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エアウォーク  作者: 隠戸海斗
第一期
23/102

第二十二話

この体育館は通常の体育館の2倍の広さがある、それは前述の通り。

それゆえにこの体育館には2面のコートを用意できるのだ。

間をネットで仕切れば、ボールがもう片方のコートに飛んでいくこともそうなくなる。

これにより、登録された全64チームによる試合は通常の倍の速度で進行できる。


試合時間は前後半なしの10分試合。

控え選手なしの試合のため、5ファウル、怪我などにより欠員が出た場合はその場で敗北となる。

相手チームに怪我人が出て怪我をさせた本人が一発退場など、両チームともに人数が欠けた場合は、両チームとも負けの扱いになる。


トーナメント表を配り終えた後、これらのルール説明がなされたところで大会実行委員あいさつは終了となった。



「なるほど、怪我に気をつけていけばOKってことか」


俊介がそうつぶやく。


「ファウルも注意しないとダメだよ?」

「試合時間10分じゃ、5ファウルなんてそうそう出ないよ」

「あ、そっか」


周の言葉にそう答える俊介。

周は納得したようにうなずいた。

最初の試合開始までもう少々、疑問があるのなら今のうちに解決しておくべきだろう。

もっとも一番最初の試合でない限りは、他のチームの試合とそれに対する審判団の反応を見ることもできる。


「で、麗奈さん、僕達のチームはなんて名前なんですか?」

「ん~?気になるかい?」


俊介の言葉に麗奈が笑顔で質問を返す。


「そりゃ気になりますよ」

「はは、呼ばれたら声かけてやるよ。

 それまで自分がいつ試合か分からないってのも面白いだろ?」

「・・・・・・まあ、そうかも」


そう言われて俊介も引き下がった。

麗奈は周や俊介にも、子供達にもチーム名を教えなかった。

確かに面白いだろうが、不安と言えば不安だろう。

ついでに麗奈はヒントとして、最後の方と言うわけじゃないけどすぐに試合ってワケでもない、と言うようなことを言った。


(ヒントになってないなぁ・・・)


俊介はそう思ったが無理もないだろう。


一方子供達の方は早くに試合があるようだ。


「えっと、9番目に名前が書いてあるから・・・・・・5試合目だね。

 一度に2試合ずつやってるから・・・・・・最初の試合の・・・次の次・・・か」


修也がそう言うと不安やら期待やら、子供達はそれぞれ声を上げた。


「大丈夫だよ」


そこへ周は声をかける。


「皆頑張ってきたんだから、相手が大人たちばっかりだってそう簡単に負けたりしないよ。

 緊張しないでいつも通りやれば大丈夫だよ」


そう言って子供達を励ます。

その言葉に子供達は顔を見合わせつつも勇気付けられたようだ。


「・・・で、結局誰が試合に出ることになったの?」

「ああ!そうだ、それ聞いてなかった。

 誰と誰と誰?」


俊介の言葉に周も思い出したように食いつく。

そういえば子供達のうち結局誰が試合に出るのか聞いていなかったのだ。

昨日まで試合形式で練習をしていたものの、結局最後までメンバーは決まらなかったのだが、子供達はその後でしっかり話し合ったようだ。


「・・・試合に出るのは、恋二くんと大紀くんと愛奈ちゃんだよ」


真美がそう答える。


なるほど、大人相手に通じるかは別として150センチある大紀は子供達には心強いだろう。

また、愛奈の丁寧なパスワークやドリブルも重宝される。

恋二はそもそも同学年が相手ならそうそう負けることはないだろう、既にそれほどの腕だ。


「うん、きっと勝てるよ」

「頑張りな、みんな」

「応援してるよ」


周、麗奈、俊介はそれぞれ子供達を応援する。

子供達もだいぶ緊張が抜け、やる気になってきたみたいだ。



そして試合は進む。

最初の4試合が終わると恋二たちの出番だ。


「続きまして、目指せ優勝キッズチームVS20代三本柱チーム、並びに・・・」


放送が入る。

「目指せ優勝キッズ」と言うのが子供達のチーム名だ。

名前はやはり子供達だけであれこれ考えてつけたものだ。



「よし、いくぞ」


恋二が声をかけると大紀と愛奈が立ち上がる。


「3人とも、楽しんできな」


周はそういって親指を立てる。

3人もそろって親指を立てた。



「あう~、そうは言ったものの不安だよ~」


周がコートに入っていく3人を見ながらつぶやく。


「なに言ってんだい、みんなはあんなに堂々とコートに入ってくじゃないか」

「子供の試合を見る親の心境、ってやつ?」


そんな周を見ながら麗奈と俊介がそういう。


「だって心配じゃない?

