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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第14章 神々の実装ミス会議

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会議室モンスターハウス

神様会議は実戦テストへ。

会議室に敵が湧きます。

会議とは。

 戦神バルガは、会議に向いていなかった。


 筋肉質な大男神が、円卓を片手で叩く。円卓は浮いているので、叩かれた衝撃で少し上下した。やめてほしい。机が上下する会議、集中できない。


「勇者娘は成長している! ならば、実戦テストだ!」

「会議して!」

「会議とは、実戦である!」

「違うよ! たぶん違うよ!」


 バルガが拳を掲げる。


 床の議題タイルが赤く光った。


【戦神提案:ドラゴン三体】

【戦神提案:倍速ヤマネコ改】

【戦神提案:遠投泣かせ】

【戦神提案:場所替え待ち】

【戦神提案:壺割り小僧】

【戦神提案:階段前の誘惑】


 タイルから敵が湧いた。


 会議場なのに。


 敵が湧いた。


「会議室にモンスターハウス置くなあああああああああああ!」


 叫んだ瞬間、世界が動いた。


 あ。


 発言は行動判定。


 思い出した時には、倍速ヤマネコ改が二歩来ていた。ふわふわの見た目なのに、速度がまったくかわいくない。


「にゃ」


「ぎゃ」


【死亡ログ】

【死因:会議室で叫んで倍速敵に詰められた】

【評価:発言は行動です】

【累計死亡回数:108回】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 戻ったわたしは、両手で自分の口を押さえた。


「んんんんんん!」

「勇者様、落ち着いてください」

「んんん!」

「はい。叫びたい気持ちは分かります」


 ベルさんが、すでに会議場の入口に大きな貼り紙を出していた。


【会議中に叫ばない】

【叫ぶと敵が動く】

【倍速敵は二回来る】


 わたしは貼り紙を見て、涙目でうなずく。


 再挑戦。


 床にはまた敵案タイルが並んでいる。敵はまだ湧いていないが、踏んだら出る。声を出しても出る。神様会議場、性格が悪い。


 ログルが小声で言う。


「勇者様、手持ち確認です」

「小石袋改、眠りの巻物、場所替えの杖、壁生成の杖。あと帰りたい気持ち」

「最後はアイテム欄にありません」

「心の装備!」


 ベルさんが【眠りの議事録】を一枚取り出した。


「この議事録を読むと、周囲の敵案を一時停止できます」

「議事録で眠るの、すごく納得感ある」

「ただし、未識別状態では【大部屋の議事録】の可能性もありました」

「読んだら会議場が広がるやつ!?」

「はい」

「やだ!」


 ログルが宝石を光らせる。


「鑑定済みです。眠りで合っています」

「ログルえらい! 抱っこしたい!」

「戦闘後にお願いします」


 バルガがにやりと笑う。


「来い、勇者娘! 根性で突破しろ!」

「根性じゃなくて手順で突破する!」


 わたしは口を閉じたまま、床へ小石を転がす。

 小石が【倍速ヤマネコ改】のタイルに触れた瞬間、敵が湧く。けれど、その前にベルさんが眠りの議事録を開いた。


 紙の眠気が、白い煙みたいに広がる。

 倍速ヤマネコ改の足が止まった。ドラゴン三体案も、口を開けたまま寝かけている。

 壺割り小僧だけが、妙に元気にこちらへ走ってきた。


「なんであいつ寝ないの!?」

「議事録を読まないタイプの敵です」

「いる! そういう人いる!」


 わたしは場所替えの杖を握る。


 危ない。焦ると投げそうになる。


「杖は振るもの」

「はい」

「杖は振るもの」

「はい」

「杖は振るものおおおお......は、叫ばない!」


 声を飲み込み、杖を振る。


 壺割り小僧と、遠くの空席が入れ替わった。壺割り小僧は空席の上で首をかしげている。よし。


 次に壁生成の杖。


 ドラゴン三体案の前に、白い議事録の壁が立つ。


「壁が議事録!」

「会議場素材です」

「硬いの?」

「内容が重いので、かなり硬いです」

「説明書と同じ理屈!」


 ゼルドさんが魔王軍正式抗議印を取り出す。


 黒い印が床に押されると、【戦神提案:ドラゴン三体】のタイルに赤い差し戻し線が入った。


「余は反対票を投じる」

「魔王さんかっこいい!」

「会議は票で戦うものだ」

「今、敵も出てるけどね!」


 最後の敵案タイルが沈む。


【会議室モンスターハウス 処理完了】


 バルガが腕を組み、豪快に笑った。


「いい動きだ!」

「褒める前に謝って!」

「次はドラゴン五体」

「反省してえええええええええええ!」


 叫んだ。


 でも、今度は処理完了後だったので敵は動かなかった。

 わたしは床にへたり込み、息を吐く。


 会議、疲れる。

 普通の戦闘より疲れる。


【今回の勇者ステータス】


現在地:特殊ダンジョン【神様会議場】実戦テスト区域

累計死亡回数:108回

神様会議場内死亡回数:4回

クラス:【死因学者】

クラス兆候:【時読み】

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】


【総合盤面確認 Lv.1】

【危険察知 Lv.4】

【射線確認 Lv.3】

【罠感知 Lv.3】

【未識別警戒 Lv.4】

【一フレームの神様 Lv.1】

【仕様書目次確認 Lv.1】

【同意ボタン警戒 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


新規獲得:【会議中に叫ばない Lv.1】

更新候補:【モンスターハウス入口停止 Lv.2】

死亡ログ追加:【会議室で叫んで倍速敵に詰められた】


【登場人物紹介】


バルガ:

戦神。会議を実戦だと思っている。完全に会議に向いていない。


ゼルド:

反対票で戦う魔王。魔王軍正式抗議印が強い。


ベル:

眠りの議事録を使う秘書。会議資料を武器にするタイプ。


コヨリ:

叫ぶと敵が動くことを覚えた。なお覚えても叫びたい。


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