表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第2章 解析神獣ログルと死因図鑑

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/19

死因図鑑室、開館しました

死因図鑑室、開館。

自分の死に方が展示されています。

ぜんぜんうれしくないです。

 扉の前で、腕を組んだ。


【死因図鑑室】


 入りたくない。ものすごく入りたくない。だって名前がもう嫌だ。お化け屋敷より嫌だ。お化け屋敷はお化けが出るだけだけど、ここはわたしの死に方が出るんだもん。


「ログル。本当に入らなきゃだめ?」

「はい。勇者様の生存率向上に必要です」

「でも、わたしの心の生存率が下がるよ?」

「そこは、がんばってください」

「急に根性論!」


 扉を開けると、中は図書館みたいだった。白い棚、木の机、壁いっぱいのカード。空気は静かで、ちょっと神聖......ではなく、学校の先生に反省文を読まれる前みたいな空気だった。


 壁の一番上に、カードが四枚並んでいる。


【黒狼による初見殺し】

【角ウサギ接触後、転落】

【宝箱を二度見したら噛まれた】

【罠で飛ばされて崖下へ】


「わたしの黒歴史博物館じゃん!」

「死因は恥ではありません。次に死なないための地図です」

「でも展示の仕方が公開処刑!」


 カードに触れると、絵が浮かんだ。黒狼の飛びかかり方。角ウサギの突進距離。ミミックのふたの角度。バネ床の見分け方。嫌だけど、わかりやすい。


 カードの下に小さな評価欄がある。


【黒狼:正面から見ない】

【角ウサギ:横移動を覚える】

【ミミック:かわいい箱ほど疑う】

【バネ床:草地のくせに硬い場所は踏まない】


「評価がわかりやすいけど、言われると腹立つ!」

「再発防止メモです」

「学校の先生みたい! しかも正しいからもっと腹立つ!」


 ミミックのカードだけ、なぜか口をぱくぱく動かしていた。


「カードになっても噛もうとするな!」

「再現度が高いですね」

「高くしなくていい!」


「うわ......これ、ちゃんと役に立つ」

「はい。勇者様の痛みを、次の攻略情報に変換しています」

「言い方は重いけど、やってることは攻略本だ」


 部屋の中央に、大きな作戦ボードが現れた。


【現在の基本状態】

【開始時:Lv1/HP15】

【死亡時:シード内レベル・未登録品ロスト】

【保存:死因ログ/スキル/拠点施設/識別情報】

【基本スキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


「保存されるもの、思ったより少ない!」

「ですが、重要なものは残ります」

「命と装備も重要なんだけど!?」


【シード004傾向】

【偽装宝箱:多】

【小型罠:多】

【足元事故:多】

【推奨:罠確認/遠距離確認/未識別品の鑑定】

【勇者様の弱点:好奇心】


「最後! わたしの弱点を勝手に書くな! でも否定しきれないのが悔しい!」

「足元事故多すぎ! わたしの足、そんなに狙われてるの!?」

「かなり狙われています」

「やめてよ! 足は二本しかないんだよ!」


 ボードの隅に、薄く光る別の項目があった。


【初期村ミルカ/少年カイ/木剣提供】

【シード004/少年カイ/宝箱情報】


 カイの名前。前は木剣をくれた。今回は宝箱情報をくれた。顔は同じなのに、わたしのことは覚えていない。


「ログル。同じ子なのに、同じじゃないんだね」

「同じ魂の原型が、シードにより別の役割を持つ可能性があります」

「難しい言葉でごまかした」

「今は、同じ人に見えても毎回同じとは限らない、で十分です」


 胸の奥が、ちょっとだけしんとした。死ぬと世界が変わる。わたしだけが、前のことを覚えている。だから、忘れない場所が必要なのかもしれない。


 ログルが、わたしの足元に座った。


「この部屋は、勇者様が失ったものを、ただの失敗で終わらせないための部屋です」

「......それ、先に言ってよ。ちょっとかっこいいじゃん」

「では、記録名を変更しますか?」

「え、できるの?」

「はい」

「じゃあ【わたしを次に死なせない部屋】」

「長いです」

「じゃあ【死因図鑑室】でいいです!」


 悔しい。名前が強い。


 その時、天井に神様コメントが表示された。


【死因図鑑室、開館おめでとう!】

【どんどん埋めていこう!】


「埋める前提で言うなあああああああああああああ!」


 作戦ボードに木剣を向けた。


「いい? この部屋は、死ぬためじゃない。死なないために使うの!」

「その通りです」

「まずは宝箱! 次に見つけたら、近づかない! つつかない! 開けない!」

「最後が一番重要です」

「でも中身はちょっと気になる!」

「そこが一番危険です」


 ログルが、ほんの少しだけ目を細めた。


「ぼくとしては、空欄のままの死因が増える方がよいです」

「ログル......」

「ただし、勇者様の欲による事故は予測困難です」

「感動返して!」


 最後に、作戦ボードの端に自分で大きく書いた。


【宝箱はまず疑う】

【床はまず疑う】

【神様はだいたい疑う】


「三つ目、かなり大事」

「はい。生存率が上がります」

「ログルが否定しないの、神様に怒られない?」

「まだ報告していません」

「えっ、ちょっと悪い子!」

「解析上、必要な沈黙です」

「言い方かっこいい!」


【暫定ビルド:小石逃げ撃ち/床疑い型】


「名前が弱そう!」

「生存率は上がります」

「じゃあ強いね!」


 こうして、拠点に死因図鑑室ができた。いやな名前だけど、これはたぶん、わたしが帰るための一冊目の地図だ。



【今回の勇者ステータス】

クラス:勇者

保有スキル:【恐怖耐性 Lv.1】【黒狼の爪筋回避 Lv.1】【死ぬ前に一言ツッコむ】【足元確認 Lv.1】【小型敵警戒 Lv.1】【転び慣れ Lv.1】【ミミック警戒 Lv.1】【罠の匂い Lv.1】

拠点施設:【椅子】【死因メモ】【死因図鑑室】

死亡回数:3


【登場人物紹介】

・死因図鑑室:黒歴史博物館ではありません。攻略本です。わたしの死を攻略情報に変換します。名前は最悪です。でも重要です。


死因図鑑室の開館を見届けてくださった方、ブックマーク・評価・コメント・レビューで応援いただけると、ログルが「必要な沈黙」の中でちょっと喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