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エアウォーク  作者: 隠戸海斗
第一期
40/102

第三十九話 全国大会

7月、第二日曜日。

電車に揺られて数十分の後、目的の駅に到着。

そして駅から既に目視できる距離にある大きな体育館。

市民体育館よりもずっと大きい。

なにせこの辺りで「全国に通じるスポーツ大会を行なう」となればここしかない、とまでに言われるほどの設備なのだ。

屋外スポーツのサッカー、テニス、野球、室内の水泳、剣道、柔道、そしてバレーボール、卓球などの室内球技にもそれぞれ専用のコートを設けてあるほどだ。


そしてもちろんバスケットボールも、である。




「とぉ~ちゃくっ!!」


両足を揃え、ぴょんと体育館敷地内に飛び込む周。


「・・・子供か、あんたは・・・・・・」

「ほ~ら、皆も早く~!」


麗奈のツッコミを無視して手をブンブン振る。

それに答えるように大きく手を振るまろん、その後ろに控えめに手を振る俊介と完全無視の竹内、そして子供達であった。


「こら、暴れるなよお子ちゃま達」

「一本道だったけど事前に下見して置いてよかったね」

「ですね~」


そんな話をしながら三人も子供達も門を抜け、敷地内に入る。


「・・・・・・大きな建物だな」

「そうだね・・・・・・」


竹内と俊介が目の前の大きな体育館を見上げる。

大きな体育館とは言っても目の前にある建物は一つではない。

同じく大きな看板で分かるようになっているサッカー場、野球場が手前の左右に。

そしてその向こうにまた別の競技場が。

そんな感じでスポーツの種類ごとに分けられた複数の大きな体育館、そして複数日に渡る競技の為のホテル、それらが一つの敷地内にあるのだ。

大きいだけではなく広い。

そのうち移動のための動く歩道や、気温、天候対策に広い天井を設置して全てを一つの建物にしてしまおうという計画もあるという。



「で、私達のバスケット体育館はどこだっけ?」

「下見したでしょ、周ちゃん・・・。

 まっすぐ行って三つ目左側の体育館だよ」

「あ、そうそう、そうだったわ」


あはは~と笑ってごまかす周。

本当に下見しておいて良かった。


「よ~し、皆、迷わないで着いて来るんだよ~。

 まっすぐ行って三つ目左側の体育館だからね~」

「「「「「は~い」」」」」


周の言葉に元気よく返事をする子供達。

一番心配なのは先頭切って走っていくお前なんだけどな、と竹内がペットボトルのドリンクを飲みながら呟く。

それが聞こえた俊介とまろんは苦笑いするしかなかった。




「ここ?」

「だね、でっかい看板がかかってるし」


周の問いに答える麗奈。

見たとおり、体育館には大きく「バスケット体育館」と書かれた看板がある。


「よぉし、早速入ろうよ」

「待った、皆揃ってからね」


下見では見なかった体育館内を早く見たくてうずうずする周。

だが麗奈は後ろを指で指しながらなだめる。

と、ここまで来ると他のバスケット目当ての選手やらが集まっているらしいのが分かる。


「あの体育館に向かってる人は皆選手なんだよね、麗奈ちゃん」

「あと観客もいるでしょ。

 でもそこそこ有名な選手とかもいたりしてね。

 あたしはそういうの詳しくないけど」

「ゆーめー選手かぁ・・・・・・」


麗奈の言葉に、周は辺りをキョロキョロし始める。

もっともキョロキョロしたところで周もバスケット選手には詳しくないのだが。

と。


「・・・おい、あれ日本央嘉大の笹塚じゃねぇか?」

「あ、ホントだ。

 やっぱり今年も来てたかぁ」

「こりゃ厳しいな・・・・・・」


そんな声が聞こえる。

有名人かな?と声の主たちの見ている先を見てみるが誰が誰だかよく分からない。


「どした?周」

「日本おーか大の笹塚さんだって」

「んなこと言われても分かんないよ・・・」

「だよね・・・・・・」




「あれは・・・・・・日欧情報工学院大学」

「詳しいな、林田」

「まぁね、雑誌とか気になって読んでるんだ」


周達から少し遅れた俊介達がそんな会話をしている。

こちらもバスケット選手が気になるようだ。

もっとも俊介が詳しいようで解説が行き届いている。


「林田さん、あの団体さんは?」

「ん~とあれは・・・・・・あ、国際高帝学院大学だね」

「大学ばっかだな」


これは予想外にレベルが高いかも知れない、とメンバーは改めて思うのだった。


「やぁ、追いついたね」

「ああ、追いついたぞ」


そこまで話して麗奈と竹内が声を合わせる。


「さて、追いついたことだし体育館に入ろうか」

「そうですね」


麗奈の言葉にまろんが返事をする。

そして子供達と皆で中に入っていくのだった。

その途中、周が俊介に話しかけていた。


「ねーねー、しゅんくん。

 日本こーか大の坂塚さんって知ってる?」

「日本こうか大?坂塚さん?」

「あれ?違ったかな・・・・・・。

 え~と・・・・・・こーか・・・とーか・・・そーか・・・・・・」

「あ、日本央嘉大学?」

「ああ、多分それ」

「あと・・・・・・坂塚さん?

 それ笹塚さんじゃないかな?」

「た、多分それ・・・知ってる?」

「知ってるも何も、去年彼が入ってから日本央嘉大学(日央大)は全国大会ベスト16入りを果たしたし。

 高校の頃にも毎回全国出場果たしてたくらいだから有名人だよ」

「へぇ・・・そうだったんだ」

「で、その人がどうかしたの?」

「ん~と、さっき歩ってたらしいよ」

「そう・・・・・・同じ地区になるのか・・・・・・」


激戦が予想されるね、とつぶやいた。




「ここから先、選手は登録の確認をしておりま~す!

