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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第14章 神々の実装ミス会議

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映え死ぬな

美神ヴェルティアの議題です。

死亡演出が美しくなります。

見えなくなって死にます。


 美神ヴェルティアは、ものすごくきれいな女神だった。


 長い髪は光をまとい、衣装は雲と花びらを編んだみたいに揺れている。笑うだけで、会議場の照明が三割くらい増えた気がした。


 でも、わたしは油断しない。

 きれいなものほど、(どく)がある。

 宝箱も、光るボタンも、神様の笑顔も、だいたい危ない。


「勇者ちゃん。あなたの死亡シーン、もっと美しくできると思うの」

「死なせない方向で考えて!」

「もちろん、生存も大切ですわ。でも、万が一の時の演出も」

「万が一じゃなくて百九回死んでるんだよ!」


 ヴェルティアは、うっとりと手を広げた。


 会議場の空気が薔薇色に染まる。


【死亡演出サンプル:神速矢に倒れる勇者】

【演出要素:薔薇、羽、逆光、涙、神聖音楽】


「いらない!」

「見てから判断してくださいな」

「見たくない!」


 床に、細い光の矢が浮かんだ。


 訓練用だ。たぶん当たっても即死しない。たぶん。神様のたぶんは信用できない。


 ログルが肩で警告する。


「勇者様。予兆は床の右端です」

「分かった。右端見る」

「薔薇が増えています」

「薔薇?」


 視界いっぱいに薔薇が咲いた。


 羽が舞う。光が差す。謎の神聖音楽が鳴る。わたしの髪が勝手にふわっとなびく。とても絵になる。


 そして、床の予兆が見えない。


「見えなあ」


【死亡ログ】

【死因:死亡演出で予兆が見えなかった】

【評価:映えました】

【累計死亡回数:110回】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


「映え死ぬなあああああああああああああああ!」


 受付に叫び声が響いた。


 ネムさんが耳をふさいだ。


「今回は綺麗でしたよ」

「綺麗に死ぬより雑に生きたい!」

「名言ですね」

「死因欄に書かないで!」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 再挑戦。


 ヴェルティアは少し不満そうだった。


「でも、勇者ちゃん。死亡演出が美しいと、記録映像として価値が」

「わたしは記録映像になるために死んでない!」

「薔薇は控えめにします」

「薔薇をゼロにして!」


 ログルが前へ出る。


「美神ヴェルティア様。視界妨害は敵対行為です」

「まあ、厳しい」

「勇者様の生存を阻害します」

「でも映えが」

「生存が優先です」


 ログルがはっきり言ったので、わたしは少し驚いた。


 前なら、もう少し遠回しに言っていた気がする。


 リュシアが円卓の端で笑う。褐色肌の美女神は、酒杯ではなく温かいスープの器を持っていた。


「ヴェルティア、ちび勇者ちゃんには、可愛い死亡演出より温かい飯と毛布のほうが映えるよ」

「生存演出......」

「そうそう。生きて帰って、ほっとする顔。そっちのほうがずっといいじゃない」


 ヴェルティアは、少しだけ考え込んだ。


「生存演出......新しいわね」

「新しくないよ! 本来そっちが普通だよ!」


 床に再び光の矢が出る。


 今度は薔薇が出ない。羽も出ない。謎音楽も鳴らない。


 見える。


 床の右端が、ほんの少し白く光る。


 わたしは半歩下がった。光の矢が、わたしの前を通り過ぎる。


 当たらない。


「避けた!」

「はい」

「薔薇がないと避けられる!」

「視界は大切です」


 ベルさんが議事録に書く。


【死亡演出は本人同意制】

【戦闘中の視界妨害は禁止】

【薔薇は任意】


「薔薇は任意!」

「完全禁止ではなく、任意が落としどころです」

「会議っぽい!」


 ヴェルティアは残念そうにしながらも、最後にはうなずいた。


「では、生存演出案も検討します。勇者ちゃんが無事に帰った時の光など」

「光は控えめで」

「控えめな光」

「あと床は見えるように」

「床が見える光」

「それで!」


 わたしは、胸を張った。


 今日、わたしは一つ大事なことを神様に分からせた。

 映えより生存。


 これ、たぶん全勇者に必要なやつだ。



【今回の勇者ステータス】


現在地:特殊ダンジョン【神様会議場】演出審査区域

累計死亡回数:110回

神様会議場内死亡回数:6回

クラス:【死因学者】

クラス兆候:【時読み】

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】


【危険察知 Lv.4】

【射線確認 Lv.3】

【罠感知 Lv.3】

【未識別警戒 Lv.4】

【一フレームの神様 Lv.1】

【低確率を信じるな Lv.1】

【会議中に叫ばない Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


新規獲得:【映えより生存 Lv.1】

死亡ログ追加:【死亡演出で予兆が見えなかった】

会議記録追加:【死亡演出は本人同意制】


【登場人物紹介】


ヴェルティア:

美神。死亡シーンまで美しくしたい困った神様。悪気は薄いが、視界妨害は普通に危険。


リュシア:

酒神。今回は温かいスープで援護。コヨリには完全に姉御枠。


ログル:

視界妨害を敵対行為と判定した相棒。だんだん神様相手にも強く言うようになっている。


コヨリ:

映えより生存派。とても正しい。


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