お前は最後に「ちょっと日光とヨウ素で栄養作ってる」と言う
「ああ、ちょっと済みません林田君」
「はい?」
授業も終わり、HRも終わり、さて帰ろうかというところであった。
支度を終えようとしていた俊介に担任の影山先生が声を掛けたのであった。
「ちょっと手伝って欲しいことがあるのです、いいですか?」
その言葉に思わず手を止めて考える俊介。
何せこれから周と帰宅してバスケの練習をしようというところなのだから。
バスケはまだしも、下校中の周との有意義で楽しい時間が無くなってしまうというのが俊介には残念なのだ。
「おまたせ~、ってどうしたの?しゅんくん?」
そこへやってきた周。
俊介が先生に呼び止められているらしいことを認識してきょとんとしている。
しゅんくんが先生に怒られるようなことするわけないし・・・・・・。
何か頼み事かな?
しゅんくん、結構先生に頼りにされてるし・・・・・・。
「ゴメン、周ちゃん。
ちょっと先生に呼ばれちゃったから先に行ってて」
「え?」
俊介の言葉に周は声を上げて驚いた。
それに、俊介も驚いた。
何で周ちゃんが驚くんだろう?と。
すると周は、ん~と考え返事をした。
「いいよ、待ってるから」
「え?でも時間かかるかもしれないよ?」
「いいよいいよ、ちゃちゃっと行って用事済ませてきちゃいなよ」
そう言って周は俊介を見送る。
自分の事なら気にしなくていいのに、と思いつつ俊介は先生の後についていくのであった。
用事は30分ほどで終わった。
先生に頭を下げて職員室を後にする俊介。
夏の暑さは程よく収まり、秋だというのにまるで春のような暖かさだ。
今日もいい天気だな、と思いつつ教室のドアを開ける。
周ちゃん、待ってるかな?
「・・・・・・ん・・・・・・」
電気は消えていたが外の明かりで十分に明るい教室内。
白い長髪の少女が一人、机にうつぶせていた。
春のような暖かさはどうやら周の睡眠欲を駆り立てていたようだ。
「・・・・・・むにゃ・・・・・・」
待ってる間に寝ちゃってたのか、周ちゃん。
他には誰もいない。
珍しく教室で二人きりだ。
俊介は周の前の席に座る。
ひょいっと覗くと寝息を立てている周の寝顔が見えた。
・・・・・・可愛い・・・・・・。
「・・・むにゃ・・・・・・ダメだよ・・・・・・」
「え?」
一瞬ドキッとする。
まるで自分が悪いことをしていてそれを指摘されたかのように。
だがそれでも、じっとその寝顔に見とれてしまうのはどうしてだろうか。
「・・・・・・ダメだよ・・・・・・それは・・・・・・そのタルはオーさんだから・・・・・・」
「・・・・・・タル?」
「・・・・・・ん・・・む・・・・・・斬っちゃ・・・らめらってぇ・・・・・・」
「斬るって何を?」
「ん・・・・・・ふあ?」
周の意味不明な寝言に思わず突っ込みを入れる俊介。
どうやらそれで周は眼を覚ましてしまったようだ。
「んにゅ・・・・・・?」
「起きた?周ちゃん」
「ふぇ?あ、しゅんくん、おはよ・・・・・・。
あれ?どーしてしゅんくんがうちにいるの?」
「いや、ここ学校だけど」
「ん・・・・・・そーだっけ?
しゅんくん・・・・・・どうして学校にいるの?」
寝ぼけているのだろうか、なにやらよく分からないことを言っている周。
「どうしてって、学生は学校で勉強するのが仕事だからね」
「ん・・・・・・ふああああ~~・・・・・・むにゃ・・・・・・」
ごしごしと目元を擦る周。
そして。
「あれ?しゅんくんだ」
「さっきからいたけど」
「そっか・・・・・・オーさんの中身はしゅんくんだったんだ」
「いや・・・・・・オーさんって誰?」
「そっかそっか、しゅんくんだったんだ」
てへっ、とよく分からない笑顔を浮かべる周。
と。
「わああああああ!?!?」
「!?」
途端に後ろに飛びのく周。
そしてその声に驚く俊介。
「な、何!?しゅんくんいつ戻ってきたの!?」
「ちょっと前だけど・・・・・・って話してたじゃない」
「嘘!?え!?わ、私の寝顔・・・・・・見た!?」
「・・・・・・見たけd」
「いや!ちょ、待って!違うの!今のは寝てたんじゃないからね!?」
俊介に寝顔を見られたのが余程恥ずかしかったのか、周は真っ赤になりながら必死に両手で顔を隠そうとしているらしい。
「違うの!違うからね!しゅんくん!むにゃ・・・・・・よだれ!?違うの!寝てたんじゃないから!」
なにやら必死なところが可愛く思えた俊介はくすっと笑い、話をあわせることにした。
「そうだね、寝てなかったよね、周ちゃん」
「そ、そうだよ、寝てなかったよ。
ただそう・・・お日様の明かりがあんまり気持ちよかったから・・・・・・」
「そうだね、今日はいい天気だからね」
「そうよ、だからついうっかり光合成しちゃっただけなのよ!」
「ひかり・・・・・・ごうせい?」
「そ、そうよ、ほら、身体の中の・・・アレ・・・・・・ヨウ素が光と反応してエネルギーをね・・・」
「ヨウ・・・素?」
消毒などに使われるヨウ素はでん粉に反応して色を変えることで有名な53番の元素である。
それはいいとして。
そんな物体が光と反応してエネルギーを作るって?
「・・・・・・それヨウ素じゃないでしょ?」
「ヨウ素よ!葉っぱが緑なのもヨウ素のおかげよ!
枯葉はヨウ素がなくなっちゃったから色がなくなるのよ。
しゅんくん知らないの?」
それはもしかして葉緑素のことを言っているのか?
「・・・・・・そう・・・へぇ~・・・ヨウ素って日光で栄養作れたんだ・・・へぇ~」
「それはそうと!は、早くバスケ行こうよ!
みんなもう練習始めちゃってるよ!」
「あ、うん、そうだね。
あ、竹内君は?」
「竹内君は教室に来たから先に行っててって伝えてあるよ」
「そっか、じゃあ早く行こうか」
「うん、行こう行こう」
「そっか・・・・・・ヨウ素って日光で栄養作れたんだ・・・・・・」
「そうよ、覚えておくのよ、しゅんくん」
「うん、ちょっと忘れられそうにないね」
「それはよかったわ。
じゃあ、しゅんくん!だーっしゅ!」
「うん、だーっしゅ」
そう言って二人はいつものように一緒に下校していていった。
違うところと言えばだっしゅしているところと、周の顔が赤いことと、俊介がいつもよりやたらに笑顔だったことくらいだった。
出来はイマイチ。
でもオーさんが出せたので良しとします。