 全員揃ってから入場してくださ~い!」


体育館の入り口では係員が呼びかけをしていた。


「周ちゃん、登録用紙」

「ちゃんとあるよ」


周がカバンから用紙を取り出し、待機する。

そして、体育館に入ったところで道が二手に分かれていた。

どうやら選手と観客で別れているらしい。


「じゃあ、皆とはここでお別れね」

「うん、応援してるからね、お姉ちゃん」

「頑張れよな、周」

「竹内さんも

 頑張って」

「・・・俊介さんも・・・応援してます」

「まろんちゃんも頑張って」

「うん、頑張るね」

「頑張るよ」

「おう、頑張るよ」

「頑張ってくるからね」


そう言って手を振って別れた。

と、すぐに渋滞が。


「登録の確認をさせていただいております。

 メンバーの皆さんははぐれないようにお願いいたします

 登録用紙をご用意ください」


そんな呼びかけが聞こえてくる。


「み、皆、はぐれないようにね」

「わ、分かってるけど・・・」

「これはさすがに・・・・・・」

「ちょっときついな・・・」

「はうぅ・・・ぎゅうぎゅうですぅ・・・・・・」


ぐいぐいとあちこちから押され、バランスが崩れかけるが、何とか五人でまとまった。


ぐい、むぎゅ、と押される周と俊介。


「ご、ごめん、しゅんくん」

「い、いや、大丈夫・・・」


ぐい、むぎゅ、と押される麗奈と俊介。


「わ、悪いね、しゅん、大丈夫かい?」

「い、いえ、大丈夫です・・・・・・」


ぐい、むぎゅ、と押されるまろんと俊介。


「ひゃ!ご、ごめんなさいです、林田さん・・・」

「い、いや・・・・・・」



ぐい、むぎゅ、と押される竹内。

相手はマッチョなおっさんだった。


「わりぃな、背の高い兄ちゃん」

「・・・・・・いや、別に・・・・・・」


何かが激しく気に入らない竹内であった。




「と・・・登録用紙・・・です・・・・・・」


何とか受付らしき場所までたどり着いた周達。

周が必死の思いで用紙を差し出す。


「はい、どうも。

 え~と・・・・・・・・・・・・「グレートパワフル一億万年ウルトラグレートミサイルアタッカーズ」さん・・・・・・?」

「は、はい、そうです・・・むぎゅ」


後ろの人に押されながらも何とか答える周。


「え~と・・・・・・ではメンバーの方のご確認を・・・・・・」


「さ、斉藤周です・・・」

「は、林田・・・俊介・・・むぎゅ・・・」

「ご、ごめんよ、しゅん。

 えと・・・瀬戸内麗奈」

「た、竹内祥吾・・・」

「結城まろん・・・ひゃわ・・・!」


「は、はい、どうも・・・。

 登録は五名でよろしいですか?」

「「「「「よ、よろしいです」」」」」

「はい、ありがとうございます。

 ゼッケン入りのユニフォームはお持ちですか?」

「はわ、持ってないです・・・」


周が答えると受付の人は奥からゼッケンの束を取り出す。


「ではこちらがゼッケンになります。

 この奥更衣室になりますのでそちらで着替えた上で身につけてお待ちくださいませ」

「ど、どうもでした・・・むぎゅ・・・」




「試合前に倒れるかと思った・・・・・・」


人数が少し減り、余裕が出来た通路でうなだれる周達ご一行様。


