周が風邪を引いた日
唐突に長いです、ご注意。
「え?周、風邪引いたの?」
麗奈が声を上げる。
が、特に驚いているわけではなかった。
「ええ、昨日のアレのせいらしくて・・・・・・」
説明しているのは俊介。
こちらもため息混じりで、別に意外なことを言っているという雰囲気でもない。
それは昨日の事。
「あれ?」
最初に気づいたのはまろんだった。
「どしたの?まろんちゃん・・・・・・ん?」
周がその様子に気を取られ、そして直後にソレに気づいた。
二人して空を見上げる。
「・・・・・・雨?」
周が呟くようにそういう。
それにつられて他のメンバーも空を見る。
空一面の黒い雲。
元々いつ降ってきてもおかしくないとは思っていたのだが。
「あ~、とうとう降ってきたか」
麗奈がため息混じりにそう告げてコートから出て自分の荷物の元へ向かう。
それにつられて、今日はもう終わりかとばかりに次々にコートから離れるメンバー。
だが。
「え~、これくらい平気だよ。
まだやってこうよ~」
周だけがそういうのだ。
「でも周、風邪引いたら元も子もないだろう?」
「風邪なんか引かないモン」
麗奈の言葉に頬を膨らませながら答える周。
何を根拠に、と思ったが割と頑丈な周なら風邪を引かなくてもおかしくないかもしれない。
だが自分達はそこまで頑丈ではないし、特に子供達はもう帰した方がいいだろう。
竹内も呆れながら荷物をまとめる。
「あのなぁ・・・・・・体調管理するのもスポーツマンの役目だろうが」
「そうよ、だから雨の中でも練習するのよ」
「・・・・・・話が通じてないぞ。
お前体調管理の意味分かってるか?」
「もちろん!どんな過酷な状況でも倒れない強靭な肉体を手に入れる為に鍛えることでしょ?」
「ちげーよバカ」
「あぁ!バカって言った!バカじゃないもん!!」
説得しようとしても通じないのか意識してはぐらかしているのか、とにかく周はまだ練習を続けるつもりのようだ。
竹内もため息をついてあきらめたようだ。
「わかったわかった。
バカは風邪引かないって言うからな、お前なら平気だろう。
俺はそうじゃないから無理せず帰るわ。
じゃーな、また明日」
「ま、またバカって言った!違うもん!!」
周はガーッと怒ったが竹内は相手にせずに帰ってしまった。
しばらくコートを囲う金網の出入り口を眺めていたが、やがてくるっと振り返る。
「まろんちゃんはまだ帰らないよね?」
「ご、ごめんなさい、私昔から雨には弱くて・・・・・・。
すぐに帰って温まらないと風邪引いちゃうんです。
ごめんなさい、周さん、また明日」
引きとめようとしたがまろんはさっさと帰ってしまう。
持ってきていたらしい折り畳み傘をさしながらも走っている辺り、言っていることは本当のようだ。
う~とうなりながら出入り口を眺める周。
やがてまたくるっと振り返る。
「麗奈ちゃんはまだ帰らな・・・」
と言いかけて止まった。
「れ、麗奈さん?
頭からなんか・・・・・・」
「ん?」
俊介に言われて麗奈が頭に手を当てる。
その手は真っ赤に染まっていた。
俊介が驚いた。
「血!?」
「あ!しまった!色落ちちゃう!」
「あ、なんだ、染めてた色が落ちただけですか・・・・・・」
麗奈の言葉に安堵する。
が、そうしている間にも麗奈のシャツに少しずつ赤い色が広がっていく。
「やばい!ちょ、ちょっとあたしも帰るわ!」
色が落ちると何かまずいのだろうか?
ともかく麗奈もダッシュでその場を立ち去ってしまった。
「・・・・・・じゃ、お先~」
「え!?」
振り向くと子供達が列を作って帰っていく。
引き止める間もなく姿が消えた。
「・・・・・・・・・・・・」
そして周は残った俊介を涙目で見つめる。
「・・・・・・わ、分かったよ、僕は付き合うよ」
観念した俊介がそう答えると、途端に明るい笑顔になる周であった。
「で、そのまま練習してたの?」
「はい」
麗奈に事情を説明する俊介。
麗奈はあきれたように俊介を見る。
「どれくらい練習してたの?
