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エアウォーク  作者: 隠戸海斗
第一期
29/102

第二十八話

「ファインプレイだね、周」

「今のはすごかったよ、周ちゃん」

「えへへ、上手くできてよかったよ」


麗奈と俊介の褒め言葉に照れた表情を浮かべる周。

実際今のプレーは下手をすればただ相手に道を明け渡しただけにもなりえる。

最悪、わざとファールを貰おうとしたということで自分がファールをとられる事もありえた。

そこは周の度胸とテクニックと運を褒めるしかない。



さて、試合再開。

自陣での敵のファールはサイドラインからのパスから始まる。

審判からボールを受け取り、コートの外に出るのは俊介。

コート内で周と麗奈が動き回ってパスを受け取るタイミングを探る作戦だ。

が。



「・・・・・・」


俊介の額にわずかに汗が浮かぶ。

先ほど同様周には竜崎、麗奈には滝田がそれぞれつく。

つまりそう、二人にパスを出そうという俊介の前に竹内が立ちはだかっているのだ。

高い身長に比例した長い手足はまさに壁、ただラインギリギリに構えるだけで壁と化す。


(まずいかな・・・・・・)


動き回りながら周はそう思う。


(パスを受け取る場所が見つからない・・・・・・)


俊介がパスを出せそうな場所を探りながら麗奈はそう思う。

まさに壁。

こんなのが目の前に立ちはだかったらその圧力は相当なものだろう。


だが忘れてはいけない。

今はサイドラインの外からのパスで、敵はラインの内側にいなければならないのだ。

俊介は自身を落ち着けるべくちいさく一息つくと、ラインから2歩ほど下がる。


「・・・?」


竹内がそれを怪訝な表情で見ている。

たとえ2歩でも遠くなれば壁はいくらか小さくなる。

それはただの比喩ではなく実際にそう見える。

そして壁が小さくなるということはパスコースが増えると言うこと。


それに気づいた麗奈が周と距離をとり始める。

これで周へのパスコースと麗奈へのパスコースの間隔が広まり、その両方を同時に竹内が塞ぐことはできなくなった。

そして俊介は3Pシュートの要領で高く遠くへとパスを出した。

その地点にはパスと同時に麗奈が走り出している。

俊介が出したパスを止めようと竹内が飛び上がったがそれも届かないはず。

あとはそうして皆が麗奈に注目し、また麗奈の援護をしようと駆け寄る周もマークするその外で自分へのパスを待つばかり。

それが俊介がパスを出した後にするべきことのはずだった。



しかし、竹内がパスを止められないという予測はあくまで予測であり、その後の計画もあくまで計画であり、竹内がパスを止められるであろう範囲もあくまで見込みでしかないのだ。

そして全ての計画は最初の予測から覆された。


俊介が出したパスに飛びついた竹内の指先がわずかにボールに触れたのだ。


(止めた!?)


俊介に動揺が走る。

完全に予想外だ。


「あ、あれが届くのかい・・・」


麗奈が小さく舌打ちをしてそうつぶやく。

こちらも完全に予想外。

いや、そもそもそのパスに手が届くなど彼らの今までの常識ではまずありえないこと。

予想外であるのも仕方が無い。


ゆえに、そのこぼれ球を即座に拾える者がいるとするならば。

あらかじめ自分が止められると信じていた竹内自身と、竹内なら止めてくれると信じていた彼の仲間と、そして、高速の脚と反射神経を持つ周!



竹内の着地と周のボールキャッチは同時だった。

しかしまだボールを拾った周に背を向けている竹内と既に加速をしている周とではその後のスピードが違う。

竹内が走り出す頃には既に周はゴール下に駆け寄り、立ちはだかってきた滝田をかわすところ。

わずかだがそれは圧倒的な差。


だがまだ決着がついたわけではない。

竹内のワンマンで勝ち残れるほどバスケットは甘くない。

それを示すように周を簡単には抜かせない滝田。

もっともそのディフェンスも周のターン一回でかわされてしまうのだが。

そしてそのターンにかかる時間と、ターンすることで戻ってしまう距離。

それはわずかの時間とわずかの距離。

しかし、その後シュート体勢に入ろうとしていた周を止める為に竹内が駆け寄るには十分な時間!


タン、と地面を踏み切った周はボールを頭上に構える。

だがそのシュートコースを塞ごうと伸びてくる竹内の右手。

このままなら竹内は周を止める。

しかしその結果にはわずかに綻びがある。


周が抜いた滝田。

周のシュートを止めようとしている竹内。

そして先ほどまで周をマークしていたが振り切られたので俊介へのパスコースを塞いでいる竜崎。


計算するまでも無い簡単な問題だ。

周は余っているフリーの麗奈にパスを出した。

受け取った麗奈は敵の3人の誰も反応できないうちにジャンプシュートを放つ。

リングを外してもボードに当たることでゴールを期待することが出来ない真横、初心者には難しい0°からのシュート。

しかし少しばかりブランクがあるとはいえ、外す麗奈ではない。

ボールは綺麗にリングを通過した。


「よっしゃ!」


麗奈がシュートを放った手でそのまま拳を作り、ガッツポーズをとる。


会場がドッと沸いた。



「やったー!!」

「先制点は、え~となんだっけ?なんとか・・・・・・愚連隊?」

「そうそう、何とか愚連隊」

「竹内が抜かれたよ」

「あのチーム本当にすごいな~」

「今のはあの白い髪の女の子の活躍があったからだよ」

「どんまい、トライホーン!」

「いけいけ!何とか愚連隊!」

「「「「サイコーッス!!!あねさん!!!」」」」



麗奈は周、俊介とパシッとハイタッチを決めた。


「やったね!まずは先制点!!」

「おみごとでしたよ、麗奈さん」

「ありがと、二人のサポートのおかげだよ」


二人の言葉に笑顔で答える麗奈。

まだ時間的に序盤とはいえ、膠着していた状態を抜け出せたのは嬉しい。

会場のあちこちから、愚連隊!愚連隊!と声が上がっている。



「にしてもあれだね~、愚連隊って連呼されるのはなんかこう・・・・・・」


麗奈は頬を掻きながらなにやら照れているようだ。


「あはは、そうだね、なんかね~」

「そうですね、なんかこう・・・・・・」


恥ずかしい気分・・・・・・と思う。

順調に勝ち進んでいった時に名前を呼ばれるのは嬉しかったものだが、こういう状況で連呼されるといささかおかしな名前だと自覚させられるらしい。

かと思いきや。


「すごくいい気分だねぇ!」

「だね!」

「え!?」


麗奈の言葉に周が同意する。

恥ずかしがってたんじゃなかったの?どんな感覚?と思ってしまう俊介であった。



「なにはともあれ」


麗奈が改めて気を引き締めるように口を開いた。


「会場の雰囲気も私たちも少しばかり追い風になってきたみたいだね」

「そうだね、追い風っていうのは気持ちいいよね」

「この流れ、大事にしていきましょう」


3人はそう言って別れた。

相手もそれまで作戦を決めていたようだがそれを見て別れた。

ただ、竹内は相変わらずコートの真ん中付近でどっしりと構えていたが、残りの二人はどうやら不安を感じているらしくまだ少しばかり話をしていた。


周はその様子を何か不思議なものでも見るかのように見ていた。



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