 相手チームどう見ても大人だし・・・」


そういいながら相手チームを指差す。

確かにどう見ても大人だ。

チーム名から察するに20代なのだろう。

身長差も明らかだ。


「・・・・・・まぁ、なるようになるでしょ」

「うぅ~、麗奈ちゃん冷たくない?」

「・・・そんなつもりじゃないけど・・・。

 まぁ、勝っても負けても勉強にはなるでしょ」

「そりゃそうだけどさ~」


周をなだめるように麗奈は言う。


「まぁ、精一杯応援してやんな」

「それはもちろんよ。

 よし、さっきの不良さんから旗借りてこよう」

「・・・それはやめてくれ・・・」



そんなやりとりなど当然知らないコート上の3人。

便宜上渡された青の背番号をそれぞれつけている。

恋二が1、大紀が2、愛奈が3だ。

何か別のスポーツのユニフォームだろう。


背番号をつけた3人は観客席の周たちを見て頭をかいていた。


「・・・・・・なんか騒いでるな」

「きっと

 いっぱい

 応援してくれるよ」

「あはは、そうだね。

 精一杯頑張ろうね」

「おう」

「もちろん

 頑張る」


よし、と3人で気合を入れてコートの中央に向かう。

相手はどう見ても大人、身長も高い。

しかしそれに気押されることなく、子供達はその前に立った。


「君達が相手かい?」

「よろしくたのむよ」

「本気でやらせてもらうけど、恨みっこなしだよ」


恋二たちと同様にそれぞれ黄色の1、2、3番のユニフォームをつけている敵3人は余裕の表情を浮かべる。

しかし。


「はい、こちらこそ。

 よろしくお願いします」

「「よろしくお願いします」」


子供たち3人も笑顔で答えた。



「ジャンプボール」


審判がセンターサークルの脇に立ってボールを構える。

隣のコートの審判と目を合わせ、タイミングを合わせて笛を吹き、ボールを放り投げる。

同時にセンターサークル内に構えていた大紀と敵がジャンプをする。

身長差は歴然。

簡単に敵にボールを奪われてしまった。


「一気に行くぜ」

「おう」

「いくぜ」


敵は一気にドリブルで攻めてくる。



「おいおい、子供相手に手加減なしか?」

「いいのかよ、泣かすなよ~」


観客からそう声が上がる。

確かに大人3人が本気でかかれば小学生など相手にならないだろう。


「うぅ~、がんばれーみんなー」


周も負けじと応援する。

多少弱気だが。



観客の誰もが大人有利を疑わなかった。


その、敵のドリブルを。



パァン!