昨日は結構雨強くなったでしょ」
「えと・・・・・・・・・・・・ゴールが見えなくなるまで」
「・・・・・・あんたも十分バカだわ」
「・・・・・・なんとなくそうなんじゃないかと思ってました・・・・・・」
二人揃ってやれやれと首を振る。
「で、あんたは風邪平気なの?」
「一応大丈夫なようです。
帰ってすぐにお風呂で温まりましたから」
「・・・・・・周はそうしなかったのかねぇ?」
「・・・・・・何してたんでしょうね?」
お互いに顔を見合わせてため息をつく。
「で、そのボールはどうしたの?」
麗奈が俊介の手元のボールを見ながら言う。
いつも使っている周のボールとは違うようだ。
そもそも周が自分が参加できないのにボールだけ提供なんてするだろうか?
バスケが大好きな周を横目にバスケやってくるね!なんて告げたら嫌味もいいところだろう。
「一応僕の家から持ってきました」
「そーかい。
で、周はどんな感じか見てきたの?」
「・・・・・・なんか、普通に家の前で待ってました。
赤い顔しながら、ボール持って」
「・・・・・・そ、そうかい・・・・・・」
「で、僕を確認するなりふらふらしながらいつものようにダッシュしようとしてたんで家に戻しました」
「賢明な判断だね」
俊介の説明を聞いた麗奈はため息一つつくと来ていた皆に告げる。
「今日は周いないから練習なーし」
「えぇ!?」
せっかくボール持ってきたのに!と言いたい俊介。
だが麗奈は俊介をびしっと指差すと告げた。
「周が倒れたんなら、あんたがしっかり面倒見てやんなさい。
どうせ周の事気になって練習に集中できないでしょ。
ボールだけ置いて帰ってもいいけど、あたしあんたの家知らないよ」
「うぐ・・・・・・」
珍しく言いくるめられる俊介。
しかし麗奈の言葉は口調とは裏腹に優しかった。
やがて俊介はコクンと頷く。
「はい、すみません。
それじゃ、失礼します」
そして俊介は走り出した。
「・・・・・・ふぅ、やれやれ、めんどくさい二人だね」
「確かにな」
「ん?ああ、竹内」
「面倒見のいいことだ。
俺も姉さんなんて呼んでやろうか?」
「お?あんたもあたしをそう呼ぶかい?
ま、せいぜい敬いな」
「・・・・・・からかってんだよバカ、それくらい悟れ」
「あぁ!?」
ゆっくりと歩きで帰宅して私服に着替えた俊介は周の家を訪れる。
インターホンを鳴らすと周の母親、亜実さんが現れた。
亜実さんは周と違い黒髪だ。
それを肩の辺りまで伸ばしている。
見た目は違うが話してみると親子だというのがよく分かる性格をしているのだ。
「あら、しゅんくん、いらっしゃい」
「おはようございます」
頭を下げる俊介。
亜実も周同様俊介のことをしゅんくんと呼ぶ。
「どうしたの?こんなに朝早くから。
あ、いつもバスケやってるからそれほど早いわけでもないのかしら」
「周ちゃんの様子を見に来たんですけど」
「あら、周なら今バスケの練習に行っ・・・・・・ん?
しゅんくんは周と一緒に練習してるのよね?あら?」
首をかしげる亜実。
その様子を見てもしやと思い、俊介は口を開いた。
「あの・・・・・・周ちゃん家にいると思うんですけど。
なんか今日体調悪そうだったので家に帰したんです」
「あらら、そうだったの?
