第十八話 日常
ジリリリリリリリリリ!
「・・・・・・んあ?」
けたたましい目覚ましに叩き起こされ、少女はマヌケな声を上げた。
そのまま布団の中でしばらくもぞもぞ動いていたが、やがて手を伸ばし、近くにおいてある目覚ましをポンッと叩く。
たったそれだけで目覚ましの息の根を止めると、少女は布団をばさっと払いのけ、起き上がる。
しばしボーっとすると目をこすりながらベットから下り、ん~~と大きく伸びをする。
そしてどこかおかしな一言。
「おはよう、私」
朝5時半。
斉藤家に朝が訪れる。
周は朝起きるとすぐに着替える。
パジャマを脱ぐと自分の机の上に前日のうちにまとめておいたシャツとハーフパンツを身につけ、しわにならないようにハンガーにかかっている制服とワイシャツをたたむ。
そしてパジャマと制服とワイシャツと、さらにスポーツバックを手に取り、自分の部屋を出ると一階の洗面所へ向かう。
洗面所につくとパジャマを洗濯機へ、制服とワイシャツをかごに入れて隣の棚に置く。
こうしておけば帰ってきてシャワーを浴びた後すぐに制服に着替えられるからだ。
そして冷たい水で顔を洗い、パンパンッと顔を叩いてしっかりと目を覚ます。
同時に気合も入れる。
「・・・よしっ」
タオルで顔を拭くとくしを取り出して髪を整える。
とは言っても銀交じりの白髪は髪質のおかげか、腰の辺りまで伸びているにもかかわらず翌朝爆発していたりはしない。
さっとくしを通すだけで結構整う。
二、三度繰り返してくしは終わり。
他におかしなところはないかと鏡の中の自分を観察する。
顔を上に向けたり下に向けたり、左を向いたり右を向いたり。
その間も鏡の中の瞳がじ~っと周を見つめる。
その瞳は一見黒だが濃紺色、珍しい色合いかもしれない。
やがておかしなところはないなと判断すると「よしOK」とつぶやき、バックを持って台所へ。
とりあえずバックは適当なところにおいておき、冷蔵庫から牛乳と前日しまっておいたおにぎりを取り出す。
牛乳はコップに3分の2ほど。
そして牛乳の入ったコップとおにぎりを持って椅子に座る。
ものの5分ほどで朝の簡単な食事は終わる。
コップを簡単に水ですすぎ、おにぎりを包んでおいたラップはゴミ箱へ。
身支度と食事を済ませた周は冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出してバックに放り込む。
このスポーツドリンクはいつも母親にまとめて買ってきてもらっているのだ。
そして再び洗面所へ行き、スポーツタオルを取り出すとそれもバックにしまう。
準備が整ったら玄関へ行き、バスケットボールから網を取り外してやはりバックへ。
そして靴を履き、いつもの公園へ練習に出かけるのだ。
まだ母親は起きていない。
父親は単身赴任で別の地。
それでも家を出る時にはこの一言を忘れない。
「行ってきます」
周はそういって家を出た。
家を出たところで大きく息を吸う。
澄んだ空気が肺を満たす。
「うん、今日もいい天気ね」
周はそう言って道路へ出る。
そしてそこでいつも通り、幼馴染と顔を合わせるのだ。
「おはよう、周ちゃん」
「おはよう、しゅんくん」
見計らったようなタイミングでやってくる俊介。
もしかしたら実際にタイミングを見計らっているのかもしれない。
「じゃ、行こうか」
「うん」
どちらともなくそういうと二人は一緒にいつもの公園を目指す。
「よーい、ドン!」
もちろん走って。
だから俊介はさらに早い時間から起きて軽い朝食を取り、身体を落ちつけた後家を出ている。
食事を取ってすぐに走って平気なのは世界広しと言えども周くらいなもの、皆さんマネをしないように。
そして5分ほどダッシュを続け、ようやく公園へ着く。
周が1位で俊介が2位。
かと思いきや。
「お、来たね、2人とも」
先客一名、麗奈である。
「おはよー、麗奈ちゃん」
「おはよう、周。
しゅんもおはよう」
「おはよう、麗奈さん」
3人は朝の挨拶を済ませた。
俊介は麗奈のことをさん付けで呼ぶ。
もっとも最初は敬語で話し、しかも瀬戸内さんなどと呼んでいたからよく笑われたものだ。
「いいよ、瀬戸内さんなんて。
同い年の仲間なんだからさ、あんたも麗奈でいいよ」
とは言われたものの、誰かを呼び捨てなんてしたことが無い俊介はしどろもどろで呼んだものだ。
ようやくこの呼び方に慣れてきたのも結構最近の事。
ちなみに麗奈が一番早く着くのは一番この公園の近くに住んでいるからだ。
だから自分のボールを持ってきて、よく一足先にウォーミングアップをしている。
しかし麗奈はどうやら学校に行っておらず働いているようなので、周たちより早くいることもあれば来れない日もあるようだ。
そして、メンバーがそろう6時ごろ、練習が始まる。
練習の内容は日によってまちまち、というより気分次第だ。
俊介のシュートスピードを見たり、組み合わせを変えて1on1をやったり、みんなで3Pシュートの練習をしたり。
時には延々とドリブルをしたり、延々と走りこんだり、基礎練習のようなものもやっている。
そうしてたっぷり1時間ほど練習をしたところで練習は終わる。
「よしっ、じゃあ練習終わり~!
