第二十五話
※食事回です、空腹時及び深夜時間帯閲覧注意
「ジャジャーン!」
と、愛奈が派手な効果音を口走りながら持ってきたお弁当箱の蓋を開ける。
中身はご飯半分と仕切りが入っておかずがもう半分。
おかずも目玉焼きやらハンバーグやらちょこっと果物も入っていたりする、オーソドックスながらもなかなか見栄えのするお弁当だ。
「お母さんが作ってくれたんだ~♪
みんなは~?」
愛奈がキョロキョロとみんなの昼食を見回す。
「・・・私も・・・愛奈ちゃんとおんなじ感じ・・・。
・・・あ、こっちはみんなで食べてって」
「お~」
愛奈が右にいる真美のお弁当を覗きながら声を上げる。
真美のお弁当も愛奈と同じように、ご飯半分おかずが半分。
それともう一つ、フルーツだけが入ったタッパーを取り出した。
「僕はカレー弁当ですね」
真美と反対側にいる修也の昼食はご飯のみのお弁当とカレーのみのお弁当がそれぞれ一つずつ。
お弁当箱自体はあまり大きくないので量は愛奈達と比べても多少多い程度だ。
「俺はトンカツ」
「あ~、いいな~」
さらにその隣の恋二のお弁当箱を見て愛奈が声を上げる。
修也と同じようにご飯のみのお弁当とおかずのみのお弁当が一つずつ。
おかずの方に入っているのはトンカツが2枚とキャベツがたくさん。
それにトマトや他のフライも少々入っていて、定食として出てきそうな雰囲気がある。
「一枚ちょ~だい♪」
「ダメ。一枚って半分じゃねぇか」
「ちぇ~」
愛奈のおねだりを軽くいなす恋二であった。
「大紀くんのは?」
修也に言われてカパッと開けた大紀のお弁当の中身は。
「カツ丼かぁ!」
「おいしそうですねぇ」
愛奈と修也が声を上げる。
熱々ではないが半熟タマゴで包まれたトンカツがご飯に乗ったカツ丼であった。
「カツが俺とかぶったな」
「試合に
勝つ」
「だよな~!」
恋二の言葉に大紀が答え、隣同士の二人でなにやら親指を立てあった。
何か通じるものがあったようだ。
「お姉ちゃん達のは~?」
「・・・どんなの?」
子供達が周たちの昼食を覗き込むように見る。
と、一番端で頬杖を突いたまま何も取り出していない麗奈を見て子供達が疑問を浮かべる。
「あれ?麗奈お姉ちゃん、お昼は?」
「ああ、もうじき届くと思うんだけど」
「届く?」
何それ?といった表情で見ていると。
「お待たせいたしやした、姉さん!」
「ただいま到着いたしやした!」
「はいどうぞ、麗奈さん」
と、集まったのは例の不良たちであった。
そして弁当を差し出しているのは数少ない女不良、かつて周とバスケでケンカをしたユウであった。
「ありがと、ユウ」
「なんのなんの、です。
もう麗奈さんに喜んでもらおうと、姉貴に無理言って一食用意してもらいましたとも」
そういって差し出されたお弁当はどう見てもお弁当屋さんなどで見られるような箱。
しかしその箱に書いてある文字を見て俊介と周が声を上げた。
「!!!「ハザマヤ」のお弁当!!??
しかもその箱はまさか!!」
「一日10食限定のスキヤキ定食弁当ね!?」
おそらく椅子が固定式でなかったらガターンとひっくり返っていたであろう。
お弁当屋「ハザマヤ」
それはこの町に住む者なら誰もが知る有名弁当屋だ。
その弁当は決して安い値ではないものの、味は料亭クラスとまで言われている。
ただの弁当屋でありながら客が殺到し、開店からものの1時間で作り置きはなくなり、待ち時間コースとなる。
なかでもスキヤキ定食は10食限定。
あまりの人気に予約制になってしまい、今では1ヶ月待ちなどあたりまえとまでなってしまったその一品。
それが今目の前に!
「・・・・・・こ、これが本物・・・・・・都市伝説じゃなかったのね」
「あたりまえでしょ、うちのお弁当に失礼ね~」
周のつぶやきに、麗奈に弁当を差し出したユウが口を挟む。
「え!?ユウさんの家って「ハザマヤ」!?」
「そうだよ」
「ぜぜぜぜぜぜぜひとも次はわたくしの為に一食!
いや、一品で結構ですので!」
「ダメ、今日だって無理言って作ってもらったんだから。
そう・・・麗奈さんのためだけにね」
「ガ~ン」
やり取りの末にガクッとうなだれる周。
当然といえば当然なのだが。
「分かったよ周、ほら一口」
哀れんだのか肉を一切れ箸で摘むと、周の近くまでやってきて差し出す麗奈。
「あ~!
