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エアウォーク  作者: 隠戸海斗
夏休み&秋休み編
73/102

ちょっと真面目な過去話 近藤恵

まじめな話だって書くんですからねっ!(

私は近藤恵。

柏木第一中出身。

市内ではそこそこ上位の学校で尚且つトップクラスの成績。

学級委員長と学年委員長を務め、生徒会の副会長もやっていたわ。


成績優秀な委員長体質。

それは周りだけでなく自分でも認めていた。



高校は近場でそこそこ進学率のいい悠里ヶ丘高校に入学。

幼馴染の浩明とも腐れ縁で同じ学校に。

コイツ、普段ふざけてるけどそこそこ成績いいのよね。

ま、私には及ばないけど。

この学校に入学できたのも、私がよく勉強見てあげてたからよね。

もっと感謝して欲しいものだわ。



1年4組。

浩明も同じクラス。

ホントに腐れ縁なだけだろうか?

他にも知った顔が少しあるから誰かの陰謀ってわけでもないだろうけど。


そういえばクラスに白い髪の女の子がいる。

私の席のすぐ後ろ。

目立つけど髪を染めてるってわけじゃないらしい。

聞いた話じゃ中学の頃人気者だったらしい。

性格も明るくて人当たりもいい。


そうそう、名前は斉藤周と言うらしい。

ふ~ん、あまねねぇ・・・・・・確かに名前も可愛らしいかもしれない。


ま、凡人たちに人気が出るのも当然かな。

私とは別タイプね。

でもこういう人は上手く付き合えば心強い味方になるわ。

初日だけど声かけてみようかしら。


と思っていたらHR終了と同時にどこかへ行ってしまった。

目当ての部活でも見に行ったのかしら?

初日から部活見学ってのも珍しいわね。



入学した翌日。

クラス委員長を決めると言うので立候補。

同じ学校出身の人の推薦もあり、あっさりと決定。

別に大したことじゃない。

どうせいつものこと。


そういえば斉藤さんは今日はなにやら元気が無い。

昨日何かあったのだろうか?

気になるわね。

様子を見て声を掛けてみよう。



数日後。

斉藤さんは機嫌が治っていた。

何かいいことでもあったのか、元気が無くなった原因が解決できたのか。

まぁ、なんにしても良かったわ。


あ、別に心配してたわけじゃないんだからね?

ただちょっと気になっただけっていうか・・・・・・。


そうそう、それよりも。

みんなの実力が見たいから、と早々にテスト。

まぁ、別に中学の復習程度だから、普段から予習復習を欠かさない私にすれば何の問題も無い。

あっさりと解答欄を埋めていく。

いつものこと、いつものこと。


あら?なにやら見慣れない問題が・・・・・・。

・・・・・・あ、事前に軽く読んでおいた教科書に載って気がする・・・・・・。

そうか、高校の予習も兼ねてるのね、失敗したわ。

とはいえ、そんなものに足を取られてはいられない。

他の問題を先に解き、残った時間でできるだけ解答しておいた。

まぁ、問題は何も無いわね。



さらに翌日。

テストが返ってきた。

私の点数は・・・・・・96点。

あの分からない問題も解法の途中まで書いていたからそこが評価されて加点されてる。

フフン、まぁ、それもひとえに私の普段の努力の賜物と言ったところね。


「ん?恵、お前またそんな高得点とって・・・・・・」


浩明が話しかけてくる。

いつものことね。

なのでいつものように素っ気なく返す。


「別に、いつものことよ」

「ああ、そうかい。

 ところで、まったくわからない問題があったんだが」

「ああ、ここでしょ?

 見覚えあったから後で教科書見てみたんだけど、これこれから習うところみたいよ」

「これから?じゃあ解けるわけ無いだろまったく・・・・・・。

 うわ、お前加点されてるじゃないか」

「努力してるからね」


あんたも頑張りなさい、という意味を込めてイヤミっぽく言う。


「ちぇ、あいかわらず態度がでかいと言うか、遠慮なく言うと言うか。

 胸は小さいくせに・・・ゴハッ!!?」


余計なことを言い出したので鳩尾に拳を一発打ち込んでやった。


こっちだって気にしてんのよ!

男にはわかんないでしょ!この気持ち!

勉強もできて!スポーツもそこそこできて!

身長も伸びてきたと言うのに!ここだけ中学の頃から変わらないという屈辱!!


そう、私はいわゆる「ひんにゅう」というヤツだ。

くっそ~、気にしてるのに浩明め、誰かに聞かれて無いでしょうね?


私はそんなことを考えながら席に戻る。

と。



「わっ!何?しゅんくん100点じゃない!」

「ちょ、声大き・・・」



私は耳を疑った。

何?そんな・・・・・・だってまだ習ってないところでしょ?



わぁっとその人のところに人が集まる。


「うおっ!?ホントだ!」

「すげぇ!!」

「ここの問題全然分からなかったのに!」

「ちょ!見せて見せて!」


周りからもそんな声が上がる。



そんな・・・嘘でしょ?