あの子が体調崩すなんて珍しいわねぇ。
ちょっと見てくるわ、待っててね」
亜実は俊介を玄関に入れると二階へと上がっていった。
やっぱり気づいていなかったようだ。
いや、周が部屋で大人しくしている証拠だろう。
しばらく待つと再び亜実が下りてくる。
「部屋で寝てたわ、気づかないなんて私もうっかり者ね」
てへっと舌を出す。
こういうところは周っぽい。
「うなされてたわけじゃないけど心配ねぇ。
ん~・・・・・・しゅんくん、今日は何か予定とかあるかしら?」
「いえ、特に無いですけど・・・・・・」
なぜ自分の予定を聞く?と思った俊介。
「それはよかったわ。
私今日もお仕事があるから途中で家を空けなきゃならないの。
その間しゅんくん、周の面倒お願いね」
亜実はそう言って嬉しそうに手を叩く。
「え、ちょ!!僕が周ちゃんの面倒見るんですか!?」
「そうよ、いいじゃない幼馴染なんだし~。
今日出かけるのは11時半頃だから、それからしばらくお願いね。
あ、お昼ご飯しゅんくんの分も用意しておいてあげるから。
暇になるようだったら私の部屋の本読んだり、DVD見たりしていいから」
「え!?いや、でもそんな!」
慌てふためく俊介。
それは当然だろう。
なんせ数時間とはいえ周と一つ屋根の下、もしくは同じ部屋で過ごすというのだ。
そんな俊介の反応を見た亜実は大きくため息をついた。
「はぁ・・・・・・残念ねぇ、私は仕事外せないし・・・・・・。
あぁ、可哀想な周・・・・・・高熱に一人悶え喘ぐ周・・・・・・。
思わず空に伸ばしたその手を誰も掴んではくれない・・・・・・。
誰かを追い求めるようにその手はひたすらに宙を彷徨う・・・・・・。
熱いため息混じりにその人の名を呼ぶ・・・・・・しゅんくん・・・しゅんくん・・・と・・・・・・」
「な、何故僕の名を!?」
「しかしそれに答える者はおらず・・・・・・やがて力尽きてその手はだらんとベッドから落ちる・・・・・・。
哀れ、周は誰に見取られることも無く息絶えたのでした・・・・・・」
「殺しちゃった!?母親なのに周ちゃんを殺しちゃった!!」
「嘆き悲しんだ神々は地上に神罰を下す」
「え、何故!?」
「荒れ狂う落雷と大嵐は七日間収まることを知らず。
山は崩れ、谷は埋まり、流星は次々と衝突し、潮の満ち引きは津波のように激しい・・・・・・。
やがて地球は生物の住めない死の星となってしまうのよ・・・・・・」
「何でそんな事態に!?」
「だからお願い、しゅんくん。
この星を守る為に周の看病をしてあげて!」
「何の関連性も無いでしょ!!」
そんな調子で気が付けば俊介が引き受けるまで二十ほどの屁理屈が持ち出されていた。
引き受けてからようやく、俊介は周が亜実について「一つのお願いを通すために百の屁理屈を持ち出す人」と言っていたのを思い出した。
侮りがたし。
「それじゃ、お仕事行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
出掛ける準備を済ませた亜実は玄関まで見送りに来てくれた俊介に笑いかける。
「しゅんくんに見送りされるって言うのも不思議な感覚ねぇ、中々いいものだわ。
私の息子にならない?」
くすくす笑いながらそう言う。
それは遠まわしに周と結婚しない?と言う事だと思うのだが。
何とも答え難いと俊介が固まっていると、亜実がそんな俊介の様子を楽しそうに見ているのに気づいた。
こうしてよくからかってくるところが、俊介が亜実を苦手としているところだった。
それでも悪い気がしないのは周にの性格とその大らかさのせいだろう。
「私がいない間、私の部屋のDVDとか本とかは見てもいいからね。
その代わり他のプライベートな物まで探っちゃやぁよ?」
「し、しませんよそんなこと!」
「ふふっ。
じゃ、お願いね、しゅんくん」
「・・・はい・・・・・・」
バタン、ガチャリとドアが閉まる。
やれやれとため息をつきつつ俊介は現状を確認する。
残されたのは部屋で寝ているらしい周とその面倒を頼まれた自分だけ。
さてどうしたものか。
「・・・・・・と、とりあえず周ちゃんの様子を見てこようか」
誰に告げるでもなく呟くと階段を昇る俊介。
周の部屋は確か・・・・・・。
子供の頃の記憶を頼りにドアをノックする。
「あ、周ちゃん?」
しばらく待つが返事が無い。
ガチャリ、とドアを開けてみる。
「入るよ?」
と言いながら中に入る俊介。
部屋は特に散らばっているわけではない。
夏休みだからだろう、クリーニングに出したらしい制服が壁にかかっている。
身だしなみを整えるためと思われる大きな鏡が壁際に。
クローゼットも閉まっているし、着替えも散らかっていない。
周はベッドに横になっていた。
赤い顔をしているが特にうなされている気配は無い。
先ほどまで亜実が看病していたのだろう、枕元には氷水と濡れタオルが置いてあった。
「・・・・・・・・・・・・」
心配そうに周の顔を覗き込む俊介。
少し息が荒いように見える。
・・・・・・看病なんて何すればいいんだろう?
