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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第14章 神々の実装ミス会議

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低確率は引くもの

乱数担当、運命神フォルテ登場。

低確率だから大丈夫。

コヨリは引きます。


 運命神フォルテは、眠そうな女神だった。


 耳飾りのサイコロが、揺れるたびにころころ音を立てる。本人は円卓に頬杖をつき、半分寝たような顔でこちらを見ていた。


「乱数だから」

「まだ何も言ってない!」

「だいたいそういう話でしょ」

「そうだけど!」


 フォルテの前に、透明な床が広がった。


 床には、サイコロの目みたいな模様がある。


【安全】

【小ダメージ】

【仕様変更】

【未識別化】

【即死】

【神様が笑う】


 わたしは即死のマスを指さした。


「これ消して」

「一パーセント未満だから大丈夫」

「わたし、その一パーセントで死ぬ側なんだけど!」

「運が悪いと、そうなる」

「乱数で済ませるなあああああああああああ!」


 床が点滅した。


 ログルが肩で小さく震える。


「勇者様、大声」

「うっ」


 わたしは口を押さえた。危ない。叫ぶだけで死に近づく会議場、ほんとに嫌だ。


 フォルテは眠そうにサイコロを投げる。


「検証。勇者ちゃんが安全マスを踏めば問題なし」

「安全って書いてあるマスは安全?」

「たぶん」

「たぶんで踏めるか!」

「低確率だし」


 低確率。


 その言葉には、何度も殺されている。宝箱がミミックな低確率。未識別草が爆裂草な低確率。遠投の腕輪を外し忘れる低確率。階段前の宝箱が呼吸している低確率。


 低確率は、引く。


 わたしは知っている。


 でも、安全マスが目の前にあると、踏める気がしてしまう。


「ログル」

「おすすめしません」

「だよね」

「はい」

「でも安全って書いてある」

「神様側の表示です」

「信用できない! でも踏みたい!」

「踏みたい時点で罠です」


 分かっている。


 分かっているのに、足が一歩出た。


【安全】


 足が乗った瞬間、文字が裏返る。


【即死】


「低確率うううううううううう!」


【死亡ログ】

【死因:低確率をちゃんと引いた】

【評価:乱数に愛されています】

【累計死亡回数:109回】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 戻ってきたわたしは、床に寝転んだ。


「低確率って言葉、禁止にしよう」

「禁止しても発生します」

「じゃあ神様を禁止」

「難しいです」


 ベルさんが、乱数床の横に黒い資料を並べた。


「勇者様。魔王軍でも、低確率だから問題なしとされた事故が多数あります」

「魔王軍も?」

「はい。低確率魔王城崩落、低確率勇者初期村隣接、低確率会議室ドラゴン発生」

「全部ひどい」

「低確率は、現場では必ず誰かが引きます」


 ゼルドさんが重々しくうなずいた。


「低確率を設計理由にしてはならん」

「魔王さん、まともすぎる」

「魔王とは、部下の低確率事故報告を読む者でもある」

「魔王業、思ったより管理職!」


 再挑戦。


 今度は、乱数床を踏まない。


 ログルの宝石が、床の目ではなく、床が切り替わる前の光を照らす。安全マスと即死マスは、完全に同じではない。即死へ変わる床は、発生前にほんの少しだけ白が濁る。


 一フレームの神様。


 速く動く力じゃない。


 神様の雑な処理が始まる前の、嫌な気配を見る力。


「右奥、濁ってる」

「はい」

「左手前は?」

「安全のままですが、隣が未識別化です」

「未識別化、嫌すぎる」

「踏むと手持ちの議事録が全部【謎の紙】になります」

「会議でそれは致命傷!」


 わたしは床を踏まず、小石を投げる。


 小石が即死マスに乗った瞬間、床がぱきんと割れた。小石は消えた。


「小石、ありがとう」

「小石袋改、残り十七個です」

「命より安い」

「その考えは正しいです」


 フォルテが頬杖のまま目を細めた。


「乱数を避けるの、ずるくない?」

「乱数で殺すほうがずるい!」

「低確率なのに」

「低確率は引くの! わたしは引くの! もう自分の運を信用しない!」


 ベルさんが議事録に書き込む。


【低確率即死配置は、安全設計とは認めない】


 会議場の文字が、少しだけ揺れた。


 アドミニスの笑顔が、ほんの一瞬だけ薄くなる。


 わたしはそれを見逃さなかった。


 神様たちの「仕様」は、絶対じゃない。


 ちゃんと指摘すれば、揺れる。



【今回の勇者ステータス】


現在地:特殊ダンジョン【神様会議場】乱数床区域

累計死亡回数:109回

神様会議場内死亡回数:5回

クラス:【死因学者】

クラス兆候:【時読み】

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】


【死因ログ参照 Lv.2】

【総合盤面確認 Lv.1】

【危険察知 Lv.4】

【罠感知 Lv.3】

【未識別警戒 Lv.4】

【一フレームの神様 Lv.1】

【会議中に叫ばない Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


新規獲得:【低確率を信じるな Lv.1】

死亡ログ追加:【低確率をちゃんと引いた】

会議記録追加:【低確率即死配置は安全設計ではない】


【登場人物紹介】


フォルテ:

運命神。低確率だから大丈夫で済ませる乱数担当。コヨリとの相性は最悪。


コヨリ:

低確率をちゃんと引く幼女勇者。運が悪いというより、物語に愛されている。


ベル:

低確率事故を現場目線で証拠化する秘書。とても強い。


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