表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第14章 神々の実装ミス会議

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
97/340

勇者と魔王の共同署名

会議の整理回です。

勇者と魔王が共同署名します。

ログルの話で少しだけ真面目になります。

 会議場の中央に、黒と白の書類が並んだ。

 白は神様側の議事録。

 黒は魔王軍の正式抗議書。


 そして、その間に置かれた一枚の紙は、どちらの色でもなかった。白いけれど、端に黒い線が入っている。神様側にも、魔王軍側にも、そしてわたしにも読める共通書式だ。


【共同被害申立書】


 ベルさんが羽ペンを持ち、静かに読み上げる。


「項目一。チュートリアル外即死敵の配置」

「黒狼」

「はい。勇者様の初期死亡案件です」


「項目二。HP15固定に対する敵火力の不均衡」

「幼女に優しくない」

「はい」


「項目三。一手一動ワンターン・ワンアクション外からの神域干渉」

「避けた気はした死」

「分類名はひどいですが、内容は重要です」


「項目四。帰還条件未説明」

「一番怒ってるやつ」

「はい」


「項目五。死亡ログの無断利用」

「勝手に使われたやつ」

「はい」


「項目六。魔王軍の強制ラスボス労働」

「魔王さんの勤務表」

「重要だ」


 ゼルドさんが即答した。


 わたしはちょっと笑いそうになったけれど、最後の項目で止まった。


「項目七。ログル型解析端末の初期化権限濫用疑惑」


 ログルの宝石が、かすかに光を弱めた。


 アドミニスは、いつもの軽い顔で椅子にもたれている。


「そこは誤解があるかな。ログルは元々、僕たちの端末だからね。同期し直せば、だいたい元に戻るよ」

「戻さない」


 自分でも驚くくらい、低い声が出た。


 会議場の床が、少しだけ静かになる。議題タイルも、乱数床も、承認印も、全部こちらを見ているみたいだった。


 わたしはログルを抱き寄せた。


「ログルは、わたしの相棒だから」


 ログルは何も言わなかった。


 ただ、額の宝石が一度だけ、ゆっくり光った。


 アドミニスが笑おうとした。でも、笑顔は途中で止まる。


「勇者ちゃん。端末は、端末だよ」

「違う」

「記録を取るために作られた」

「今は、一緒に帰るためにいる」

「帰る時、ログルをどうするの?」

「......まだ分からない」


 そこだけは、嘘をつけなかった。


 わたしが元の世界へ帰る時、ログルはどうなるのか。拠点はどうなるのか。ゼルドさんやベルさんや、ネムさんやリュシアさんは。シードで消えていく人たちは。


 分からないことだらけだ。


 でも、分からないからって、神様に決められたくない。


「分からない。でも、初期化はしない」

「勇者様......」

「ログルはログルのまま。一緒に考える」


 ゼルドさんが、静かにうなずいた。


「相棒を初期化するなど、魔王軍でもしない」

「魔王さん......」

「部下の引き継ぎ資料ですら慎重に扱う」

「急に事務!」

「事務は命を守る」


 ベルさんが、共同被害申立書の項目七に赤い線を引いた。


「本件、最重要項目として扱います」


 リュシアが温かいスープをそっと置く。ネムさんも、眠そうなまま帳面を閉じた。


「死亡受付としても、ログルさんの記録は急に消されると困ります」

「ネムさん」

「処理が面倒なので」

「理由は事務だけど、ありがとう!」


 ミネルが会議資料をめくる。


「帰還門エラーの表示を再掲します」


 床に文字が浮かぶ。


【帰還門エラー】

【名前:欠片反応】

【時間:欠片反応】

【縁:反応済】

【扉:反応済】

【記憶:不足】

【座標:未登録】


 今度は、座標の文字が強く光った。


 ミネルの声は、いつもより短かった。


「帰還するには、帰りたい場所を指す座標が必要です」

「わたしの家の場所......」

「はい。どの世界の、どの時間の、どの場所へ帰るのか。それを示す情報がなければ、帰還門は開けません」


 わたしは、拠点の壁を思い出した。


【帰る】


 下手な字で書いた、最初の約束。


「ログル」

「はい」

「わたし、家の住所、ちゃんと思い出せるかな」

「思い出します」

「言い切るの?」

「はい。ぼくも記録します。勇者様が忘れそうになったら、一緒に探します」


 わたしは、少しだけ笑った。


「じゃあ、署名する」


 羽ペンを握る。


 字は少し震えたけど、ちゃんと書いた。


【勇者コヨリ】


 その隣に、ゼルドさんが堂々と書く。


【魔王ゼルド】


 勇者と魔王の共同署名。


 神様会議場の空気が、また一つ変わった。


【今回の勇者ステータス】


現在地:特殊ダンジョン【神様会議場】共同申立区域

累計死亡回数:110回

神様会議場内死亡回数:6回

クラス:【死因学者】

クラス兆候:【時読み】

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】


【死因ログ参照 Lv.2】

【死亡ログ改ざん Lv.1】

【神様報告遅延 Lv.1】

【総合盤面確認 Lv.1】

【一フレームの神様 Lv.1】

【映えより生存 Lv.1】

【低確率を信じるな Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


死亡なし

会議記録追加:【共同被害申立書】

重要情報更新:【帰還先座標:未登録】

ログル関連:【初期化拒否】明確化


【登場人物紹介】


コヨリ:

ログルを相棒だと言い切った幼女勇者。帰る方法は探す。でも、相棒を勝手に初期化させない。


ログル:

元神様側端末。今はコヨリの相棒。宝石が少し揺れた。


ゼルド:

勇者と共同署名した魔王。事務で命を守る男。


アドミニス:

ログルを端末として見ている主神。軽い笑顔が少しだけ止まった。


少しでも心に残りましたら、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると嬉しいです。とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。感想・評価・レビューお願いします!励みになります
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
ギルド酒場るすと公式サイト

異世界ゲームバー転生おじさん(42)
影森ゆらは今日も死ぬ
千回死亡幼女勇者 異世界Any%
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