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エアウォーク  作者: 隠戸海斗
夏休み&秋休み編
77/102

ちょっと真面目な過去話 斉藤周

世界がおかしくなってしまった原因を探るべく旅をしている途中で、世界を支配しようとしているという魔王の計画を知った勇者一向。

その道中、彼らを助けてくれる不思議なタルに出会った。

そう、テレポート能力を持っていてあっちこっち飛び回る上、姿はタルなので見分けがつかない彼。

その姿を見破った者には行く先々で色々な手助けをしてくれるという。


その名は・・・・・・オーガニクス・ゲッテンシュトラウス・リーベルトリー。

通称オーさん。

その正体、そして目的は誰も知らない。


今日も彼は世界の困った人を助けるべく世界を飛び回る。




「周、そろそろ着くわよ」

「・・・・・・行け、オーさん・・・・・・世界は君を・・・待っている・・・・・・むにゃむにゃ・・・・・・」

「周、起きないと降りそこなっちゃうわよ」

「・・・そう、そこ・・・・・・そのタルが・・・・・・オーガニ・・・・・・」

「お客さ~ん、終電ですよ」

「はっ!ホントですか!?しまった!そんなに寝過ごすとは!!!

 ・・・・・・・・・・・・あれ?」

「起きた?周」

「あ、お母さん」

「そろそろ降りる準備しなさい」

「え?あれ?おかしいな、確か・・・・・・タルが・・・・・・・ん~と・・・なんだっけ?」

「寝ぼけてるの?もう、しょうがないわね。

 今は新幹線の中、幸子姉さんの家に向かってるのよ」

「あっ!そうだった!準備しないと!」



夏休みも終盤、お母さんのお姉さんの家へと旅行に出かけることになった私達斉藤一族。

と言ってもお母さんと私だけなんだけど。

お父さんは遠いところで今日もお仕事です、残念。


お母さんのお姉さんの家はちょっと遠い。

新幹線で2時間弱。

とは言っても、お母さんはもともとそっちに住んでいたの。

高校卒業して今の家の近くに引っ越してきて、そこでお父さんと知り合って結婚して今の家に住む事になったらしいのです。


毎年来てる訳じゃないし、今年も特に行く気はなかったんだけど・・・・・・。

ちょっと思うところがあって提案したらあっさりとOK。

都合よく新幹線も予約できて、こうして出てきたわけ。




駅に着いた私達は荷物をまとめて新幹線から降りる。

私は大きく伸びをする。


「ん~~~、やっぱり座ってるだけだと退屈だね」

「だからわざわざトランプ持ってきたじゃない。

 なのに周ってば寝ちゃうんだもん」


ぷ~っと膨れるお母さん。

だって長距離移動なんて考えただけでつまらないし、電車のゆれ具合ってなんかいかにも眠気を誘うじゃない。

だから仕方ないのよ。


「だいたいお母さんポーカーしかやらないし、めっちゃ強いじゃない」

「もちろんよ、何度も話したでしょ?

 お母さんこのポーカーの腕でいくつもの取引成功させたって」


それってどんな取引だったんだろうね。

何度も聞いたけど全く想像できないよ、お母さん。

と、そのときお母さんの携帯電話が鳴る。


ピッ


「はい、もしもし、幸子姉さん?

 うん、今着いたよ。

 は~い、分かりました~、じゃあお願いね」


ピッと電話を切る。


「幸子姉さん、迎えに来てるって」

「ホント?幸子叔母さんの運転って安全運転で心が休まるんだよね~」

「そうね、姉さん自身車に強い方じゃないからね」


そう、幸子叔母さんは乗り物酔いしやすいから、自分が酔わないような安全運転をするの。

遅くてイライラする人もいるけど、私は好きだな~。

対して叔母さんの娘、久子姉さんは運転がかなり酷い。

どれくらいっていうと・・・・・・ジェットコースターの方が落ち着けるかな?って感じ。

いや、嘘じゃないよ?

