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エアウォーク  作者: 隠戸海斗
第一期
28/102

第二十七話

ヒュッと投げ上げられたボールに2人の男が飛びつく。

片や身長175cmの俊介、片や身長195cmの竹内。

20cmの差は圧倒的だった。

手の平一つ分ほどの差をつけて竹内が悠々とボールをはたき、仲間へと送る。


「くっ・・・」


俊介は小さく声を上げた。

高さ勝負ではまず勝てないだろうと覚悟はしていたがここまで圧倒的だとは思わなかった。

こうなるとゴール下等での高さ勝負は不利どころか一方的にされかねない。

ましてや周が相手をするとなるとどうにもならなそうな気がする。

そうなる前からプレスかけていくとかして対処しないとな、と考えながら俊介はボールの行方を追う。


竹内がはたいたボールは滝田の手に渡る。

それを見て竹内は周チームのゴールに向けて走り出す。

速攻をかける気か?と仲間達の様子を見ながら竹内を追いかける俊介。

だがボールは飛んでこない。

即座に滝田の前に割り込んだ周が上手くパスコースを塞いだのだ。


「チッ・・・」


こちらの読み通り速攻のつもりだったのか、それを防がれた滝田が小さく舌打ちをする。

が、すぐに周を抜こうと仲間の様子を見ながら隙を見る。

その間に俊介は竹内に追いつき、麗奈は残った竜崎のマークについた。

これで速攻は潰した。

竜崎はパスを貰おうと動き回り、麗奈はそれを阻止すべくついて回る。

滝田はパスを出そうとドリブルを始め、周は抜かせまいと立ちはだかる。

俊介もいつパスが飛んできても止められるようにと気を抜けない。

ただ一人、竹内だけが動かない。

先ほど周チームの最高身長の俊介がまったく手に負えなかったのだから、もはやこの試合で高さにおいては竹内の独壇場だ。

ならば高いパスさえ出せれば問題ない。

それをするのは仲間の役目、自分がフォローに回る必要は無いと、まるでそういうかのように竹内はただ静かにボールを待っていた。


わずか後に場は動いた。

滝田が仕掛けたフェイクに引っかかった周の隙を突いて滝田が放ったパスが竜崎に渡ったのだ。

フェイクからドリブルで抜こうとしてきたのならまだしも、直接パスされては周の反射神経でも追いつけない。


「あっ」


思わず振り返った周の隙を突いて、今度は滝田が前に出て竜崎からのパスを受け取る。

そのままドリブルであっという間に3Pのエリア内まで侵入してきた。

あとは竹内に高めのパスを出せば先制点へと繋がってしまう。

が、そんな滝田の前に。


ザッ


「!?」


俊介が立ちはだかった。

滝田は驚きの表情を浮かべる。


(こいつ・・・・・・竹内のマークはどうした!?)


思わず足を止めて、滝田は竹内を確認する。

もちろんノーマークだ。


(パスを出させない自信でもあるのか?

 バカにしやがって)


滝田はすすっと下がると3Pの要領で高めのパスを出す。

俊介はジャンプしたがわずかに届かない。

が。

タンッと床を踏み切ってボールに飛びつく影が一つ。

周だ。


「ん?」

(いつの間にここまで・・・?)