「周、ゼッケン分けとかないと・・・」

「あ、そだね・・・・・・え~と・・・・・・誰が何番?」


周がゼッケンを差し出しながらそう聞くと、麗奈が思い出したように告げた。


「そ、そういえばバスケって番号によってポジションが決まってたような・・・・・・。

 4がセンターで5、6がフォワード、7がシューターで8ガード・・・だっけ?」


と麗奈が呟くと、そこで全員が止まる。

え?そこまで決めるの?といった表情で。

だが、そこに俊介が助け舟を入れる。


「いや、あれは形だけってことなんで、ポジションとナンバーはバラバラでもOKですよ。

 一応4がキャプテン、5が副キャプテン、みたいなところはありますけど・・・」

「それなら・・・・・・」


と、麗奈が4番を取り、周に差し出す。


「あんたが付けな、4番」

「え・・・・・・?」


突然の行動に戸惑う周。

だが。


「そうだな・・・・・・俺たち皆お前に誘われてこのチームに入ったんだ」

「そうですね、周さんがキャプテンですね」

「で、ででで、で、ででも、そ、そんな急に・・・・・・」

「で、アンタが5番」

「え?」


戸惑う周をよそに俊介に5番を差し出す麗奈。


「で、でも、実力的には・・・・・・」

「いいんだよ、そんなのは。

 あんたが一番周の理解者なんだから」

「だな。

 キャプテンを支えるのが副キャプテンの仕事だしな」

「林田副キャプテンですね、カッコイイです」

「そ、そうですか・・・・・・?」


戸惑いつつも受け取る俊介。

押し付けられたというより、本当に自分ならふさわしいと思ってくれているのが伝わってくる気がするのだ。


「・・・・・・周ちゃん・・・」


俊介がついでに麗奈から4番を受け取り、周に差し出す。


「で、でも私・・・・・・」

「僕達は周ちゃんのチームメンバーなんだ。

 やっぱりリーダーは周ちゃんが一番だよ」

「・・・・・・」


ちらっ、きょろきょろとみんなを見回す周。

やがて、おそるおそる手を伸ばし、ゼッケンを受け取った。


「頑張れ、周キャプテン」

「頑張れよ、斉藤キャプテン」

「頑張ってください、キャプテン」


みんなの声援に押され、周は頷いた。


「うん・・・・・・私、頑張るよ!」


皆に笑顔が浮かぶ。


今、チームの心は一つになった。



「まぁ、6番は順番的にも実力的にもあたしかな」


麗奈がそう言って6番を持っていく。

と、竹内がそれを止める。


「待て、順番ならまだしも実力なら俺のほうが上だろ」

「あらあら?何を言い出すのかと思えば。

 この間の2ON2だってあたしが勝ったじゃない」

「そ、それはこの間だけだろ」

「いやいや、その前にも何度も勝ったよ」

「それを言ったら俺だって何度も勝っただろ」

「そんなの忘れたねぇ」

「な、何?」

「ちょ!二人ともケンカは・・・・・・!」


今、一つになったチームの心は砕けた。

まぁ、いつものことだが。



結局チームに入った順番ということで、麗奈が6番、竹内が7番、そしてまろんが8番に決まったのだった。

そしてメンバーは男女で別れ、更衣室に入る。

着替えた後に再び合流したのだった。



「トーナメント表とかないの?」

「あっちこっちに掲示されてるみたいだよ」