あ~~~~ん」
あ~~と口を近づける周。
そしてパクッとくわえるその寸前、麗奈の箸はくいっと踵を返し、その肉を麗奈の口へと放り込んだ。
「はむっ・・・・・・ん~~~~~♪おいひい」
「麗奈ちゃんの意地悪~~~!!」
がーっと泣き喚く周であった。
「で、そういう周のは?」
「私?私のは・・・・・・その・・・・・・」
と、なにやら周らしくない歯切れの悪い返事をしつつそ~っとお弁当を開けた。
中身はというと・・・・・・。
「ありゃ、ちょっとひっくり返っちゃってる」
中身はやはりオーソドックスなお弁当だがところどころぐちゃっとなってたりひっくり返っていたりしている。
それを見て麗奈がちょっとフォローを入れた。
「ん~?まぁ、味は一緒でしょ?」
「む~、この辺とか苦労したのに~・・・・・・」
そうつぶやきながら卵焼きをパクッと口に放り込む周。
「え!?もしかして周お姉ちゃんの手作り!?」
「・・・・・・う、うん・・・・・・」
「へぇ~!すご~い!」
「・・・おいしそう」
愛奈と真美が普段以上の憧れのまなざしで周のお弁当箱を覗き込んでいる。
バスケが出来る女、よりもやはり料理が出来る女、の方が憧れ度が高いのだろう。
「え、えへへ・・・・・・ありがと♪
で最後、しゅんくんは?」
周がくるっと俊介の方を向くと、そこには市販のサンドイッチをほおばる俊介の姿があった。
「え~!?しゅんくんお弁当じゃないの?なんで~?」
「なんで~って普段から購買のパンとか食べてるけど・・・」
「も~、空気分かってないな~」
不良が入り浸る喫茶店に平然と入るような人には言われたくない、とは思ったがそこは黙っている俊介であった。
すると。
「しょうがないな~、ほら」
と、周は箸で小さめのから揚げをつまみ、それを俊介に差し出した。
「え?」
「さすがに寂しいでしょ?あげる♪」
「あ、ありがとう」
周の好意に感謝しながら手で受け取ろうとすると。
「はい、あ~ん」
「・・・え!?」
なにぃ!?と皆が声を上げかける。
突然こんな状況に陥った俊介も真っ赤になりながらおどおどしている。
が。
「ほら早く」
なにやら少し照れながらも箸を近づけてくる周。
そしてぽか~んと開いた俊介の口にから揚げを押し込んだ。
「・・・・・・どう、かな・・・?」
「あ・・・うん・・・・・・」
不安げな表情の周を見ながらもぐもぐと口を動かす俊介。
やがてごくっと飲み込み一言漏らした。
「・・・おいしい」
「ほんと~?よかった~♪」
ほっと笑顔に戻ると周は自分のお弁当をバクバクと食べていった。
はい、あ~ん、などという不意打ちを喰らってまだどこかぼ~っとしている俊介に、突然さっと何かが差し出された。
「・・・・・・え?」
「・・・あの・・・どうぞ・・・」
見ると真美がつまようじにリンゴを指して差し出している。
「あ、うん、ありがとう」
と、受け取ろうとすると、真美の手がひょいっと逃げてしまう。
「・・・・・・?何?」
相変わらず真美は俊介にリンゴを差し出している。
いまいち真美の意図がつかめない俊介。
受け取ろうとするとひょいっと逃げ、手を下げるとリンゴが近づく。
何回かやっていると次第にリンゴが俊介の口に近づいているのが分かった。
つまりなんだ。
「・・・・・・あ~ん」
ようやく意図がつかめた俊介は再び赤くなりながら口を開く。
そしてようやくリンゴは俊介の口に入った。
リンゴを口に入れると真美はようじを引き抜き、そそくさと席に戻っていった。
今日はなにやらうらやましい状況に恵まれた俊介だった。
と。
ドガッシャーン!!
「きゃ!!」
「うおっ!?」
「なんだ!?」
突然の轟音に会場中がざわめく。
「な、何今の?」
周が首をすくめながら周りを見回すと、何人かがコートを指差しているのが見えた。
一体何が?と目をやると。
「・・・・・・え!?」
2面あるコートのうちの入り口から見て奥側、周たちが見ている目の前のコート。
そのゴールリングに両手でぶら下がる人影。
周辺には彼が吹き飛ばしたと思われる敵チームのメンバー2人が倒れている。
そう、今の轟音はボールをリングに叩き込んだ、つまりダンクの音だったのだ。
「な・・・・・・な・・・・・・」
声も出ない周たち。
その目の前でリングにぶら下がっていた男はスタッと着地する。
すらっと伸びた身長はおよそ2m弱。
筋肉質な体つきではないが、おそらくパワーは圧倒的。
スッと屈むと落ちていた白い帽子を拾ってかぶる赤いゼッケンの3番。
「・・・・・・あの帽子・・・・・・」
俊介がつぶやく。
そう、試合前にトーナメント表を取ってきた帰りにすれ違った大柄な男。
あれはほぼ間違いなくこの3番の男だ。
試合はその後、この男が22本のダンクを決め、他のメンバーのシュートと合わせて56点を取って勝利となった。
チーム名はトライホーンドラゴンズ。
トーナメント表で確認すると、周たちとぶつかるとすれば決勝戦だった。
書いててお腹がすいた回です。
読んでてお腹がすいたと言われたら謝ればいいのか誇ればいいのか・・・・・・。