肝心な部分を全く考えて無かった俊介は、とりあえず濡れタオルを氷水で冷やす。
固く絞って折りたたみ、周の額に乗せてみた。
「・・・・・・ん・・・・・・」
冷たさで目が覚めたのか、周の目がうっすらと開いた。
「・・・・・・冷たい・・・・・・」
「あ、ごめん、起こしちゃったかな?」
「・・・・・・しゅんくん・・・・・・?」
ごそごそと左腕をベッドから出すと、周は額の濡れタオルで軽く顔を拭いた。
「大丈夫?寒くない?あ、いや、暑くない?えっと、どっちだ?」
「ん・・・・・・なんかベッドの中は暑いんだけど・・・・・・少し寒気がする・・・・・・かな?
何か今日は天気が変だよ・・・・・・」
「・・・・・・いや、天気は変じゃないよ。
雨も止んでいい天気だよ」
「ん・・・・・・そうなの・・・?」
そういいながらゆっくりと起き上がる周。
「あ、まだ横になってた方が・・・・・・」
と言いかけて止まる俊介。
周が今朝見かけた半袖とハーフパンツのままだったからだ。
「周ちゃん、着替えた方がいいよ」
「そう・・・・・・?
でも暑いし・・・・・・でも寒いかな・・・・・・」
「ん~、汗もかいてるみたいだし・・・・・・僕部屋出てるから着替えなよ」
「・・・うん・・・・・・ごめん・・・・・・パジャマとって・・・・・・」
「分かった、どこにある?」
「そこのタンスの中・・・・・・」
周の指差した方向には確かにタンスがある。
俊介はひとまずタンスに向かった。
「えっと・・・・・・タンスのどこ?」
「上から二番目・・・・・・」
「二番目だね」
ガラガラ、と引き出しを開ける俊介。
そこには確かにパジャマの類が入っていた。
同時に下着類も入っていたわけだが。
「!!」
ガラガラガラ、バタン
とっさに閉める俊介。
落ち着け、僕、大丈夫だ、冷静になれ!
今見たことはしっかりと記憶し・・・違う!忘れるんだ!俊介!
「・・・・・・しゅんくん・・・・・・?」
「あ、ご、ごめん、なんでもないよ」
深呼吸をした俊介は再び引き出しを開けると、下着のある側から目をそらし、むしろ顔ごとそらし、パジャマを一組取り出すことに成功した。
「はい、周ちゃん」
「・・・ありがと・・・・・・」
周はパジャマを受け取ると、身につけていたTシャツに手を掛けた。
「ちょ!待って!今出てくから・・・・・・」
「ん・・・なんかべっとりして脱げない・・・・・・。
手伝って、しゅんくん・・・・・・」
「だ、だだだ、ダメに決まってるでしょ!!」
俊介は周の甘いお願いからダッシュで逃げ去った。
「うゅ・・・・・・しゅんくんどうしたんだろ・・・・・・」
ボーっとしながら周はのろのろと着替え始めた。
俊介は洗面所で顔を洗っていた。
とりあえず赤くなった顔を冷やすためだ。
(まったく・・・あ、周ちゃんってば無防備すぎるんだよ!
