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エアウォーク  作者: 隠戸海斗
第一期
37/102

第三十六話

「え~と・・・・・・、とりあえずお名前を」

「はいです。

 結城(ゆうき)まろんと申しますです。

 結わく、お城、で、まろんは平仮名です」


俊介に促されて自己紹介をした後にぺこっと頭を下げる少女。

かぶっていた白い帽子は両手に握られている。

場所は既にコートの中に戻ってきているところだ。


「まろんちゃん・・・ねぇ・・・・・・」


周のその言葉に、ぱぁっと笑顔になる少女ことまろん。


「初対面で名前で呼んでくださるなんて・・・・・・感激です・・・」


そんなに感動するようなことでも無かろうに、とは思うものの茶々を入れられない純粋さがその瞳にはあった。

見た目通り丸っきり子供だ。


「えっと・・・・・・で?一緒に練習したいって?」

「はいです!この間の市内大会で皆さんの事を知りました。

 私もあんなふうにバスケが出来るようになりたいんです!」


麗奈の質問にも熱意を持って答えるまろん。

はぁ・・・なるほど、としか返しようが無いが、真剣な気持ちは伝わってくる。

どうする?と顔を見合わせる俊介たち。


「いいんじゃない?私はOKだよ。

 みんな次第だけど」


と、周はあっさりとOKを出した。


「ほ、ホントですか!?

 ありがとうございますです!」


まろんは本当に嬉しそうな顔をすると再び頭を下げた。

リーダーともいえる周がOKを出したことで他のみんなもまぁいいかという気持ちになったようだ。

うん、そうだね、いいよ、と声が上がってくる。


「やったぁ!皆さんよろしくお願いします!」


まろんはそういうと飛び跳ねて喜んだ。

その様子を見ていて周がつぶやく。


「なんかこう・・・・・・可愛いね。

 ぎゅってしたくなる」

「そう?別に抱きしめるくらいいいだろうけど、とりあえずその両手をわきわきさせるのはやめときな」


麗奈に指摘され、周ははっとして両手を後ろに回すのであった。



「でもまぁ、そういうわけで。

 愛奈ちゃん、真美ちゃん、仲良くしてあげてね」

「「は~い」」


周の言葉に二人が快く返事をする。


「恋二君も、いじめちゃだめだよ?」

「しねぇよ、いじめなんて。

 仲間になるんだもんな、仲良くするよ」

「それでよし」


恋二の頭を撫で回す周。

恋二は赤くなってそっぽを向きながらもされるがままになっている。


「修也君と大紀君もよろしくね」

「もちろんです」

「うん

 もちろん」


ふと見ると女の子二人はさっそくまろんに話しかけているみたいだ。


「・・・この近くに住んでるの?」

「まろんちゃんはどこの小学校に行ってるの?」


「え?あれ?えっと・・・?」


「俺たちみんな5年なんだ。

 結城も同じ?

 それとも6年か?」

「わ、恋二君もう呼び捨て」

「うっさい」


愛奈の茶々にも動じない恋二。

男の子三人も話に入る。


「あれあれあれ・・・・・・?」


「6年生だったら呼び捨てにしちゃだめだよ、恋二君」

「いや・・・敬語とか苦手でさ・・・。

 修也も知ってるだろ?」

「知ってるけど・・・」

「でもダメ

 年上には

 敬語で話す」

「なんだよ~、皆だって周には使ってないだろ~?」

「・・・周お姉ちゃんは・・・お姉ちゃんだもん」

「お姉ちゃんだもんね~?」


わいわいと子供達が盛り上がっているのを見て打ち解けそうだと判断したのか、周は俊介たちに声をかける。


「じゃ、そろそろ練習再開と行こうか。

 皆はしばらくお話タイムね」

「「「「は~い」」」」

「じゃ、行こうかみんな」

「そうだね」


そうして子供達はコートの外に、そして周たちがコート内で練習を再開しようかとしていたときだった。


「ま、待ってください!!」


突然まろんが大声を上げる。


「・・・?」

「??」

「ん?どーしたの?」


子供達も周たちも、まろんが大声を上げる理由が分からずにきょとんとする。


「あの・・・・・・私・・・いくつに見えますか?」

「「「「「小学生」」」」」


まろんの質問にみんなが同時に答える。

その答えにまろんは真っ赤になってぷるぷると震えながら声を上げる。



「私、小学生じゃないです!