多少大げさかもしれないけどね。



そして駅を出て待ち構えていたのは・・・・・・。


「や、周ちゃん。

 それに亜実おばさん」


シュタッと手を上げて出迎える人が一人。

ポニーテールとサンバイザー、っていうんだっけ?あれ、帽子のつばだけのヤツ。

アレがよく似合ってるボーイッシュというよりはカッコイイお姉さん。


「・・・・・・久子姉さん、お久しぶり」

「久しぶり~、周ちゃん子供の頃とは違う意味で可愛くなっちゃったね~。

 どうしたの?テンション低いよ?」

「あ、うん、そんなことないよ、全然元気」


やってきたのは久子姉さんだった模様です。

幸子叔母さんの運転に久子姉さんはイライラする人。

対して幸子叔母さんは久子姉さんの運転に耐えられない人。

なのでこうした迎えの場に久子姉さんと幸子叔母さんが揃うことは無い。

そしてこの場に久子姉さんと、いくらの車をいくらつぎ込んで改造したのか分からないような愛車があると言うことは・・・・・・。


「ひ、ひひ、ひ、久子ちゃ・・・お、お久しぶりね・・・」

「お久しぶり亜実おばさん、相変わらず若いね~」


手を握ってはしゃぐ久子姉さん。

一方顔がだんだん青ざめていく気がするお母さん。

・・・・・・私もなんかくらくらしてきたかも。

何かこう・・・・・・思い出したくない久子姉さんの運転を思い出しそ








「ただいま~、お母さん。

 亜実おばさんと周ちゃんつれて来たよ~」

「まぁ、おかえり久子。

 ごめんね、亜実、周ちゃん、ちょっと近場でタイムセールやってたものだから手が離せなくなっちゃったのよ」


・・・・・・あれ!?車に乗る前後の記憶が飛んでる!?

ジェットコースターよりも酷い運転はしっかり残っちゃってるんだけど!

あ、あれやっぱり比喩じゃなかったし脚色もして無かったよ、うん。

多分この運転に慣れればジェットコースターでも落ち着いてお茶飲んでいられるかも。

いや、でもジェットコースターじゃお茶が零れちゃうかな?

とにかく気になるのはどうして捕まらないのかってことなんだけどね。


「あ、それはともかく、幸子叔母さんお久しぶり~」

「お久しぶり~、相変わらず可愛いのね」

「えへへへ、ありがと」

「それより亜実は・・・・・・」


と、車の後部座席に目をやるとぐったりと横に倒れて口から魂が出かかっているお母さんの姿が。


「ってお母さ――ん!!しっかりして――!!」




お母さんを宿泊用の部屋に運んで、荷物も運んで、ジュースを貰って一息つく。

全く大変な旅ですよ。


「どう?周ちゃん。

 まだバスケ頑張ってる?」


お母さんほどじゃないけどぐったりしている私の横に腰掛けながら久子姉さんが話しかけてくる。

私は笑顔で返事をした。


「うん、頑張ってるよ」

「そう、それはよかった。

 あの日いきなり「お姉ちゃんバスケ教えて!」って言ってきた時はびっくりしたもんだけど」

「あはは」


私は笑いながらあの日の事を思い出す。

私がバスケに衝撃を受けたあの日のことを。


「そうそう、少し休んだら出掛けてくるよ」


私がそう切り出すと、久子姉さんが食いついてくる。


「お?急にこっち来るって聞いたときは何の用かと思ったけど、やっぱり観光?

