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エアウォーク  作者: 隠戸海斗
第一期
25/102

第二十四話

「ジャンプボール」


審判がそういい、センターサークルの中で向き合う二人の間にボールを構える。

センターサークルの中にいるのは麗奈と敵2番の田島。

そして、試合開始のブザーと同時にボールを上に放り投げる審判。

麗奈と田島は同時にジャンプをした。


パァン


「よし」

「チッ」


身長差の分だけ有利な田島がジャンプボールを制する。

ボールを拾ったのは中島。


「行くぜ!」


中島はドリブルで攻め込んできた。

切れはないが安定したドリブルだ。

安定しているということはミスが少ないということだ。

それは本来武器になりえるもの。

しかし。



パァン!



「ん?あれ?」


それは相手が凡庸なればこそ。

このスピードと安定性をもつ白髪の少女の前では到底武器にはなりえない。


周はそのスピードでもって、一瞬で中島のボールをさらった。


「は、速い!止めろ!」

「しゅんくん!」


敵が指示を飛ばす。

それよりも早くに俊介にパスを出す周。

先ほどの子供達同様、先制点を取ってそのまま押し崩す作戦だ。

だが、ボールを受け取った俊介はまだ緊張が取れていないのか手つきが危うい。

そしてすぐにボールを奪われてしまったのだ。


「あ、しまった!」

「へ、ちょろいぜ」


すぐに周と麗奈がフォローに向かうが、敵は次々にパスを回してあっという間にゴール前。

止めることができずに悠々とゴールを決められてしまった。


0-2


パッと得点が変わる。

客席から歓声が上がった。



「ドンマイ、しゅんくん」

「まだ緊張してんのかい」

「う、うん、ごめん」


二人に謝る俊介。

そして自分の顔をパンパンッと軽くはたくが、そんなことで緊張感が取れたりはしない。


(ど、どうしよう・・・・・・まだ緊張が取れない・・・・・・。

 中学の時もこんなことなかったのに・・・・・・)


周と一緒に試合をしているから、だろうか?

そんなことを考え、チラッと周を見る。

が、周はすでにボールを拾ってエンドラインの外に構えていた。


「速っ!ちょっと周、しゅんがちゃんと緊張とってからじゃないと・・・」


麗奈がそういうと周は仕方なさそうに近寄ってくる。


「大丈夫だって、しゅんくんなら。

 だってさ・・・・・・」


周は麗奈にも聞こえるようにそういうと、最後に俊介にだけ聞こえるようにそっと囁いた。

そして周は俊介にボールを渡す。


「はい、またパス出すからね」


周はそういうとコートの中に入っていった。


「まったく何考えてるんだかねぇ・・・。

 ・・・・・・しゅん?」


呆れるように周を見送ったが、俊介を見た瞬間、あれ?と麗奈は違和感を感じた。


「そうですね、まったく何を考えているんだか。

 これじゃますます・・・・・・」


と、そこから先は自身の中でのみ呟いた。


「何弱気になってたんだか、僕は」


俊介はそうつぶやくと、軽くボールをつきながらエンドラインに向かう。


「麗奈さん、この試合勝ちましょうね」

「あ、うん・・・・・・」


・・・・・・緊張感・・・・・・抜けてる?


