第二十六話 竹内祥吾
「ただいまの、スクランブル交差点チームVS風見爆走連合愚連隊チームの試合は、16-43で風見爆走連合愚連隊チームの勝利です。礼!!」
「「ありがとうございました!!」」
「ただいまの、トライホーンドラゴンズチームVSクワガタ取り放題チームの試合は、45-26でトライホーンドラゴンズチームの勝利です。礼!!」
「「ありがとうございました!!」」
外はすでに夕方とも言える時間帯、試合は順調に消化され、たった今準決勝が終わった。
決勝に駒を進めたのは、周たち風見爆走連合愚連隊と、豪快にダンクを放ち続けたあの白い帽子の大柄の男率いるトライホーンドラゴンズ。
これより15分の休憩の後、両者は決勝戦を行なう。
「お疲れ様~、お姉ちゃん達!」
「いよいよ決勝ですね!
僕達も応援頑張りますよ!」
「ありがと~!頑張るよ!!」
子供達の激励を受けながらしばしの休憩をとる周、俊介、麗奈。
最初の試合からさすがに時間が経っており、3人とも疲労しているようだがまだまだ笑顔は絶えない。
「いよいよ来たね、決勝戦」
「ええ。
結構気になってましたけど、あの人のチーム結局残りましたね」
麗奈の言葉に俊介が返す。
あの人のチームとはもちろんトライホーンドラゴンズの事だ。
周たちのチームでは、俊介の175cmがMAX身長だ。
そして俊介の身長ではリングに手を触れることすら出来ない。
それゆえに、ダンクが出来るような長身の選手というのはそれだけで脅威だった。
今までそういうチームと戦わなかったかと言うとそういうわけではなく、スピード、テクニック、戦略などで引っ掻き回すことでこちらに流れを引き寄せていたのだ。
が、あの白い帽子の男のように力押しで攻められるとさすがに厳しくなる恐れがある。
ましてあれほどの長身とは今まで戦っていない。
あくまで目測だが、あの男が今大会の最高身長だろう。
果たしてどうなるのか、そんな不安が沸々と湧いて来る。
とはいえその反面、今までのピンチはしっかりと乗り越えてきたという自信もある。
次の決勝戦が最大の山場となりそうだが、なんとかなる、なんとかするという想いも湧いて来る。
「ゴクッ・・・・・・ゴクッ・・・・・・ゴクッ・・・・・・ぷはぁ~~♪」
周が口元を拭いながらペットボトルを脇に置く。
今朝買ってきたばかりの大型のペットボトルはついに空となった。
それは、それだけ激しく運動していたと言うことになる。
「空に
なっちゃったね
お姉ちゃん」
「・・・何か買って来る?」
「ううん、大丈夫だよ」
子供達の言葉に、周はそう答えると大きく伸びをし、身体を右へ左へと曲げた。
そして首にかけていたタオルをしまうと、自分の顔を両手でパンッと叩いた。
「・・・・・・よしっ!」
「間もなく試合時間となります。
決勝戦参加選手はAコートまで集合してください。
繰り返します。
間もなく試合時間となります。
決勝戦参加選手はAコートまで集合してください」
放送が体育館内に響き渡る。
試合開始時間のおよそ5分前。
周たちは席から立ち上がった。
「・・・行こうか、麗奈ちゃん、しゅんくん」
「おう」
「うん」
周は二人に声をかけると、今度は子供達の方に向き直る。
「じゃ、行ってくるね、みんな」
「うん!」
「・・・がんばって!」
「いってらっしゃい!」
「応援してるぜ!」
「がんばって」
子供達は精一杯の思いをこめて、周たちにそう告げる。
3人は笑顔で答えた。
そして、決勝戦の試合会場へと向かう。
先にコートに現れたのは、黄色のゼッケンをつけたトライホーンドラゴンズ。
同時に歓声が上がった。
「頑張れー!竹内ー!!」
「滝田ー!!」
「竜崎!負けるなよー!!」
観客達はどこで知ったのか、声援の合間に選手達の名前を呼ぶ。
そしてトライホーンドラゴンズがコート中央に並ぶ頃、反対側から周たち、風見爆走連合愚連隊チームが現れた。
ゼッケンは青を身につけている。
同時に先ほどと同様の歓声が上がる。
「斉藤!!ガンバレー!!」
「「「頑張れ~!お姉ちゃ~~ん!!」」」
「女だって強いってことを見せてやれー!」
「かわいいぞー!」
「応援してるぞー!瀬戸内ー!!」
「「「あねさん!!ファイオーー!!!!」」」
「あと林田も頑張れ」
「みんなありがと~!!