周の言葉に答える俊介。

見るとところどころ人が集まっている。

さすがにこの人数だと掲示場所が一箇所では混雑するだろう。

五人は空いていそうな場所に集まり、トーナメント表を見る。

ところどころ高校名での参加や一般参加者が見られる中、6割が大学名、3割が企業名で締められている。


「・・・・・・・・・やっぱりうちのチーム名は浮きすぎだろ・・・・・・」

「あ、あはははは・・・やっぱりもうちょっと考えた方が良かったかな・・・・・・」


竹内の言葉にバツが悪そうに頭を書く周。

見ると「グレートパワフル一億万年ウルトラグレートミサイルアタッカーズ」という名前の為に、他のチーム名には凄まじい空白が生まれている。


「で、でも!どうしても一度このチーム名で戦ってみたかったんだよ!」

「・・・・・・気持ちは分かるけどせめてもう少し小さい大会でさ・・・」


周をなだめるように言う俊介。


「で?一回戦の相手は?」

「どれどれ」


麗奈と竹内が表を覗き込む。


「え~と・・・これなんて読むんだ?」

「日本・・・・・・おう・・・なんとか・・・・・・?」


竹内の言葉にまろんが必死に読もうと頭を働かせる。

と、俊介が声を上げる。


「え?日本央嘉大学?」

「おうか、って読むのか?これ」


竹内が聞き返す中、周が思い出したように声を上げる。


「ああ、さっきのえっと・・・・・・鷹塚さん」

「笹塚さん、ね。

 去年のこの地区のトップだよ」

「え?マジ?」

「そ、そうなんですか!?」


麗奈とまろんの言葉に「そうなんですよ」と腕組みしながら返す俊介。

これは予想外に一回戦が難関だ。


「で、どんな戦い方するんだ?」

「そんなの情報誌じゃ分からないよ。

 去年の今頃は中学の大会で必死だったし・・・・・・」


じゃあどうするの?とお互いに顔を見合わせる。

そんな中、周は身体をぐぐっと丸め、「ん~~~~~!」と何かを蓄えるかのように唸っていた。


「・・・・・・周ちゃん?」

「燃えてきた~~!!」


そして突然立ち上がり、背景を炎一色にする周。

そんな周に戸惑うチームメイト。


「・・・・・・あ、周?」

「・・・斉藤?」

「・・・・・・あ、周さん?」

「いきなりそんな凄いチームと戦えるなんて最高じゃない!」


そう叫んで飛び跳ねる周。

俊介がそれをなだめようとするが止まらない。


「あ、あのね、周ちゃん。

 全国に出場するチームって言うのはね・・・・・・」

「だってどうせ勝って行けばいつか戦うんでしょ?

 なら一回戦だって十回戦だって決勝戦だって変わらないよ」


俊介の言葉を全く聞かないポジティブ娘、周。

だがその言葉は的を得ているかもしれない。


「ま、確かにそうだよな」


と、竹内が周に賛同した。


「去年のトップだってんなら、そいつらを倒せば他はそれよりも弱いってことだろ。

 ならとっとと倒そうぜ」

「でしょ?それに一回戦となればお互い体力も減ってなくてベストポジションじゃない。

 最高の試合が楽しめるわけだよ!」


やがて麗奈も周のポジティブさに引かれる。


「確かにそうだね・・・・・・。

 それにチームが多いから次の試合までには十分に回復できそうだしね」

「でしょでしょ?