周に何を言われたのか気になったが、そこはまぁいいだろう。


「まったく、調子いいんだか不器用なんだかわかんない二人だねぇ」


麗奈は俊介を見送り、やがて自分もコートに向かっていった。



試合再開。


俊介は麗奈にパスを出す。

麗奈は受け取るとドリブルで自分についている田中を抜きにかかる。

田中はしっかりついてくるが、麗奈は徐々に相手コートへと進んでいる。


「何やってんだ田中」


やがて痺れを切らした田島が麗奈のボールを奪いに行くと、麗奈はフリーになった俊介にパスを出す。

そして俊介を止めに来た中島の隙を突いて周にパスを出す。

田島が周を止めに、田中が麗奈にそれぞれマークにつく。


周は一気にゴール下まで駆け込むがその間に田島に追いつかれる。

いつものスピードがないようだ。

周は田島を引き付けたまま、多少強引だがシュートを決めにいく。


「させるかっ」


田島がシュートコースをふさぐようにジャンプをする。

すると周は空中で身体をひねり、後ろを向くと麗奈にパスを出した。

麗奈はパスを受け取るとシュートを構え、ジャンプをする。


「甘いぜ」


麗奈のマークについている田中もともにジャンプをする。

が、麗奈はギリギリ左足を地面についたままだ。

つまりジャンプはしていない。

そのままドリブルに切り替えてあっさりと田島を抜いた。


「ちっ!」

「まかせろ!」


残った中島が麗奈を止めに入る。

麗奈は再び構え、今度は確かにジャンプをした。

中島もジャンプをする。

中島の片腕にシュートコースを塞がれた麗奈は周にパスを出そうとするが、そのパスコースは空いているもう片手に塞がれた。

このままパスを出せずに着地してしまっては歩いたとみなされ、トラベリングで相手ボールになってしまう。

中島はにやっと笑った。

が、麗奈もにやっと笑い返し、くるっと手首を返すと真後ろにパスを出した。


「え?」


パシッと受け取ったのは俊介。

そこは3Pラインの外。

俊介はシュートを構えた。

しかしシュートを打たせまいと田中が俊介に向かっていた。


「うおおぉ!!」


田中はジャンプをしてシュートコースをふさぐ。

が、俊介は冷静に田中のブロックをかわすと、ヒュッとボールを放った。

それはまさに普段の練習どおりのシュートだった。

大きく弧を描いたボールは綺麗にリングを通過した。


3-2


再び得点がパッと変わり、会場から歓声が上がった。


「ちっ、3Pか、ついてやがんな」


田中はそうつぶやいて仲間のところに戻っていった。

一方俊介の下には周と麗奈が駆け寄ってきた。


「やったね、しゅんくん」

「すごいじゃないか、もう完全にいつもの通りだね」

「ええ、ご迷惑おかけしました。

 もう大丈夫ですよ」


二人の言葉に俊介は笑顔で答える。


「にしてもなんで一瞬で緊張が」

「え・・・」

「それは・・・・・・ね・・・?」

「うん・・・それは・・・」


麗奈の言葉にしどろもどろになる俊介と笑顔の周。

本当に何を言ったのか気になるが、あんまり二人を意識させるのもまずいかなと思った麗奈は。


「まぁ、いいよ。

 今は試合に集中しようか」

「そうしよう、ね」

「う、うん、そうしようか」


そう告げる。

二人もそれに従った。


俊介は自コートに戻りながらチラッと周を見る。

すると周と目が合った。

周も俊介を見ていたのか。

目が合って一瞬目をそらしかけたが、周は照れ含みの笑顔を浮かべた。

俊介も笑顔を返した。


周が俊介の耳元で囁いた言葉。


「・・・日本一のシューターになるんでしょ?」


それを思い返しながら。




ビ――


試合終了を告げるブザーが鳴る。

同時に会場から拍手が送られた。

コートの中央では田中島とグレートミラクル一億万年(略)が向かい合っていた。


「ただいまの、田中島チームVS・・・え~と・・・風見爆走連合愚連隊チームの試合は、2-72で風見爆走連合愚連隊チームの勝利です。礼!!」

「「ありがとうございました!!」」


両チームともに頭を下げ、試合は終わった。


結局田中島チームは最初の2点しか取ることができず、それ以降は完全に周たちに押されることになった。

久々の試合でハイになっている周と麗奈、そして平常心を取り戻してから3Pをバシバシ決めた俊介を相手にしていたとしてもこの点差は驚きだ。

それまでの試合では40点台を取れるチームもあまりいなかっただけに、72点と言う点数には観客一同拍手喝采だった。



「こ、こんなはずでは・・・」

「なかったのに・・・・・・」

「なぜこんなことに・・・・・・」


挨拶するのもそこそこにトボトボと退場する田中島チーム。

それを見送ることもせず、こちらは笑顔で退場する風見爆走連合愚連隊チームであった。




「「「「「おかえりなさ~い!」」」」」


観客席に戻るともう子供達の熱烈なお出迎えだった。

駆け寄ってくる子供達に周は右手の親指を立てて答える。


「お~!勝ったよ~!!」


そして子供達はあっという間に周たちを囲んでしまう。


「すごい!すごいよお姉ちゃん達~!」

「あんなに点差付けるなんて思わなかったぜ」

「すごい

 すごい」

「こんなにすごい試合が見られるとは思いませんでしたよ」

「・・・うん、お姉ちゃん達すごい」


子供達は自分の感動を伝えようとあれこれ言葉をまくし立てた。

そんな子供達に周は笑顔で答えた。


「もちろん!皆の分も頑張って、優勝するまで勝つよ~!」

「「「「「お~~!!」」」」」


子供達もノリノリだった。



その後の試合も滞りなく進んでいく。

同時に時間も経過していく。

そしてやがてどこからともなく、ぐ~・・・と音が聞こえた。


「・・・・・・?何?今の?」


俊介の言葉に子供達もキョロキョロする。

すると。


「てへ、おなか減っちゃった♪」


と、周が舌を出しながら答えた。

そう言われれば時刻はそろそろ12時を迎える。

昼食時だろう。

周囲を見渡せば持って来たお弁当やら買ってきたサンドイッチやらを食べている人たちが見られる。


「そうだね、じゃあお昼にしようか」

「賛成~♪」


麗奈の言葉に周がバンザイしながら賛成する。

子供達も賛成~と手を挙げていき、昼食の時間となった。



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