頑張るからね~~!!」
声援に応えるように手を振る周。
「は、恥ずかしい声援してんじゃないよ!!」
ちょっと赤くなりながら不良たちに喝を入れる姉さんこと麗奈。
「・・・・・・なにか僕の応援がひどく少ない気がする」
なんとなく寂しい気持ちの俊介。
両者はセンターラインを挟んで向かい合った。
そして審判がボールを持ってやって来ると声援が少しずつ静かになっていく。
「ただいまより、風見爆走連合愚連隊チームVSトライホーンドラゴンズチームの試合を始めます。礼!!」
「「よろしくお願いします!!」」
両者が頭を下げると、一時静まった声援が再び湧き上がった。
「さて、それじゃ誰にマークつくか決めたいんだが・・・・・・」
麗奈が俊介にそう告げる。
そしてなにやら神妙な面持ちで言葉を続けた。
「・・・・・・その前に一つ気になることが出来た」
「・・・奇遇ですね、僕もですよ」
同じく神妙な面持ちでそれに答える俊介。
「・・・・・・何やってんのかね、あの子は・・・・・・」
「・・・・・・残念ながら僕にもよく解かりません・・・」
そう言って二人は周の方を見る。
周は一番背の高い、あの白い帽子の男のそばでなにやら飛び跳ねたり、手で身長を比べているかのような仕草をしていた。
「こら~、周。
戻ってきなさい」
麗奈に声をかけられてようやく作戦会議をしていることに気づいたのか、それとも我に返ったのか、周は二人の所に駆け戻ってきた。
「すごいよ~すごいよ~!!
あのおっきい人、竹内祥吾って言って、身長が195cmもあるんだって!!
すごいな~!すごいよね~!」
ものすごく嬉しそうな表情ではしゃぐ周。
目もものすごくキラキラと輝いている。
「・・・・・・すごいのは分かったから、っていうか分かってるから。
とりあえず落ち着きな、周」
「え~、これがはしゃがずにはいられないでしょ~?」
バタバタとその場で駆け足をするような仕草を見せる周。
決勝戦にもかかわらず疲労の色を見せない辺り、その体力には心底感心させられる。
「それで、だ。
3人そろったところで誰が誰のマークにつくか決めたいんだけど」
感心しつつも半ば呆れつつ麗奈がそう切り出すと、周は即座に手を挙げた。
「あたし、あのおっきい人がいい~」
「「え!?」」
これには当然ながら驚く。
思わず2人は周に振り返っていた。
なにせ周の身長は160cm、対するあの男は195cmと言っていたか。
35cmの身長差は並大抵の技術ではひっくり返らない。
背が高い、というのはただそれだけで武器になる才能なのだ。
それを分かっているのかいないのか、この少女にとっては巨人と言えるかもしれないあの男に対して挑むと言う。
「・・・・・・あのね、周、自分の言ってること分かってる?」
「む~、分かってるよ~。
私そんなにバカじゃないもんっ」
念のため確認を取った麗奈に対し、ぷ~っと頬を膨らませる周。
そして竹内と名乗ったあの男の方を見ながら言葉を続けた。
「この大会、ただ優勝するだけが目的じゃないの。
「強い人と戦う」、これも目的。
それで尚且つ優勝する、これが理想。
分かる?私は強い人と戦って、その上その人を倒して優勝したいの!
身長差で不利なのはもちろん分かってるよ。
でもそれを乗り越えてあの人に勝ちたいの!
今の私で無理だとしても、この試合中に必ず乗り越えてみせる!」
そこまでいうと周は今度は2人に向かってパンッと両手を合わせた。
「だから!お願いっ!
あの人と戦わせて!」
強者。
俊介や麗奈よりも強いかもしれないと思いながらも、周はその相手に挑みたいのだと言う。
これほど頼み込む周の姿を今まで見たことがあっただろうか、と思い返しながら2人はため息をついた。
そして、仕方ないなと言った表情でうなずいた。
「・・・・・・分かったよ、まかせた」
「・・・・・・うん、同じく」
「ホント!?」
聞き返す周の目は先ほど同様、いや、それ以上に輝いて見えた。
「まぁ、正直なところ、僕があの人の相手をして、他の2人を周ちゃんと麗奈さんに相手してもらうのがいいかな、とは思ってたんだけどさ」
「うん、あたしもおんなじこと考えてた。
でもま、あんたがそこまで言うんならいいよ」
「あ、ありがと~!2人とも~!」
2人の言葉に、周は2人を同時に抱きしめるように両手でしがみついた。
「その代わり!
あんたが言ったんだからしっかり責任持って押さえるんだよ、いいね?」
「もちろん!
私、絶対負けないからね!」
3人は顔を見合わせて笑いあった。
「ジャンプボール!」
審判の言葉に、俊介が前に出る。
対するは長身の白い帽子、竹内。
ジャンプボールでは竹内に奪われるだろうが、そのフォローを周と麗奈でこなす、今までと同じ作戦だ。
敵の2人、竜崎と滝田は自陣コートに立つ。
おそらく竹内がボールを取ることを確信しているのだろう。
対してこちらは麗奈が自陣、周が敵陣。
竹内がジャンプボールではたいたボールを周が狙い、あっさり敵がキープしてもそれを麗奈が狙う作戦だ。
やがて審判がボールをグッと下げて構える。
俊介と竹内も膝を曲げてジャンプの構えを取る。
そして。
ピィ――!!
試合開始を告げる笛の音と同時に審判がボールを高く投げ上げる。
俊介と竹内は同時にジャンプをした。
決勝戦、開始。




