もっと女の子らしく
「林田君ともっと親しくなれないかしら・・・・・・」
いいんちょこと、近藤恵は部屋の片づけをしながらそう呟いた。
こうしてまめに部屋の片づけをしている几帳面な性格は実に委員長体質だろう。
俊介と恵は決して仲が悪いわけではない。
むしろ交流を持っている方だろう。
実際、宿題や勉強方法などで話をする機会はある。
学校内外問わず。
参考書を買いに行った先で鉢合わせる、なんてこともある。
にもかかわらずもっと親しくなるということは・・・・・・。
「べ、別に・・・付き合いたいとか・・・思ってるわけじゃないのよ。
なんていうか・・・・・・せめて斉藤さんみたいに・・・・・・」
気軽に話したり、一緒にご飯食べたり、一緒に下校したり。
バスケじゃなくても共通の話題を持ったり。
そういうのを「付き合っている」というのではなかろうか。
「ち、違っ・・・!そんなんじゃないってば!!」
誰に言うでもなく、恵は大声を上げて手元の枕を壁に投げつける。
そして我に返って枕を回収する。
コンコン、と部屋のドアをノックされる。
「恵~?なんか大きな音したけど何か倒したの?」
「え!?いや、そんなんじゃないわ、大丈夫」
「そう?ならいいけど・・・・・・。
いらない物まとめたら玄関に置いておいてね」
「う、うん、分かってる」
声の主は恵の母親だ。
枕を投げた音に驚いて声をかけてきたらしい。
慌ててゴミや雑誌をまとめる恵であった。
「んしょ・・・っと」
どさっと玄関にまとめたゴミを置く。
これでよし、明日の朝ゴミ捨て場にもって行けばOKだ。
ふと雑誌の束が目に入る。
母親がまとめたものらしい。
「・・・・・・なにかしら?結構前の雑誌ね」
まとめられた雑誌の表紙、発行日はかなり前のもののようだ。
と、その雑誌の一文が目に入る。
「流行の最先端を行く女を徹底解析!
これであなたも彼のハートを射止めよう!」
「!!」
おもわずがばっと手に取る。
当然紐でまとめられているのでささっと解いてその雑誌を抜き、また元通りに。
パラパラッとめくり、軽く目を通す。
「・・・・・・流行遅れにならないように・・・・・・時代遅れな女は嫌われる・・・・・・?
これが今の最先端・・・・・・友達の輪は広がるし、彼もイチコロ・・・・・・」
ばたん、と雑誌を閉じる。
「・・・・・・これだわ」
何かを思いついたらしい恵。
はたしてどうなるのやら。
翌日、恵が学校に行くと凪さんと野澤さんが話をしていた。
「おはよう」
「あ、おはようございます」
「おはよう、委員長。
ちょっと聞いてよ~」
と、野澤さんがなにやら話しかけてくる。
「何?どうしたの?」
恵は自分の席にカバンを置いたのちに二人のそばに行く。
「昨日さぁ、帰り道に道幅いっぱいに広がって歩いてくる集団がいてさ。
ちょっとワルな人たちに見えたんだけど。
私は何とか避けたんだけど、後ろの人がぶつかっちゃってさ。
その人は知らない人だったんだけど。
で、そしたらその集団、そろってその人に文句つけてさぁ。
たまたま近くを警官が通ったからよかったんだけど。
ホントに酷いと思わない?」
「そうですねぇ、酷いお話です」
野澤さんの言葉に頷く凪さん。
恵も頷きながら返事をした。
「うわ~、それちゃぶるわ。
もうちょ~MMって感じぃ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・?」
唖然とする野澤さん。
キョトンとする凪さん。
その反応を見て、発言した恵自身も固まっていた。
(・・・・・・?今・・・・・・委員長何て言ったんだ?)
(ちょっと何?今の?)
(どうした委員長!?突然何を言い出したんだ!?)
(近藤さん!死語だよ!近藤さん!)
(何?今のもしかしてボケ?
だ、誰か突っ込んであげなさいよ!)
クラス中もざわめいていた。
「あんな古い雑誌なんか鵜呑みにするんじゃなかった!!!」
家に帰ったいいんちょは枕に顔をうずめて泣き叫んだという。
翌日。
(だ、大丈夫よ、今度こそ・・・・・・。
ちゃんとネットやら最新の雑誌やらで情報を仕入れたから、今日こそは!)
「っていうかマジ、今時ワルとかありえないしぃ。
そんなものよりモテカワの愛されスイーツ(笑)」
きゃろん☆
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「僕は携帯で小説読むよりも普通に本を読むのが好きだよ」
(は、林田君が必死にフォロー入れてる!)
(なんて優しい!)
ちなみに。
ちゃぶる→ちゃぶ台をひっくり返す→凄く怒る様子
ちょ~MM→ちょ~マジムカつく