 去年のトップ?じょーとーじゃない!

 やってやりましょうよ!」


周の言葉に竹内も麗奈も声を上げて賛同する。

やがて俊介もまろんも、だ。

チームの士気は高まり、心は一つになる。



参加チームが多いので試合開始までが長い。

それまでみんなは軽く運動したりストレッチをしたり、また暑いので涼んでいたりと色々だ。


長い待ち時間の後、放送がかかる。

呼ばれたチーム名は8。

つまり8チームが同時に試合を行なうということだ。


「コートも広いんだろうね」

「だろうね」


周と俊介はそんな会話をしている。

二人とも軽く身体をほぐしただけでそれ以降は涼んでいるだけだ。

他の三人もストレッチをしたり、他のチームの邪魔にならないように走ったり、うろうろしたり。


「ね、しゅんくん、試合見に行こうか」

「そうだね、どれくらいの人たちが戦っているのか気になるし」


二人は他の麗奈にその旨を伝えるとコートへと向かった。



「・・・・・・あいつらは?」

「試合見てくるってさ」


走ってきた竹内に麗奈はそう告げる。


「・・・・・・よくそんな気が・・・・・・」

「あんたも少し休めば?走ってばっかじゃ倒れるよ」

「ああ、そう思って休みに行くところだ」


竹内はふぅと息をつくと飲み物を片手にクーラーのきいた部屋へと向かって行った。


「あんたも、うろうろしてないでストレッチか休憩しなさい」

「あぅ・・・」


と、麗奈はまろんに話しかける。


「で、でも、なんか落ち着かなくて・・・・・・」

「ならちょっと休んでなさい」

「は、はいです・・・・・・」


とぼとぼと休憩に向かうまろん。

麗奈はそれを見送りながらストレッチを中断する。


「・・・・・・皆緊張してるね、あたしもだけど・・・・・・」


そして彼女も休憩に向かうのだった。

わずかに試合を見に行った二人が気になったが、構わずに。


確かに試合は気になるが、


多分、


あまりにハイレベルな試合を見ると、


闘気が消えてしまいそうだったから。



やがて、周と俊介は戻ってきた。


「おう、おかえり」

「た、ただいま・・・・・・」

「ただいま!麗奈ちゃん!」


二人を迎えた麗奈は驚いた。

俊介がふらふらなのはまだしも、周が試合を見学に行く前よりもはしゃいでいるからだ。


「試合、どうだった?」


麗奈はおそるおそる周に聞いてみる。

すると周は余計にはしゃぎだした。


「あのねあのね!すごかった!!」

「あ、そう・・・・・・」


簡潔すぎて伝わらない。

なので俊介に聞いてみることにした。


「どうだった?しゅん。

 感想は?」

「・・・・・・ハイレベルですね。

 正直なところ、テレビ画面越しにしか見たことが無いような風景ですよ」

「・・・・・・そうかい」


やっぱり見に行かなくて良かったかもしれない、なんて思ってしまった麗奈だった。

そんな実力者と戦うかと思うと・・・・・・。


「ワクワクしましたね」

「え?」


麗奈はきょとんとする。

周なら分かる。

どんな強い相手でもそういうだろう。

だが、その言葉は俊介から出たものだ。


「まだ戦ってもいない・・・・・・本当に同じ舞台に立っただけですけど・・・・・・。

 でも・・・・・・同じ舞台に立てるんだと思うと・・・・・・」


そしてどこかボーっとしていた俊介の目に力が篭る。



「夢にまで見た光景を実際に体験できると思うと・・・・・・ワクワクしますね」



それを聞いて麗奈はくすっと笑った。

なんだい、自分は何時に無く弱気になっていたね、と。

ときどき頼りないくらいに弱々しかったりするけど、いつの間にか。


「・・・・・・あんた、頼れるヤツになってきたね」

「え?そ、そうですか?」


そう言ってやるとまたおどおどする。

そんなところがまた俊介らしい。

麗奈はすくっと立ち上がる。


「あたしも試合見てくるよ」

