ちょっと真面目な過去話 結城まろん
「あうっ!」
「きゃあ!」
ガシャーン、と音を立てて二人が床に倒れこんだ。
「えと・・・ファール、高杉さん・・・・・・」
「ちょ、また!?」
バッと立ち上がって苦情を言う高杉さんと呼ばれた女の子。
「ごめんなさい、分かってるんだけど・・・・・・今の見た目には・・・・・・」
「あう・・・ごめんなさい・・・・・・」
床に座り込んだままの少女が頭を下げる。
「まったく・・・・・・毎回毎回転ばされてファールにされて・・・・・・やってられないわよ!」
高杉さんはそういうとコートから出て行ってしまった。
「あの・・・・・・」
と、残された少女が立ち上がり、高杉さんに近寄る。
「ごめんなさい、高杉さん。
謝りますから・・・その・・・・・・練習させてください・・・・・・」
「私はもう嫌よ、他の子に頼んで」
少女のお願いもむなしく、高杉さんはプイッとそっぽを向いてしまった。
仕方なく辺りを見回すが、誰も目を合わせてくれない。
「あぅ・・・・・・」
しょぼんと俯いた少女はコートを後にする。
「ごめんなさいです・・・・・・他の方使ってください・・・・・・ぐすっ・・・」
すぐ転ぶ、すぐぶつかる、すぐ泣く。
それが私、結城まろんに対するみんなの評価だと思いますです。
実際その通りなんだと思います。
バスケでちょっと左右に振られると転ぶし、その時相手を巻き込んじゃうこともしばしば。
でもそれで私がファールになることはあんまり多くないのです。
大体10回ぶつかったら8回は相手のせいになるのです。
そのせいで今も高杉さんを怒らせてしまいました。
高杉さんだけじゃありません。
他のみんなも私と練習するのを嫌がってるんです。
試合形式はおろか、パスやシュートやドリブルといった普通の練習でも・・・・・・。
初めは皆もそんなに冷たくなかったんです。
「結城さん、大丈夫?
ちょっと、今のはあなたが悪いよ」
「え、私?
ん~、確かにぶつかっちゃったかも・・・」
そんなやり取りで済んだんですが・・・・・・。
何度も回数を重ねているうちに周りでケンカになってしまって・・・・・・。
「ちょっと、あなた何回も結城さんにぶつかって!」
「わ、私じゃないわよ!今のはこの子が勝手に転んだのよ!」
「嘘!横から見てたけどそんな風には見えなかったわよ!」
「そんな・・・冗談じゃないわ!何で私だけ悪者にされなきゃならないのよ!」
私の練習仲間から一人離れ、二人離れ、そのうち私が悪者にされるのに時間はかかりませんでした。
私とぶつかるとファールにされる。
私と練習すると悪者にされる。
そのうち、私は「他人を反則にして勝つ卑怯者」と言われるようになりました。
それでも他校との試合では一応役に立つため、試合に出させてもらっていました。
けれども・・・・・・三年になって初めての練習試合の時でした。
「先生、私達結城さんとは一緒に試合できません」
「結城さんが試合に出ると、相手チームは反則を取られてばかり・・・・・・」
「私達はもっとまともな試合がしたいんです!」
「相手校からも「反則勝ちを狙うばかりのチーム」って呼ばれてるんですよ!」
「結城さんを試合に出すって言うんなら、私達皆ボイコットします!」
顧問の先生は一生懸命間に入ってくれました。
でも、そのうち今度は先生が悪者にされると思った私は、試合の出場を辞退したんです・・・・・・。
なのに・・・・・・みんなは先生が一生徒に入れ込みをする、差別をする先生だと学校に訴えたんです。
「相手に反則を取らせるのはお前の才能だと思っていい。
他のみんなにはそれを覆すだけの能力がないんだ。
結城、いつか必ず、お前の才能でも反則が取れない相手が現れる。
そういうメンバーと練習すれば、きっとお前はもっと成長できる。
いい仲間を見つけろよ」
先生は、最後に私にそう言って学校を去りました。
そんなことを言われても、私のせいで先生が学校を辞めなければならなくなったというのに続けていくなんて出来ません。
私もバスケ部をやめました。
こんな辛いのは嫌・・・・・・。
私は普通に練習して、バスケを楽しみたいだけなのに・・・・・・。
思えば、小学校の頃から背が小さかった私にとって、バスケをやっている背が高い人は格好良く見えました。
それに憧れて始めた、ただそれだけのつながり・・・・・・。
市内バスケット大会の開催通知を受けたのは、それからしばらく経ってからでした。
三人一組でチームを組み、優勝者を決める大会。
バスケ部はやめても自分でバスケの練習を続けていた私ですが、当然仲間はいません。
私には関係ないと、そのチラシを捨てようと思ったのですが。
「・・・・・・見学くらいは行ってもいいかもしれない・・・・・・」
そして、バスケット大会当日、私はその銀混じりの白い長髪の女の人と出会うのです。
「じゃ、行くよ、まろんちゃん」
「はいです!」
姿勢を低くした周さんが私に向かってくる。
抜かせない、必ず止める!
ドリブルをするその手にボールが触れるときを狙って手を伸ばす。
しかし、周さんはそれを見切り、一瞬でターンして逆側から抜いてしまうのです。
「あぅ!?」
勢い余って転ぶ私。
それはいつものこと。
でも・・・・・・。
ヒュヒュッとゴール下まで接近した周さんはそのまま綺麗にレイアップを決めるのでした。
そう、反則を取られなかったんです。
「大丈夫?まろんちゃん」
周さんが私に手を伸ばしてきました。
「はいです!全然へっちゃらです!」
「抜かれたこと事態はへっちゃらじゃないけどな」
「あう!」
背の高い竹内さんがそう言ってきます。
うぅ・・・もっと練習して上手くならないと。
「でもまろんちゃん、上手くなったよ。
私のボールに手を伸ばす動作なんか速くなったし」
「そうだね、あとはターンにも反応できるようにならないと」
「あと転ばないようにね」
周さんが私を褒めてくれます。
それに俊介さんもアドバイスをしてくれるし。
麗奈さんも・・・・・・笑われるのは恥ずかしいですけど・・・・・・。
「結城、いつか必ず、お前の才能でも反則が取れない相手が現れる。
そういうメンバーと練習すれば、きっとお前はもっと成長できる。
いい仲間を見つけろよ」
先生・・・私・・・・・・ステキな仲間に出会えました。
本当にこんな過去があったのか?ってくらい明るい出会いでしたけどね。
今では周たちと元気にやってます。
皆に嫌われていると言っておきながら、きっちり高杉さんにファールを言い渡す女の子がいるなんておかしい、なんて言わなければ気づくまい(