竹内も滝田も動揺する。

俊介の守備に驚いて足を止めた隙にここまで戻ってきたのか、と。



「あ、あれ?」


が、残念なことに周でもボールに手が届かない。

落下を始めたとはいえ、まだボールは弧の頂点付近だ。

パスを出した直後に俊介が届かなかったものを周が届くわけが無い。

しまったというよりは、やっちゃった!というような表情でボールを見送る周。

滝田の放ったパスは見事に竹内の手に収まった。

とはいえ俊介の接近に多少動揺があったのか、滝田のパスはわずかに短く、受け取った竹内がそのままシュートに行くことはできなかった。

仕方なく着地し、ゴールに向き直って一歩足を進めた瞬間。


パァンと、周にわずかに遅れて戻ってきた麗奈にボールを弾かれた。


「!!」


弾かれたボールは周が拾い、即座にドリブルで敵陣へと切り込んでいく。


俊介がパスをブロックし、麗奈が着地後のボールを奪い、周が攻撃へと転じる。

確かに竹内は一人だけで強力だが、周たちは3人がかりでそれを止めることに成功したのだ。


あわてて滝田も竜崎も周を止めに入ろうとするが、滝田は俊介が上手く抑えて守備に回れないようにした。

残るは竜崎のみ。

周は加速を続け一気に竜崎を抜こうとする。

が、さすが決勝戦まで残ったチームと言えよう、わずかに指先が触れ、抜き去ろうとした周の手元からボールが離れた。


「あ!」


止められるとは思っていなかった周がわずかに足を止めかける。

が、ボールを俊介がキープしたのを確認すると即座にゴールに向かって行った。

俊介は自分と周との間に割って入ろうとしてきた竜崎を抜くように低めのパスを出す。

周はそれを受け取るとそのままドリブルにつなぎ、一気にゴール下まで。

相変わらずドリブルをしながらでも足が速い。

竜崎は追いつけない。


そしていつも通りの綺麗なレイアップを放つ。



「やった!」

「先制点だ!」


観客席から子供達の声が上がる。


が。



パァン!!



「え」


ゴールリングに入るはずだったそのボールを、周の後ろから手を伸ばした竹内が弾いていた。



(た、竹内!?)


誰もがそう思った。

確か先ほどまで周ゴールの下にいたはずだ。

竜崎が周のドリブルを止めたわずかの間に差を詰めたということか。


竹内が弾いたボールは竜崎がキープした。

それを止めに俊介が駆け寄り、ゴールに向かっていく滝田は麗奈がマークする。

その間に、スタートの合図を交わしたわけでもないのに周と竹内は同時に走り出していた。

竹内のスピードは周にわずかに遅れる程度。

麗奈と同様か、もしかしたらわずかに早いかもしれない。

身長に比例したその足の長さは伊達ではないと言ったところか。

通りで先ほどのシュートが止められたわけだ。



俊介が竜崎の進行を止めようと立ちはだかる。

竜崎はそれを振り切れないながらも少しずつ敵陣へと進んでいく。

滝田は麗奈を振り切って竜崎からパスを貰おうとするが、麗奈もそう簡単には振り切られない。

そうしている間に周と竹内は周コートゴール下までたどり着いた。

それを見た竜崎がドリブルを止めて竹内へとロングパスを出そうとする。

それを阻止すべく、俊介はパスコースを塞ぐ。

が、竜崎はパスを出す振りをして、すっと自分の後ろにボールを落とした。

そしてそこに駆け込んできた滝田が見事にそれを拾う。

息の合ったコンビネーションだ。


「おっと」


しまった、と滝田を止めに行こうとする二人を、竜崎はバランスを崩した振りをして妨害した。

反則ではないしすぐに振り払えるが、その一瞬の間に滝田は悠々と竹内へのロングパスを放つ。


「な・・・!」

「まずい!」


麗奈と俊介が声を上げる。


パシッとボールを受け取った竹内は、先ほどは麗奈に取られたが今度は取られないようにと注意しながら一歩周ゴールに踏み込む。

繰り返すがその身長は195cm。

対する周は160cm。

175cmの俊介ですら圧倒的といえた差が、ここでは絶望的とすら言える。

竹内はボールを狙ってくるであろう周を左手で制しつつ右手でしっかりとボールを掴み、周ゴールに向けて飛び上がった。

ダンクを決める気だ。



「まずい!」

「これは防げないぞ!」

「決まったぁ!」


観客席から、今度こそゴールを期待する声が上がる。



竹内を相手にして高さにおいて敵う相手はいない。


そう、「高さにおいて」は。




「!?」


竹内が左手で制していた周が軽くなったような気がした直後。


「うわぁ!」


と、声が上がった。


そのまま周は竹内の左手に払いのけられたように吹っ飛び、ドタンと尻餅をついた。


ピッピー


ドガッシャーン!!


豪快なダンクが炸裂するもその直前には審判の笛の音。


「ファール!

 黄色の1番!」


審判が竹内のつけている番号を呼ぶ。

竹内は周にチラッと目をやったが、チッと舌打ちをして大人しく手を挙げた。



「はぁ~~~」

「た、助かった・・・」


麗奈と俊介から緊張が抜けた。

同時に観客席の子供達も、ため息をつきながら無意識に入れていた力を抜いた。



「危ない危ない」


周はすっと立ち上がると、特に汚れたわけでもないのに服の裾をパンパンッとはたいた。

そして。


「そう簡単にゴールは許さないよ」


極上の笑顔を浮かべながら竹内にそう言い放った。


「・・・・・・フン」


竹内はプイッと周から視線を外すと自分のコートへと戻っていった。




得点はまだお互いに0点のまま。

試合時間はまだ30秒を過ぎたところだった。



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