第十七話
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「え~と・・・・・・は、初めまして。
瀬戸内麗奈・・・です。
み、皆、よろしく~・・・・・・」
子供たちの少しばかり引き気味の視線に見守られながら、麗奈は子供たちに挨拶をした。
無理に明るく振舞おうという感じが微妙に哀しみを誘う。
ただでさえ不良っぽい外見、むしろ最近まで不良だったと言っても過言ではないだろう、そんな麗奈を見れば子供たちが距離をとろうとするのも無理は無い。
本当に一度だけ面識がある程度ではなおさらだ。
子供嫌いではないとはいえほとんど子供と接したことの無い麗奈にしてみても自分から打ち解けに行くというのは難しい。
突然子供たちの前に出されて、「は~い、しゅんくんに続いて今日から新しい仲間が増えました~。ささ、麗奈ちゃん、自己紹介をどうぞ~」
などと自己紹介を促されたところで気さくな雰囲気をかもし出すことなんて出来やしないのだ。
誰がどう見てもギクシャクした雰囲気、にもかかわらず。
「は~い、よく出来ました~。
じゃ皆も麗奈ちゃんと仲良くしてね~」
と、周は元気よく告げた。
この人空気読めていません、などと今更言わないでもらいたい。
もっともここにいるメンバーは皆、周の性格をよく知っているため、今更そんなことを口にしたりはしない。
ただため息をつくだけである。
3人でチームを組んで大会に出ようかと決めたのがこの日の午前。
午後はこんな感じで始まった。
「さて~、ところでね、皆」
周はため息をつく皆の心境など知って可知らずか、子供たちに話しかけた。
「しゅんくんと、麗奈ちゃんにはもう話したんだけど、6月にバスケの大会あるの知ってる?」
「あ、知ってる~。
朝家の新聞受けに入ってたよ~」
「あ、家にも来てましたよ」
周の言葉に子供たちから声が上がる。
「そ。
実はね~、私たち3人でチーム組んで出ようかと思ってるの~」
周はにこにこしながらそう言った。
当然、「え~、そうなんだ~、すご~い」と言った子供たちの反応を期待していたのだが、意外や意外。
「奇遇ですね」
「俺たちも出ようかって話になってたんだ」
「え!?そうなの!?」
逆に驚いたのは周だった。
まぁ、特に参加資格も無いのでバスケ好きな子供たちが出場を考えるのもおかしなことではない。
「しゅんくん!
この大会ってもしかして子供向け!?
集まれ子供たち!皆で楽しくバスケをしよう的な雰囲気!?」
「い、いや、そんなこと無いと思うよ。
参加資格なしってことは子供たちも含めて楽しい試合をしつつ、腕に覚えのある人も集まって時々本格的な試合が見れる、って感じにしたいんじゃない?
