プロローグ
キィ、と白衣の男性が椅子に背もたれる。
年は60前後。
そして男性の背を見る位置に、同様に椅子に座っている青年が一人。
「レントゲン、スキャン、触診、その他いろいろな検査を行ないましたが・・・・・・結論を述べますと」
そう口を開いた男性が振り返りながら青年に告げる。
「あなたの腕は完治しています。
骨、筋肉、神経、全てにおいて異常はありませんし、無茶をしても再び傷が開くなんて事もないでしょう。
重い物を持ったり運動したりしても大丈夫、医学の面ではあなたの腕は元通りです」
その言葉に青年は自分の左手を閉じたり開いたりする。
「それでも・・・・・・痛みを感じたりするのは精神的なものです。
こればかりは私でもどうにも・・・・・・」
「そうですか・・・・・・」
青年はそう言って立ち上がる。
男性も立ち上がり、彼の腕を掴む。
「痛くないでしょう?もう大丈夫なんです、あなたの腕は」
「・・・・・・はい・・・・・・」
「怖いことなんか無い、また以前のようにスポーツをするのもいいでしょう」
男性は説得するようにそう言う。
だが青年の表情は浮かなかった。
病院を後にしながら、青年は思った。
今回も、検査で異常は見つからなかった。
それはまぁ予想していたこと。
だが、そうだと面と向かって告げられても、どのような証拠を突きつけられたとしても、痛むものは痛むのだ。
とはいえ、四六時中痛み続けているわけではない。
検査中だって痛かったわけではない。
あの医師に触れられた時だって痛くは無かったし、今だって痛くもなんとも無い。
重いものを持つことだって出来る。
ただどうしても、不意に不安が襲ってくることがあるのだ。
不意に転んだり、ぶつかったり、とにかく何らかの拍子に不意に思い出すことがある。
自分が腕を失った時の事を。
そしてあるはずの無い激痛が走る。
そうなると収まるまで動かすことすら出来なくなる。
いつか、この痛みと離れられる日が来るのだろうか?
もし来なければ、自分はもう二度と、
あのコートの上には立てないだろう。
ひとまず二期の主要人物登場。