亜実さんもそれを分かっててわざと着替えさせておかなかったな!?
娘の危機に何してんだあの人は!)
それから勝手に冷蔵庫から牛乳を取り出して一杯頂く。
一気に飲み干すと少しは落ち着いたようだ。
そして落ち着いたところで俊介は台所のチャーハンが目に付く。
「ああ、お昼ご飯か、ホントに作っておいてくれたんだ」
そういえばそろそろお昼時だ。
一口つまんでみるとほんのり薄味だ。
「・・・・・・病人には丁度いいかな」
こういうところではしっかり気が効くのに。
その近くには風邪薬らしきものが置いてある。
俊介はチャーハンをお皿二つに取り分けるとコップに水を入れてお盆に乗せ、二階に上がった。
コンコン
「周ちゃん?着替え終わった?」
「・・・うん・・・・・・」
いつもの周からは考えられないほど小さな返事が帰って来た。
ドアを開けるとTシャツとハーフパンツが床に脱ぎ散らかされている。
まぁ、仕方ないか、病人だし。
「周ちゃん、おなか空いてない?
ご飯食べられそう?」
「・・・・・・少し食べたいかな・・・・・・」
周はそういいながらゆっくりと起き上がる。
「壁に寄りかかるようにするといいよ」
「・・・・・・うん・・・・・・」
周のベッドはサイドが壁にくっつくように置かれている。
そのまま壁に寄りかかれそうだったので俊介はそう言ったのだ。
「背中が痛かったら掛け布団を背中から掛けるようにするといいんだけど・・・・・・まだ寒い?」
「ん・・・・・・大丈夫・・・・・・」
俊介の言うとおり、背中から布団を被り、壁に寄りかかる周。
これで普通に起き上がっているよりは楽なはずだ。
「はい、ご飯」
俊介はチャーハンの皿にスプーンを添えて差し出す。
が、周は受け取らない。
「・・・・・・?ほら、周ちゃん」
「・・・あ、うん・・・・・・」
まだボーっとしているようだ。
仕方無しに俊介はチャーハンをスプーンですくうと周の口元に持っていく。
「ほら、周ちゃん」
「・・・・・・あむ・・・・・・」
チャーハンを口に含む周。
そのまま少しもごもごしてから飲み込んだ。
「・・・おいしい、お母さんのピラフでしょ、これ・・・・・・」
「・・・・・・ピラフだったんだこれ、チャーハンかと思った」
「ふふ・・・」
そういえば違いが分からない俊介であった。
まぁ、周が笑顔になったのでいいだろう。
しばらくそうして食べさせていると、周は皿とスプーンを受け取って自分で食べるようになった。
なので俊介も自分の分を食べ始める。
「「ご馳走様でした」」
二人で手を合わせる。
量が不安な俊介だったが、どうやら周は残さず食べられたようだ。
味も薄味だったが、病人向けというわけではないらしく、俊介にも丁度よかった。
水で薬を飲ませると、俊介は食器を下げる。
「ありがと、しゅんくん・・・・・・。
また少し休んでるね・・・・・・」
「あ、横になるのはよくないよ。
しばらくそのまま寄りかかってるといいよ」
「・・・うん、そうする・・・・・・」
食事して少しは元気になったようだ。
俊介はそれを見届けると周の部屋を後にする。
食器とか洗っておいた方がいいだろうか?
周は少し休むと言っていたし、俊介もやることが無いので使った食器を洗った。
ついでにチャーハン・・・・・・周曰くピラフを作ったらしいフライパンや材料を切ったと思われるまな板もしっかりと洗った。
食器がどこに仕舞われているのかまでは分からないのでとりあえず洗うだけ。
作業を終えると俊介は軽く伸びをする。
これからどうするか・・・・・・。
「そうだ、亜実さんが本読んでもいいって言ってたっけ」
と言っても亜実の部屋がどこか分からない。
一階を一通り探したがそれらしい部屋は無いので二階に向かう。
周とは違う部屋が奥に二つ。
片方のドアを開けてみる。
ベッド、本棚、テレビ、DVDプレーヤーらしき機械。
この部屋のようだ。
電気をつけて中に入る。
さて、どんな物があるのだろうか?