地域の親交を深めるのが目的だろうし」
ありえそうな予測を伝えて周の激しい動揺を抑える俊介。
「そそそ、そうだよね、うん。
よかった・・・・・・」
せっかく見つけた大会に出られないとなればショックも大きい。
そうならなくてよかったと、周は安堵のため息をついた。
「でもさ、皆は5人いるじゃない。
参加は3人まででしょ?どうするの?」
ため息ついでに周はふと思い立った疑問を子供たちにぶつけてみる。
確かに子供たちは5人、参加は3人まで。
どういうチームで出場するつもりなのだろうか。
「う~ん、それなんですけどね」
修也がずり下がってきたメガネを直しながら他の子供たちの方を見る。
それに愛奈が言葉を続けた。
「周お姉ちゃんを入れて6人、それを2つのチームに分けようかと思ってたの」
「あら、そうだったの」
確かに子供たちだけで出るよりは周も入った方が勝率が高いだろう。
しかし彼らの頭に俊介の勘定は入っていなかったのだろうか。
「う~ん、でもごめんね。
私はしゅんくんと麗奈ちゃんと一緒に出るって決めちゃったから」
周はそう言っててへへと笑う。
「どうしても
その人たちと出るの?」
「・・・私たちとしては、その・・・お姉ちゃんがいてくれると心強いんだけど・・・」
大紀と真美が困った表情で周を見る。
子供にそういう表情をされると辛い。
しかし周は子供達の視線に合わせて軽く膝を曲げるとすまなそうな表情でやんわりと断った。
「うん、ごめんね。
その代わりチームが出来たら私たちと練習しよう?」
子供たちはその言葉に顔を見合わせていたが、やがてこくっとうなずいた。
「しょうがねぇ、俺たちだけでチーム作ろうぜ」
リーダー格の恋二の言葉に、子供たちはあれこれ相談を始める。
「あ、じゃあさ」
ここで少しばかりおそるおそるしている感があるが、麗奈が口を開いた。
「いろんなメンバーでチーム作って、あたしたちと戦って・・・みるってのは・・・・・・どう?」
後半は特におそるおそるしている。
だ、ダメかな?と弱気な態度。
しかし子供たちがその言葉に顔を見合わせていると周が賛成意見を出した。
「うん、それいいかもね。
私たちの練習にもなるし。
それで一番強かったメンバーのチームで出場するのがいいんじゃない?」
そういってこっそりと麗奈にウインクをする。
子供たちと一番仲のいい周の後押しがあれば心強い。
「そうだな、そうするか」
とまず恋二がそういう。
すると他の子供たちもそれに従い始めた。
「うん、そうですね」
「・・・私も、それがいいと思う・・・」
「僕も
そう思う」
「じゃ、それでやってみようか~。
まずどんな組み合わせがあるのか調べてみようか~」
子供たちの反応に笑顔を浮かべる麗奈。
とりあえず麗奈は一歩、子供たちに歩み寄れたようだ。
「え~と、5人の中から3人選ぶんでしょ?
そうなると・・・・・・」
「恋二君、大紀君、僕、が1つめ。
恋二君、大紀君、愛奈ちゃん、が2つめ。
恋二君、大紀君、真美ちゃんが3つめで・・・・・・」
「・・・き、キリがないよ・・・」
子供たちは子供たちなりに必死に計算しようとしているらしい。
が、やがて助けを求め始めた。
「周さ~ん、なにかいい計算方法って無いですか?」
修也の言葉に周はえ?と一瞬固まる。
そして麗奈の方を向く。
麗奈はえ?と周同様に凍りついた後、あたしに分かるわけないでしょ、とばかりにそっぽを向く。
「え、え~とね・・・・・・」
あれこれ考えて頭がショートしてるのが傍目にも分かる。
いやいや、何年生で習う問題だよと勉強が苦手な人に突っ込んではいけない。
俊介はやれやれと頭をかきながら助け舟を出してやった。
「5人の中から1人を選ぶのが5通り、
残りの4人の中から1人を選ぶのが4通り、
3人の中から1人を選ぶのが3通り。
だから5×4×3で60通りになるよ」
「・・・・・・そそそそうなるのよ」
おそらく分かっていないだろうが周はそんな感じで答えた。
「60通りですか」
「・・・それじゃ日が暮れちゃうよ・・・」
「どうしようか~?」
「恋二君は
きっと一番強いから
決まりでいいんじゃないかな」
「え・・・そ、そうか?」
「う~ん、そうだね、それでいいんじゃない?
恋二君強いし」
「そ、そうか?そう思うか?」
子供たちはあれこれまた考え始めた。
そして再び。
「じゃあ、恋二君は決まりとして残りの4人から3人・・・じゃない、2人か。
2人を決める計算はどうなるんですか?」
再び周に計算問題が出された。
周は今度はすぐに俊介に助けを求める。
俊介は再びやれやれと頭をかきながら答えるのだった。
練習が始まるのはいつになるのやら。