 それともこっちに心残りな男の子でも作ってたとか?」

「そ、そんなんじゃないよ。

 観光観光」


私はこっちに住んでたこと無いからこっちには知り合いなんていない。

なのに久子姉さんてば突然何を言い出すやら。


「んふふふ~、おねーさんには隠し事しないで話してごらんよ」

「ホントだってば~」

「ま、いいけどね。

 それじゃ後で送るよ、どこ行きたい?」

「え゛?あ、いや、電車で行きますゆえ・・・・・・」

「遠慮しないでさ~、久しぶりなんだから。

 あ、そうだ、この間いい曲ゲットしたんだ。

 それ聞きながら行こうよ」

「え、いや、だから・・・・・・」


あれ?おかしいな、どうしてこんな状況に・・・・・・。






「はい、到着。

 ホントにここでいいの?お土産街とか運動場くらいしかないよ?」

「・・・・・・はい・・・・・・もうホント・・・この辺で・・・ありが・・・うぷ・・・・・・でした・・・・・・」

「いいならいいけど、あたしもちょっと用事あったし。

 あたしのケータイ番号知ってるよね?

 用事終わったら呼んでくれれば迎えに来るよ」

「・・・・・・遠慮しますです・・・・・・」

「あははは、遠慮しなくていいってば。

 じゃ、また後でね」


目的地に到着。

久子姉さんは私を置いて何処かへと去っていった。

やはり何度乗っても慣れるものではない。

いやぁ、ホントに酷い・・・・・・。

日頃皆に「体力あるね~」と言われる理由の一つがこれに耐えてきたからのような気がする・・・・・・。




と、それを嘆くのもここまで。

今日は嘆きが目的で来たんじゃないんだから。


久子姉さんの車から降りた場所から歩いて10分ほど。

大きな体育館に着く。


中に入るのは無料。

今日は特にイベントが行なわれているわけでもない。

一番広い観客席からコートを見下ろす。

板張りの床、ライン、今は仕舞われているバスケットゴール。


手すりを握る。

あの日私はこの場所からその試合を見ていた。




あの日はお父さんもお母さんも一緒だった。

スポーツなら何でも観戦が好きなお父さんが、何か試合がやっていると聞きつけてここにやってきたのだ。

私もお母さんも全然乗り気じゃなかったし、見てもつまらないだろうな~と思っていたのだけれど。


男子高校生のバスケットの試合。

熱気に包まれていた会場。

途中から見始めたにもかかわらず、引き込まれた数々のプレー。

ドリブル、パス、ダンク、ロングシュート。


試合展開はほぼ五分五分。

そして終了間際。

78-79のスコアボード。

外れたロングシュート。


そして目を閉じれば今でも思い出す。


リングに当たり、向きを変えた直後のボールをキャッチしたあの人。


そのまま叩き込んだダンク。




気がつくと、あの日と同じように手すりを握り締めていた。

汗でびっしょりなのも同じ。

周りには誰もいない、静かな体育館。



「・・・・・・あの人・・・・・・今頃どうしてるのかな・・・・・・」


面識も何も無い、ただ自分が一方的に知っているだけの人物。

高校の名前も背番号も、今となっては忘れてしまった。

ただなんとなく覚えているのは頭に巻いた青いバンダナ。

後はそのプレーのみ。


今でもどこかでバスケをやっているのだろうか?

どこかの有名チームに所属して、皆に注目されるような選手になっているのだろうか?



「・・・・・・プロバスケのプレー、テレビで見てみようかな?」


そういえばしゅんくんは雑誌で情報を集めてるんだっけ?

でも雑誌じゃその人のプレーは分からないよね。

残念。



「いつか・・・・・・あの人みたいになれるかな・・・・・・」


いや、多分本心は違う。


あの人のプレーをもう一度見たい。

あの人と対戦してみたい。

あの人と一緒に戦ってみたい。


名も知らぬ相手だから叶わぬ夢と諦めているだけ。



「それでも・・・・・・惹かれ続けた夢だから」


今一度切に願う。



あの人のプレーをもう一度見たい。

あの人と対戦してみたい。

あの人と一緒に戦ってみたい。




もう一度、あの人に会いたい。


その思いを胸に、私はバスケットを続けているのかもしれない。



以上を持ちまして、夏休み編&秋休み編終了となります。

第二部をお楽しみに。



俊「・・・・・・僕の過去話は?」


お前がバスケを始めたきっかけなんて明白だろ。

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