私だって最後まで解けなくて時間切れ・・・・・・。

いや、時間があっても解けた自信は無いけど・・・・・・。


なんで?どうして?一体どんな勉強してるの?


皆に囲まれて、解法を教えてあげて・・・・・・。


そのポジションは私のものだったのに・・・・・・。



「はいはい、席について」


先生の言葉に皆の騒ぎがようやく収まって席に戻っていく。

その中でその人の顔をチラッと見る。


男の子・・・・・・。

確か林田くんって言ったっけ?

そういえばちょこちょこ斉藤さんと話してたような・・・・・・。

でも特に目立つ人じゃないから気にしてなかったんだけど・・・・・・。

まさかこんなことになるなんて・・・・・・。


要チェックね。



それから1週間。

分からない問題があった時や宿題の答えあわせなどは、みんな林田君のところに集まるようになっていた。

ときどき私のところにも来るけど・・・・・・。


なんだか不愉快。

でも別に機嫌を悪くするようなことじゃない。

今まで当然だったことがそうじゃなくなったからちょっと動揺してるだけ。

それを林田君のせいってことにしようとしているだけよ。


でもそれは置いておいても気になる・・・・・・。

どんな勉強してるのかしら?

私はそう思ってちょっと声を掛けてみた。



「ねぇ、林田くん」

「はい?」


私が数学の教科書を取り出して彼に話しかけた途端、周りの空気が一気に変わった気がする。

「私を差し置いて人気者になろうなんて!」って怒鳴りつけるとでも思ったのかしら。

心外ね、私そんなに小さな女じゃないわ。


・・・・・・胸は別として・・・・・・って何言わせるのよ!



「・・・ここの問題のこの解法なんだけど、ちょっといいかしら」

「ん?ああ、ここね」


彼はそういうと別のノートを取り出してくる。

その間に普段授業で使っているらしいノートをチラッと盗み見る。



ちょ・・・・・・え?

なんか凄く細かいし、矢印とか、色つき文字もいっぱい。

どうなってるのこれ?わけ分かんない・・・・・・。


「あった、ここでしょ?

 ここはね・・・・・・」


そう言って新たに取り出してきた方のノートを広げてみせる。


これは・・・・・・なんて分かりやすい!

授業で習ったところだけじゃないわ!

こんな細かい補足、塾に行ってるか参考書でも買ったのかしら?

まるで予め誰かに見せることを前提としているかのような綺麗なまとめ方!


こんなの、よっぽど完璧に理解してないと作れないわ・・・。

仮に忘れたとしても、これなら簡単に見直すだけで思い出せちゃう・・・・・・。



「・・・・・・ってことなんだけど・・・・・・。

 近藤さん?」

「・・・・・・あ、・・・・・・ありがと・・・」


正直彼の説明なんか全く聞こえてなかった。

っていうか、自分でも理解してるところをどういう風に答えるか気になってただけだから問題は無いんだけど。


なんていうか・・・ポーッとしてて・・・・・・。



それがきっかけで彼のことを事あるごとに意識するようになった。

授業中に解答をミスしたことはないし、宿題関係では先生よりも頼られるし。

それでいてスポーツもそこそこできるらしいし。


それになんというか・・・・・・。

時々見せる笑顔が・・・その・・・・・・かわいい・・・・・・っていうか・・・・・・。



だ、だけど!別に!



私はただ、彼に憧れてって言うか・・・・・・。

今まで私以上に勉強もできてスポーツもできて、人に慕われる人に会った事がないから・・・・・・ちょっと参考にしようかなって言う・・・。


ただそれだけよ!

間違ってもそれ以上は・・・・・・。


その・・・・・・好き・・・・・・なんてことは・・・・・・。



好き・・・・・・。






「どうした?恵。

 頭から煙出てるぞ」

「はっ!?浩明!

 べ、別になんでもないわよ!!」


プイッとそっぽを向く。


「・・・・・・まぁ、昔は見た事なかったけど、最近よく見るからな、お前のそういう顔」

「な、なによ、知ったようなこと言って・・・・・・」

「別に~、ただ長年幼馴染やってないってことさ」

「・・・・・・どういうことかしらぁ?」

「さぁね」


こいつ・・・・・・つかみどころ無いようなこと言って・・・・・・。

何知ったような事言ってるのよ。


「ん?どうかした?いんちょ~?」

「え?近藤さんがどうかしたの?」

「はっ!」


林田君がこっち見てる・・・・・・。

ち、違うのよ!別に意識するようなことは何も・・・・・・。

落ち着いて・・・・・・。


「べ、別になんでもないわ。

 大丈夫よ」

「そう?ならいいけど」

「そ、そうよ、なんでもないわ」



そう、なんでもない。

これはそういう感情じゃない。



私は今日も自分にそう言い聞かせる。

でないと、とても冷静でなんていられないから。



とりあえず隣でニヤニヤしていた浩明は殴っておいた。


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