 中学3年です!!」




「「「「「「「えええええええええええ!?」」」」」」」



またしても全員が同時に驚愕の声を上げる。



「えええ!?嘘!ホント!?」

「ホントです!!

 ほらこれ!」


まろんはそう言って持っていたリュックからなにやら取り出す。

周はそれを受け取る。

どうやら生徒手帳のようだ。


「柏木南中所属・・・・・・3年・・・・・・ホントだ」


みんなもそれを覗き込んで確認する。


「ホントだ」

「・・・ホントだ」

「ホントだ」

「本当だ」

「あう・・・酷いです・・・・・・」


「でもほら、どう見ても・・・・・・」


麗奈の言葉にみんながつられてまろんを見る。

その横には大紀と恋二。


「・・・・・・大紀君より小さいし」

「・・・・・・恋二君と同じくらい?」


言われてみるとその通り、大紀よりも小さいし、恋二よりわずかに大きいかという程度だ。

二人もまろんに視線を向けて確認する。


「・・・うぅ・・・どーせ・・・・・・どーせ私なんて・・・・・・身長なんか・・・・・・身長なんか・・・・・・」


まろんがいじけてしゃがみこむ。

と、竹内が声を上げた。


「あれ?柏木南って俺の母校だ」

「そうですよ!!さっきも「竹内先輩」って呼んだじゃないですか!!

 私1コ下ですよ!!

 バスケ部の隣のバレーボール部で活躍してるの、同じ体育館内で見てましたよ!」


竹内の言葉に、まろんは精一杯背伸びして竹内に言い寄ってくる。


「えええ!?竹内君ってバレーボールやってたの!?」


と、今度は周が声を上げた。


「ああ、まぁ・・・・・・この身長だし」

「でもでもでも!ドリブルもリバウンドも上手いじゃん!!」

「まぁ体育とか遊びではちょくちょくやってたし」

「何で教えてくれなかったの!?」

「ああ、そういや言ってなかったか。

 まぁ、言うことでもないだろ」


「ちょちょちょ!私の話を聞いてください!」


話が横道に逸れてしまったのでまろんが再び大声を上げる。


「あ、そうだ、今はまろんちゃんのお話だった」

「忘れないでくださいよぉ・・・!」

「そうだよ竹内君。

 おんなじ学校の後輩でしょ?

 忘れるなんて酷いよ」


今度は周が竹内に言い寄る。

まろんの忘れないではそういう意味ではないと思うのだが。

竹内は言いにくそうに返事をする。


「いやでも・・・・・・そもそも俺はお前の事知らないし・・・・・・」

「ああっ!どーせ私なんて!!私なんて!!」

「あ~、ちょ、ちょっと落ち着いて!」


ぶわわっと泣きながら走り出そうとしていたので俊介が慌てて取り押さえる。


「離して下さい!

 私なんて・・・私なんて・・・ぐすぐす・・・・・・」

「お、落ち着いてってば」


泣き出したまろんをあやすように俊介はまろんの頭をよしよしと撫でる。

その姿は丸っきり小学生を相手にしているようにしか見えない。


「君が小学生でも中学生でも歓迎するから。

 ね?周ちゃん?」

「え?あ、うん、もちろん。

 大歓迎よ!まろんちゃん」

「あ、斉藤さん・・・林田さん・・・・・・」

「そんな他人行儀な呼び方はやめて・・・・・・周って呼んでよ、まろんちゃん」

「あ、・・・周さん・・・・・・私頑張ります・・・・・・。

 一緒に全国を目指しましょう・・・・・・!」

「もちろんよ!まろんちゃん!