「あ、でももうすぐ私達の試合じゃない?」


そんな麗奈を周が止めるが、麗奈は笑って返した。


「会場の空気に慣れておきたいんだ。

 ほら、竹内、まろん、あんた達も行くよ」

「は?何故?」

「え?私もですか?」

「ほらほら早く」


そういいながら強引に二人を立たせ、連れて行く麗奈であった。



戻ってきた麗奈は周同様にはしゃいでいた。

そして気圧されていた竹内やまろんも、麗奈に影響されてか盛り上がる。

気合もテンションも最高潮。

そんな時に放送が入った。


『続いての試合チームのお呼び出しをいたします。

 グレートパワフル一億万年ウルトラグレートミサイルアタッカーズ、日本央嘉大学、・・・・・・』


「呼ばれたね」

「うん、そうだね」

「さて、行こうか」

「気合十分」

「れっつごーです」


五人は立ち上がり、コートへと向かって行った。




会場は沸いていた。

観客の盛り上がりと熱気で。

それは試合を見学していた時以上に感じられた。

自分達に直接それが向けられているからであろう。


チーム名が呼び出され、手を振って答えると同時に会場からほのかな笑いが来る。


「・・・・・・笑われたね、チーム名」

「ああ、笑われたな。

 もっとも俺でも笑うけど」

「あははは・・・」


麗奈、竹内、まろんが口々にそういう。


「や、やっぱり次からチーム名変えようか」

「あはは、そうだね」


周がなにやら自信なさ気にいうと俊介が笑いながら答えた。


「しゅんくんも、やっぱり変な名前だと思う?」


自分では力作のつもりだったんだけど、と続ける周。

俊介はやはり笑いながら答えた。


「ん~、そうかもね」

「あうぅ・・・・・・」


しょんぼりとする周。

だが。


「でもね、今はそれ以上に楽しみなんだ」

「え?」


俊介は言葉を続けた。



「この笑いを、驚きと感動に変えられると思うとね」



それは、自分達のスーパープレイで、という意味であろう。

周はそれを聞いて笑顔を取り戻した。


「うん、そうだね」



「「「姉さん、ファイト―――!!!」」」

「ちょ、あんたたち!?」


突然の客席からの歓声に驚いて振り向くとそこにはいつもの不良たちが。

最近は見なかった気がするが。


「なんでいるのさー!?」


「水くさいっすよ姉さん!!」

「俺たち、姉さんのいるところならどこだって!!」

「いつだって応援に行きますよー!!」


それが嫌だから呼ばなかったのに、とぼそっとつぶやく麗奈。

とはいえ、最初はそう思うのだが今までもそれが嬉しくもあったのだ。

麗奈はニコッと笑うと不良たちに返事をした。


「他の人に迷惑かけるんじゃないよー!」

「「「「はいっす!!姉さん!!!」」」」




やがて相手チームと対面する。

互いに並び、審判の指示に従い、礼をする。


「礼!」

「「「「「「「「「「よろしくお願いします!!!」」」」」」」」」」


会場から拍手が送られる。



「ねーねー、しゅんくん。

 ちなみにどの人が赤塚さん?」

「笹塚だってば」


周にそう言われて俊介は相手チームを眺める。


「・・・・・・4番つけてる・・・・・・」

「4番?へー・・・・・・」


周がちらっと目をやる。


「・・・・・・まだ2年生なのに」


俊介がそう続けた。


「・・・・・・それだけ凄い選手なんだね」

「・・・そうだね」


二人は互いに目を合わせる。


「勝とうね、しゅんくん」

「勝とうね、周ちゃん」


パンッと軽く手を合わせた。



やがて、センターサークルに竹内と相手が入る。



「ジャンプボール!!」



ヒュッとボールが投げ上げられた。



前回のトップってシードとかじゃないの?と思いました。


えーと、チーム数の関係上シード無しという方向で。

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