ザッと見るとDVDは日本や外国の映画が多いらしい。
恋愛物やSFやアクション。
そういえばホラーものがない、苦手なのだろうか?
本棚の方に目をやる。
漫画や小説が所狭しと並んでいる。
薄いのやら厚いのやら。
何冊か手に取ってみる。
「ブラッド・スティンガー」「とりあえずタバコが吸いたい先輩」「藤箕先輩」「つぼ算」「時そば」
少し気になったので読んでみる。
ふと気が付くとだいぶ時間が経っていたようだ。
「・・・・・・周ちゃんの様子見ないと」
丁度区切りもいいので本を本棚に戻す。
亜実の部屋を後にして周の部屋へ。
コンコン
「周ちゃん、具合どう?」
ガチャッと中に入る。
周は壁に寄りかかったまま眠っていた。
「・・・・・・寝るんなら横になった方がいいのに」
掛け布団は背中から掛けた状態、このままじゃまた悪化するかもしれない。
俊介はそっと周の肩を抱くとベッドに横にする。
そして掛け布団を掛けてやった。
起きる気配は無い。
来た時とは違い、すやすやと眠っている。
今日一日ゆっくりしていれば大丈夫だろう。
「・・・・・・んむ・・・・・・しゅんくん・・・・・・」
「え・・・」
ドキッとする。
今、寝言で自分の事を呼んだ・・・・・・?
途端に心臓がバクバクしだす。
いや、落ち着け、冷静になれ!
再び自分に言い聞かせる俊介。
「・・・・・・すぅ・・・・・・すぅ・・・・・・」
周が寝息を立てている。
可愛い・・・・・・。
ゆっくりと顔を近づける・・・・・・。
ドキドキドキ・・・
すっと周が首をのけぞらせた気がする。
唇を突き出すように。
・・・・・・誘ってる・・・・・・のか?
ゴクッとつばを飲み込む俊介。
思い切って・・・・・・周に覆いかぶさるように・・・・・・そして・・・顔を近づけ・・・そのまま・・・・・・。
「くしゅん!」
「!!!」
バッと身を引く。
「・・・うゅ・・・・・・むぐ・・・・・・」
危うく頭をぶつけるところだった。
首をのけぞらせたのはくしゃみが出そうだったからか・・・・・・。
「って何をしようとしてたんだ撲は!!!」
ぐおおお、と頭を抱えてのけぞる俊介。
あれほど冷静になれと自分に言い聞かせていたのに!
こんな・・・・・・風邪で弱っていて・・・・・・眠っている周ちゃんに・・・・・・き、キ、キ・・・・・・。
ボジュゥ、と頭が爆発した。
「おっはよ~!みんな~!」
「おう、周。
元気になったのかい?」
「うん!もう大丈夫だよ!」
翌日、周は元気よくバスケコートの皆に手を振っていた。
どうやらもう風邪は完全に治ったようだ。
「お、斉藤」
「周さん、もう大丈夫ですか?」
「うん!心配かけてごめんね~!」
麗奈、竹内、まろん、そして子供達にも囲まれる周。
本当に皆に愛されているようだ。
「もう大丈夫だよ、明日からまたバリバリ練習するからね!」
周は拳を握りながらそう言った。
ふと、メンバーが止まる。
「・・・・・・明日から?」
「今日じゃ無いんですか?」
「そういえば林田がいないが・・・・・・」
その言葉に、あははは~と笑う周。
「今度はしゅんくんが風邪引いちゃった」
その頃、俊介は家で寝込んでいた。
風邪は他人にうつすのが一番治りが早いというが。
はたして俊介は周の風邪を持っていったのか、それとも周の事を考えて風呂場でボーっとしていたのか。
真相は定かではない。
「藤箕先輩」は頑張って書いてそのうち載せます。
もしくはもっと頑張って本にしたいです(
どっちにしろエアウォークが終わってからですが。