 これでチームメンバーは5人!目指すは全国制覇よぉぉぉぉ!!!」


キラキラキラとなにやら輝かしい空間が広がっている。

麗奈も子供達も小芝居くさいと思いつつも温かい眼で見守っている。

何はともあれ、これで全国への道は開かれたのであった、ハッピーエンド。




と思いきや。


「ちょっと待った」


突然竹内が割って入ってきた。


「なによ、竹内君。

 今いーところなのに」


何がいーところだったのかは分からないが、竹内の行動に口を尖らせる周。


「俺はこいつが「斉藤を目標に微笑ましい努力をする小学生」だと思ったから参加にOKしたんだ。

 「俺たちと共に最強バスケチームを目指すもうじき高校生」だって言うんなら、そんなにあっさり認めるわけにはいかないぜ」

「なんでよぅ!!」


ぶーぶーと文句を言う周。

竹内は一息入れ、言葉を続ける。


「俺の自惚れかもしれないからこの際確認しておこうか、斉藤。

 お前は俺と試合をして、それで「こいつとなら一緒に全国を目指せるかもしれない」と思ったからチームに誘ったんだと思ったんだ。

 つまり、俺はお前に認められたと思ったから、お前の誘いに応じたんだ。

 もし違うんなら今否定してくれ」

「た、竹内君は本当に強かったから、もっと一緒に練習したいなって・・・・・・。

 正直言えばその・・・・・・一緒にチーム組めばもっと強い人たちとも戦っていけるかもしれないって・・・・・・思った・・・・・・」


途切れ途切れだが、周は竹内の言葉にYESと答えた。

竹内はそれを聞いて安心したように。


「・・・・・・そうか、ありがとう」


と答えた。

そして、再び言葉を続ける。


「麗奈はどうだ」

「え?あたし?」


突然話を振られ、びっくりする麗奈。


「麗奈はどうしてこのチームに入れたんだ?斉藤」

「それはその・・・・・・麗奈ちゃんも強い人だから・・・・・・。

 やっぱり竹内君と一緒。

 一緒に強くなって、強い人たちと戦いたいと思ったから」

「周・・・・・・」


麗奈はその言葉に恥ずかしそうに、そして嬉しそうに笑った。


「林田はどうだ?」

「しゅんくんもそう。

 始めの内は心配だったけど、ちゃんと練習について来れてたし。

 やっぱり一緒に強くなりたいと思ったから・・・・・・」


自分がその人を気に入った理由を答える。

それは半ば告白にも似た状態だろう。

実際周もどんどん赤くなっていくし、言われる方も気恥ずかしくなっている。


竹内は周の言葉を聞くと、再びまろんの方に向き直った。


「お前がチームに入れたいと思ったやつらは、みんな斉藤と共にバスケをして、認められたやつらだ。

 だがコイツはどうだ」


竹内はそう言ってまろんを指差す。

まろんはビクッと震える。


「バスケをしているのを見たわけじゃない。

 対戦した訳でもない、共に戦った訳でもない。

 なのにあっさりとチームに入れましたで納得行くわけないだろ」

「あ・・・・・・」


そう指摘され、周は自分の行動が浅はかだった事を認識した。


激闘の末にチームに誘った周。

自分を認めてくれたと思ったからそれに応じた竹内。

なのにコイツは対戦も無く、共闘も無く、ただ人数合わせの為に入れようというのか!


それはあれほどの試合を繰り広げた自分だけでなく、同じように周に認めさせた他のチームメイトたちに対する侮辱ではないのか。


竹内はそう言いたかったのだ。




「ゴメン、今回は私が浅はかでした」


周はそう言って自分の頭をコツンと叩く。

見ると周りはさっきまでの楽しかった空気が嘘のように静まり返っていた。


「悪かったな、突然難しい話して」


「え、いやいや、別に」

「・・・なんか・・・難しいのは伝わった」

「あと

 竹内さんが

 怒ってるっぽいのも」

「で、なんかこれからやるってんだろ」

「そうそう、全然理解できてますって」


しゅ~、と頭から煙を上げている子供達に謝る竹内。

どうやら雰囲気に気圧されて静かになっていたのではなく、話についていけなくて思考が止まっていたようだ。


「そういうわけでゴメン、まろんちゃん。

 仲間になる前にテストさせて?」

「テスト、ですか。

 はい、もちろんです」


パンッと両手を合わせてまろんに謝る周。

まろんは周の状況を理解したのか、それに答える。


「で、どうする?

 私がまろんちゃんと戦えばいいの?」

「いや、仲間に入れたくてさっきみたいな三文芝居でもされちゃかなわん」


さっきみたいな三文芝居、とはさっきのキラキラとした空間で繰り広げられたアレであろうか。


「むぁ!?三文芝居じゃないもん!

 迫真の演技だったでしょ!?

 それこそまさにアカデミー主演物理化学賞でも取れそうなくらいに!」

「主演物理化学ってなんだよ・・・・・・」


ガーと怒り出す周を軽くいなす竹内。


「じゃ、どうするの?」


俊介が聞くと竹内が答えた。



「俺が相手する」



お笑い一転シリアス、温度差が激しいです。

次回、新キャラまろんの特殊能力が炸裂!(



あ、あとアカデミー主演物理化学賞のイメージ画像お待ちしております。

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