなかったらメンバーと・・・あとギャラリーも連れて来ようか」


男は上着を拾うと着直し、コートの出口に向かう。


「じゃ、楽しみにしてるよ」


男はその一言を最後に立ち去った。



まぁ、公園で高校生が練習してればこうなりますよね。

俺はここまで見越した上で、公園で練習させていたのさ!(ジャジャーン

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