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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第2章 解析神獣ログルと死因図鑑

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未識別の薬草は、だいたい信用できない

薬草採取に再挑戦。

ただし薬草が薬草とは限りません。

神様、そういうところです。



 三回死んだ勇者は、少し賢くなる。少なくとも、宝箱に手を出す前に呼吸を確認するくらいには賢くなる。


「今日の目標! 死なない! 宝箱を開けない! 薬草を食べない!」

「最後は当然では?」

「当然ができない世界なんだよ!」


 ログルを肩に乗せ、またシード004の森へ入った。今回は違う。足元を見る。草むらを見る。木箱を見たら距離を取る。勇者というより、遠足の班長みたいな慎重さだ。


「勇者様、右の草むらに小型罠反応」

「はい右見た! 踏まない! えらい!」

「自分で褒めるのは早いです」

「小学生は褒めて伸びる!」


 森の奥に、薬草らしき草が三種類生えていた。丸い葉っぱ、細い葉っぱ、やたら元気な葉っぱ。全部、緑。全部、薬草っぽい。


「ログル、どれが薬草?」


 宝石が光る。


【未識別】

【未識別】

【未識別】


「全部わからないの!? 薬草クエストだよね!? 薬草くらい名札つけてよ!」

「神様の生成が雑です。薬草、毒草、爆発草が同じ見た目になることがあります」

「神様ァ! 草の色くらい分けて!」


 仕方ないので、仮の名前をつけることにした。


【未識別草A:たぶんいい子草】

【未識別草B:ぜったい悪い顔草】

【未識別草C:元気すぎて逆に怖い草】


【スキル解放:未識別仮名づけ】


「やった! 名前をつけたらスキルになった!」


 勢いに乗って、近くの石にも名前をつけた。


【石A:たぶん石】


 何も起きない。


「ログル、石はだめ?」

「ただの石です」

「じゃあ、こっちは?」


【石B:たぶん強い石】


「ただの石です」

「夢がない!」

「名前だけで世界が変わるなら、神様より勇者様の方が危険です」

「それはちょっとかっこいい!」


 調子に乗って、木剣にも名前をつけた。


【木剣A:すごい聖剣っぽいやつ】


 木剣は、ただの木剣のままだった。


「光らない!」

「木ですから」

「木でもがんばってよ!」

「勇者様も、木剣に無茶を言っています」

「神様よりはやさしい無茶だもん!」


 ログルは少しだけ考えてから、木剣の項目に小さな補足を出した。


【木剣A:現時点ではただの木剣】


「現時点では!」

「未来に期待する余地を残しました」

「ログル、そういう優しさできるんだ!」

「解析上、士気維持は重要です」

「士気、上がった!」

「効果は、未識別品を混同しにくくなるだけです」

「十分すごいよ! 宿題のプリントに名前書くくらい大事!」


 小石を拾い、草Bに投げた。ぽふん、と紫の煙が出る。


「毒っぽい!」

「近づかなくて正解です」


 次に草Cへ投げる。ぱん、と小さく爆発した。


「草が爆発した! 草って爆発していいの!?」

「この世界では、たまに」

「たまにじゃなくて、だめ!」


 最後に草Aへ小石を投げると、淡い緑の光がふわっと出た。


「薬草だ!」

「仮鑑定では、回復草の可能性が高いです」

「よし採る!」


 手を伸ばした瞬間、足元が少し沈んだ。


「右」


 ログルの声が短く飛ぶ。反射で横へ跳んだ。直後、さっきまで立っていた床が、ぼこっと抜ける。


「落とし穴あああああ! 薬草の前に穴を置くなあああああ!」

「勇者様、生存しています」

「生きてる! すごい! わたし、落ちなかった!」


 心臓がばくばくしている。でも死んでいない。死なずに、罠を見つけた。


「ログル、今の成功?」

「はい。成功ログとして記録できます」

「成功ログ! 死因じゃないログ! いい言葉!」


 薬草を採り、さらに近くの壊れた木箱を調べた。もちろん、呼吸は確認した。していない。よし。中には、青い板のようなものが入っていた。


「これは?」

「鑑定用の古い札です。拠点に持ち帰れば、未識別品の解析に使える可能性があります」

「持って帰る! 絶対持って帰る!」

「死亡した場合、未登録品は失われます」

「登録制、また来た!」

「ただし、生きて拠点へ戻れば、鑑定机に登録できます」

「じゃあ帰る! 今すぐ帰る! 命の方がレアアイテム!」


 森を抜け、白い拠点へ戻った。死亡ではなく、帰還。これ、すごく大事。


 椅子の横に、ことん、と小さな机が現れた。


【鑑定机】

【機能:未識別品の仮鑑定】

【制限:一度触れたもの/一度死因に関わったものほど精度上昇】


「死因に関わったものほど精度上昇って、また死ねってこと!?」

「生きて持ち帰れば、もっと良いです」

「それを最初に大きく書いて!」


 ログルは机に前足を乗せた。


「勇者様。今回は、死なずに拠点を強化しました」

「うん。やればできるじゃん、わたし!」

「宝箱に近づかなければ、さらに安定します」

「最後に刺すな!」


 でも、笑っていた。死ななくても進める。それがわかっただけで、白い部屋が少しだけ明るく見えた。


【今回の勇者ステータス】

クラス:勇者

保有スキル:【恐怖耐性 Lv.1】【黒狼の爪筋回避 Lv.1】【死ぬ前に一言ツッコむ】【足元確認 Lv.1】【小型敵警戒 Lv.1】【転び慣れ Lv.1】【ミミック警戒 Lv.1】【罠の匂い Lv.1】【未識別仮名づけ】【投げ識別 仮】

拠点施設追加:【鑑定机】

死亡回数:3


【登場人物紹介】

・未識別草A:たぶん薬草。たぶん。いまのところ、たぶん。


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