ありがとうございました~!」
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
周の掛け声で3人が挨拶をして朝の練習は終わる。
どうでもいいようなことだがしっかり徹底しているところは本格的な練習をやっている学校やなんかと変わりない。
練習が終わると荷物をまとめながら軽くおしゃべり。
しかし遅れないように時間を見て切り上げ、麗奈と別れる。
別れた後は来た時と同じように2人で走って帰るのだ。
「それじゃまたね、しゅんくん」
「うん、またね、周ちゃん」
家の前で別れると周は自分の家へと帰る。
「ただいま~」
「おかえりなさい、そしておはようね」
「うん、おはよう」
帰るとすでに母親は起きて朝食の準備をしている。
周は母親に朝の挨拶をすると、ボールを取り出して再び網にしまう。
「じゃ、シャワー浴びてくるね」
そしてそういうと練習でかいた汗を流し、すっきりとしてから朝食をとり、学校へ向かうのだ。
その辺りの風景は以前にも書いたとおりである。
ちなみに軽く朝食をとったにもかかわらずまた食べているが、そこを気にしてはいけない。
周いわく、「運動しておなかが減ったから食べる」である。
着替えと朝食を済ませると周は学校用のかばんを取りに部屋に戻る。
そして今日の時間割を確認し、昨日のうちに用意をしておいてあるが一応必要なものが揃っているかかばんの中も確認する。
もっとも教科書の類は必要ない限り学校のロッカーに置きっ放しになっているので忘れることはまずない。
そうして荷物をまとめると母親の作ってくれたお弁当もかばんにしまい、学校へと出かける。
「いってきま~す」
「いってらっしゃい」
母親に見送られて家を出る。
そしてそこにはいつから待っていたのかすでに俊介の姿が。
「おまたせ~、じゃ行こっか」
「うん」
朝既に挨拶を済ませているのでそこは軽く済ませて学校へ向かう。
学校が近づくにつれて人が増えてきて、知った顔がところどころに見えてくる。
「おはよー、斉藤さん」
「おはようございます、斉藤さん」
「あ、野澤さん、凪さん、おはよ~♪」
周に声をかけてきた2人の少女がいた。
最初に声をかけてきたメガネをかけたロングヘアの少女が野澤裕子さん、後から挨拶したポニーテールの女の子が凪春華さんだ。
2人とも周の友達であり、またクラスメートでもある。
必然的に俊介のクラスメートでもある。
「林田君もおはよー。
今日も仲良しだね」
「ですね」
「えへへ~」
2人のからかいにあわてることなく笑顔の周。
俊介は顔を赤くして照れるくらいしか出来ない。
やはり高校生にもなって男女が一緒になって登校していれば色々とからかわれるものだろう。
もっとも当の周は気にしているのかいないのか、というより仲良しの意味合いが幼馴染み以上を指していることに気づいているのか。
「よ、林田、おはよう」
「おはよう、林田君」
「あ、蓮井くんに宇喜多くん、おはよう」
今度は俊介に話しかけてくる2人の男、染めたと思われる茶髪の蓮井くんと一見ナルシストに見える不思議な前髪の宇喜多くん。
2人も俊介の友達でクラスメートだ。
「時に林田君、今日の宿題の事なんだが」
「ああ、うん、数学でしょ?」
「頼む!見せてくれ!この通り!」
突然頭を下げる宇喜多くん。
人間とは宿題を見せてもらうためなら人前で頭を下げるものだろうか。
「わ、分かったよ。
教室に着いたら見せてあげるから」
「本当か!さすが!持つべきものは親友だなぁ!」
ちょっと変わっている、それが宇喜多くんだ。
ちなみに宿題が目的で友達になったという噂もある。
と、そんな様子を見ていて笑っていた周だが。
「あ!数学宿題あったっけ!?
しゅんくん見せて!むしろ今のうちにノート貸して!」
「へ?まぁ、いいけど」
「ん~と・・・あった、これが数学のノートね」
「ちょ、周ちゃん!何勝手にかばん探ってるの!?」
「ちょっと待った斉藤さん!
ノートを持っていかれたら僕が見れないじゃないか!
おい林田君、斉藤さんを止めるんだ!」
「ダメよー、宇喜多くん邪魔しちゃ。
2人に悪いでしょ?」
「ヘイ、野澤さん!
君も斉藤さんを止めたまえ!
宿題を人に頼るようではダメだと」
「それをあなたが言いますか~?」
「凪さんも止めてくれたまえ!」
「じゃ、しゅんくん!
ゴメン、先行ってる!」
「あ、ちょっと待ちたまえ!」
「あはは、おもしろそー!
春華、私達も行こう?」
「そうですね。
それでは林田君、お先に失礼します」
ピューと音を立てて走り去っていく周と宇喜多くん。
それを面白がりながら一緒についていく野澤さんと凪さん。
残った俊介と蓮井くんは苦笑いをしながら見送る。
「・・・・・・まぁ、明るくていい彼女じゃないか」
「だ、だからまだそんなんじゃなくて・・・」
「さっさと告白しちまえよ。
ま、ずっとそんななのを見てるのも楽しいけどな」
俊介の方をぽんと叩く蓮井くん。
ちなみに彼は中学の頃から俊介と友達だ。
なにやらにぎやかと言うよりは騒がしい学校前の風景。
これはこれでいつのも日常だ。
キャラの容姿が分かんないとか、学校の描写が少ない。
そんな要望を詰め込んで作ったお話です。