「ん?」

「は?」

「え?」



あっさりと、恋二は止めた。

思考が止まる敵3人を横目に恋二は敵ゴールを目指す。

余裕を見せていた敵は全員攻めてきている。

その一番後ろでドリブルをしていた敵からボールを奪ったのだ。


すでに、ゴールまでがら空きだ。


「しまった!止めろ!」


2番の男の声とともに敵3人が一斉に戻る。

さすがに早い。

子供達の中でも一番に速い恋二の足を持ってしてもゴール直前で追いつかれた。

しかし恋二は構わずレイアップを放とうとする。


「させるかぁ!」


1番の男がジャンプをして恋二のシュートコースをふさぐ。

しかしそれを見越していたかのように恋二は空中でボールを持ち直して大紀にパスを出した。

そこは3Pラインの外。


「一番背の高い奴がゴール下じゃなくて外に?」


3番がつぶやく。

大紀は両足をそろえてジャンプするとシュートを放った。

審判が手で3Pの合図をする。


「は~、最近の子供は3Pなんて打つのか、驚異的だね~。

 ま、入ればだけど」


余裕ぶってボールを見送る2番。

そのボールは。


スパァン、とリングに吸い込まれた。


「「「なにぃぃ!!?」」」


敵3人から驚愕の声が上げる。

会場もどっと沸いた。



「やったー!!」


子供達と俊介たちも例外ではない。

我がことのように騒いだ。


「いきなり決めるなんて!」

「すごいすごい!」

「さすが、しゅん直伝の3Pだね」


そう、3Pを教えたのは俊介。

子供達の中でも大紀は特に練習に励んでいたのだ。


「やったよ、周ちゃん。

 やっぱり心配なんて要らないよ」


そういう俊介の言葉に、しかし周は。


「・・・・・・も、もしかしたらまぐれかもしれない」

「・・・なんで今日はそんなにマイナス思考なのさ」

「不安なのは分かるけど、あの子達は出来る子なんだからさ」


はぁ、と俊介と麗奈はため息をついた。



「お、落ち着け、あんなのはまぐれだ」

「そうだ、あんなの2度も3度もあるもんじゃない」

「そ、そうだ、大丈夫だよな」


敵3人はそういいつつも激しく動揺していた。

子供達の先制攻撃が精神的にも効いているようだ。


「よ、よし、落ち着いていくぞ」

「おう」


エンドラインからのパスで試合再開。

まだ3点取られただけだ、挽回はいくらでも出来る。

そう言い聞かせ、パスとドリブルで恋二たちのコートに攻め込んでいく敵たち。

さすがに上手い。


ボールを持った3番がセンターラインを越えた辺りで一気に動き出した。

まずついていた恋二の上を通して3Pライン付近で構えていた仲間にパスを送る。

受け取った2番はマークについている大紀をかわすとゴール下にパスを出す。


「よし」


受け取った1番は一気にシュートに持っていった。



「・・・あ、決められちゃう」

「まずい、さすがに止められないか?」


真美と俊介が声を上げる。

が。



ドンッ


「きゃ!」

「え?」


シュートに行く途中、手が近くにいた愛奈に触れる。

愛奈はそのまま倒されてしまった。


ピピー!


ゴールは決めたがノーカウント、審判の笛が鳴る。


「ファール、黄色1番」



ほっと周たちは肩をなでおろす。



「大丈夫?

 愛奈ちゃん」


大紀が近寄ってきて手を貸す。


「うん、大丈夫だよ。

 狙い通りだもん」


愛奈はそう言った。

それを聞いたのは近くにいた1番の男だった。


(な、なに?この子、子供のくせにファウルを狙ってとったと言うのか!?)


狙ったかどうかも怪しいが。

どうやら先程点を取られたときのプレーが拭いきれていないらしい。



さて、仕切り直し。

近くのサイドラインからパスを出す愛奈。

そして今度はパスとドリブルを駆使して恋二たちが攻め込む。


「くそ、通すかよ!」

「そこで止めろよ!」


声を掛け合いながら止めようとする敵たち。

もう油断もしていないようだった。


ポンッとパスを出した恋二は同時に敵陣に攻め込む。

受け取った大紀はシュートを構える。


「う、打たせるか!」


必死にジャンプする2番。

先程の3Pが忘れられないらしい。

そのブロックを見て恋二へのパスに切り替える大紀。


ゴールに背を向け、受け取る恋二。

そしてそのすぐ後ろに立ちはだかる敵の3番。

さっきドリブルをしていて恋二に止められた男だ。


「フフ、さっきは油断したが、もう抜かせないぞ」


そう余裕そうに言うが、その構えには油断も隙もなさそうだ。

恋二はふぅとため息をついた。


「・・・あっそ」


そしてくるっと時計回りに回りながら左手でボールを持ち、男から見て右側を抜こうとする。


「抜かせるかぁ!」


ばっと右側に行く男。

それを実際に見ずとも背中越しに感じた恋二は、ドリブルを始める直前にボールを右手に持ち変える。



そして右手でドリブルをしながら反時計回りに2回転、くるくると回りながら敵の左側を抜き去る。



そしてゴール下でボールを持ち替え、シュートを放った。




「・・・・・・え!?」


男は自分を抜いた恋二に目をやる。

そして恋二が既にシュートを打った後だと気づいた。


放たれたシュートは綺麗にリングを通過した。




唖然とする敵たち。


恋二は落ちてきたボールを渡しながら言った。


「・・・たいしたことないね」




会場は再び歓声に包まれた。




「だ・・・・・・ダブルロールターンシュート・・・・・・?」


そう呟いたままあんぐりと開いた口が塞がらない俊介。


「・・・・・・いつの間にあんなモン身につけたんだい、あの子は・・・」


苦笑いをしながら頭をかく麗奈。

しかし完全に驚きの方が上回っているだろう。

周も同様に驚きの表情を浮かべていた。

そして。


「も、もしかしたら・・・・・・勝てるかも・・・」


今更ながらにそう呟いた。


ロールターンシュートはありますが、ダブルロールターンシュートなんて存在しません。

2回やってるからかっこよく名前付けてみただけです(


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