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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第14章 神々の実装ミス会議

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発言権が物理

神様会議場の中へ。

発言するには発言権が必要です。

発言権、刺さります。

 神様会議場は、広すぎた。


 円卓は空中に浮かんでいる。椅子も浮かんでいる。議題タイルも浮かんでいる。正直、地に足のついた会議をしてほしい。


 白い空間の中央には、大きな円形の床があり、その外側を金色の文字がぐるぐる回っていた。


【議題一:勇者初期値】

【議題二:死亡ログ利用】

【議題三:魔王軍巻き込み】

【議題四:一手一動の例外】

【議題五:帰還門未起動】


 奥の席で、主神アドミニスが手を振っている。


「やあ勇者ちゃん。すごいね、ついに会議に来ちゃった」

「来ちゃったじゃない! 呼んだのそっちでしょ!」

「いやあ、説明書を読んでたどり着くとは思わなくて」

「説明書が落ちてきたんだけど!」

「理解は重いからね」

「物理で重くするなあああああああ!」


 叫んだ瞬間、床のマス目が赤く光った。


 ログルが耳元で小さく言う。


「勇者様。会議場内では発言も行動判定です」

「しゃべったらターン進むの!?」

「はい」

「会議なのに!?」

「会議なのに、です」


 円卓の反対側で、知識神ミネルが眼鏡を直した。


「発言には発言権が必要です。発言権クリスタルを取得してください」

「普通に手を上げる方式にして!」

「挙手制は第百七項で廃止されました」

「なんで!」


 わたしの前に、透明なクリスタルが浮かび上がる。


【発言権】


 きらきらしている。きれいだ。とても取りやすそうな高さにある。つまり罠だ。


 でも、発言しないと文句が言えない。


「ログル、罠感知」

「反応あり。射線確認も反応しています」

「発言権なのに射線あるの?」

「あります」

「発言権が飛ぶな!」


 ベルさんが書類鞄を開けた。


「勇者様、私が取得しましょうか」

「だいじょうぶ。わたし、今回は学習してるから」


 わたしは一歩横へずれ、クリスタルの横から手を伸ばした。


 その瞬間、発言権クリスタルが槍みたいに伸びた。


「ぎゃあ」


【死亡ログ】

【死因:発言権が刺さった】

【評価:会議は戦場】

【累計死亡回数:106回】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


「発言権が刺さるってなに!?」

「発言権を得るには覚悟が必要、という設計だそうです」


 戻ってきたわたしに、ログルが真顔で言った。真顔というか、カーバンクルなので顔はかわいい。でも声が真顔だった。


「覚悟を物理にするな!」

「神様会議場ですので」

「その言い訳、万能すぎる!」


 再挑戦。


 今度は、わたしは発言権を取らない。


 小石袋改から小石を一つ出し、クリスタルの根元へ転がした。


「勇者様、投げる前に確認を」

「遠投の腕輪なし。射線よし。ベルさん巻き込みなし。魔王さんの角にも当てない」

「最後は大事です」

「魔王さんの角に小石当てたら国際問題っぽいからね!」


 小石を投げる。


 クリスタルが槍状に伸びる前、ほんの一瞬だけ、根元の光が細くなった。道場で覚えた、一フレーム前の兆し。


 わたしはそこへ小石を当てる。


 発言権クリスタルは、からんと音を立てて床に落ちた。


「取れた!」

「お見事です」

「発言権を小石で落とす勇者、どうなの!?」

「正攻法より安全です」


 ベルさんが落ちたクリスタルを拾い、胸元に掲げた。


「魔王軍秘書ベル、証拠資料提出者として発言いたします」


 会議場の空気が変わった。


 ベルさんの後ろで、黒い資料棚の幻影が開く。そこから、何十枚もの紙が飛び出した。


【魔王軍被害一覧】

【神速攻撃による訓練休暇申請】

【魔王城再生成による備品損害】

【勇者Lv1突撃による現場混乱】

【死亡ログ無断利用疑惑】

【ログル端末同期異常記録】


 ゼルドさんが腕を組んで言う。


「神々よ。余は魔王である。ラスボス役を担うこと自体に異議はない。だが、毎回世界ごと職場を再生成され、部下の記憶も勤務表も崩れるのは別問題だ」

「魔王さん、勤務表って言った」

「重要だ」


 アドミニスは、にこにこと笑っている。


「いやあ、仕様って言えばだいたい済むと思ってたんだけど」

「済まないよ!?」

「でも勇者ちゃん、死んでも次があるし」

「その次に行くのが痛いし怖いしレベル戻るし持ち物落とすんだよ!」

「そこはローグライクっぽく」

「ジャンルで人の死を片付けるなあああああああああ!」


 会議場の床が赤く点滅した。


【警告:発言音量過多】

【次回大声時、行動二回分として処理】


 わたしは口を両手で押さえた。


「んんんんん!」

「勇者様、我慢できてえらいです」

「んんんんんんんん!」


 神様会議場、危険すぎる。

 宝箱より危険だ。


【今回の勇者ステータス】


現在地:特殊ダンジョン【神様会議場】第一議場

累計死亡回数:106回

神様会議場内死亡回数:2回

クラス:【死因学者】

クラス兆候:【時読み】

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】


【死因ログ参照 Lv.2】

【総合盤面確認 Lv.1】

【危険察知 Lv.4】

【射線確認 Lv.3】

【罠感知 Lv.3】

【未識別警戒 Lv.4】

【一フレームの神様 Lv.1】

【同意ボタン警戒 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


新規獲得:【会議前確認 Lv.1】

死亡ログ追加:【発言権が刺さった】


【登場人物紹介】


アドミニス:

主神。仕様で済ませようとするクソ運営。今回は笑顔のまま追い詰められ始める。


ミネル:

知識神。発言権クリスタル方式を説明してくれるが、まず方式が危険。


ベル:

発言権を正式取得した有能秘書。小石で落とした発言権でも、書類の力で正規手続きにする。


ゼルド:

勤務表を大事にする魔王。まとも。


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