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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第2章 解析神獣ログルと死因図鑑

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戦神バルガ、難易度調整が下手すぎる

神様側の新担当が出ます。

戦闘調整担当です。

すでに嫌な予感しかしません。


 鑑定机ができたので、ちょっと調子に乗っていた。いや、ほんのちょっと。小皿にのるくらい。大皿じゃないよ。


 机の上には、薬草、毒草、爆発草の仮メモが並んでいる。それを見ながら、腕を組んでうなずいた。


「ふふん。これが知性。これが文明。これが宿題をちゃんとやった勇者」

「宿題をやっただけで世界を救えそうな顔をしています」

「宿題は大事なんだよ! やらないと夏休み最後の日に泣くんだよ!」

「薬草も見分けた。落とし穴も避けた。わたし、そろそろ普通の勇者っぽくない?」

「普通の勇者は、薬草採取で三回死にません」

「ログル、そういう正論は心に刺さるから小声で言って」


 その時、白い壁に赤い文字が出た。


【戦闘調整担当より】

【勇者娘の成長を確認】

【次シード内、小ダンジョン訓練を開放】


「いらない!」


 即答した。だって、訓練って書いてあるものほど痛い。体育の持久走と同じ。誰も幸せにならない。


 赤い光の中から、筋肉だらけの男神が映った。肩が広い。腕が太い。声がでかい。存在だけで暑い。


「俺は戦神バルガ! 敵配置と訓練場を担当している!」

「帰って!」

「いい返事だ、勇者娘!」

「返事じゃない! 拒否!」


 バルガは豪快に笑った。


「根性があれば勝てる!」

「小学生に根性で罠を踏ませるな!」

「死んでも鍛えればよい!」

「死ぬ前提をやめて! 保護者呼ぶよ!」


 ログルの宝石が冷たく光る。


「戦神バルガ様。現在の勇者様の生存率は低めです。難易度上昇は非推奨です」

「では、罠と魔物を両方置こう!」

「人の話を聞けえええええええ!」

「安心しろ。ドラゴン三体はまだ早いので置かん!」

「まだって言った! いつか置く気だ!」

「成長したらな!」

「成長ってそういうごほうびじゃない! 誕生日にドラゴン三体もらって喜ぶ子いない!」

「勇者なら喜ぶ!」

「この勇者は泣く!」


 壁に地図が表示された。ミルカ村の外れ、古い地下倉庫。そこに、拠点強化素材があるらしい。


【初心者向け訓練倉庫】

【推奨:足元確認/投げ識別/ミミック警戒】

【死亡率:そこそこ】


「そこそこってなに!? テストの点数じゃないんだよ!」

「神様基準のそこそこは、信用しない方がよいです」

「神様基準、全部こわい!」


 バルガはさらに胸を張った。


「初心者向けに、通路は一本道にしておいた!」

「それは親切かも」

「逃げ場も一本道だ!」

「不親切に戻った!」

「敵も迷わん!」

「敵に親切にしないで!」


「大丈夫だ安心しろ! 初心者向けに、敵の攻撃力は控えめにした!」

「ほんと?」

「ただしその分、数で補った!」

「ばかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!補うなああああああああああああああ!」


 ログルが静かに作戦ボードへ【撤退経路確認】と書き足した。


「ログル、今すごく頼もしい」

「勇者様が叫んでいる間に、逃げ道を探す役です」

「わたし、叫ぶ担当みたいになってる!」


 でも、倉庫には【古い識別札】がある。鑑定机を強化すれば、未識別品の危険をもっと減らせる。つまり、帰るための攻略に必要。


 椅子に座り、腕を組んだ。


「作戦会議!」

「はい」

「今回の目標、死なない。宝箱を信じない。草を食べない。床を信じない。神様を信じない」

「最後が最も正確です」


 死因図鑑室の作戦ボードに、今までの死因が並ぶ。黒狼。角ウサギ。ミミック。バネ床。落とし穴。全部、いやな思い出。でも全部、次に進むためのメモだ。


「ビルド名、考えた」

「作戦名をつける前に、安全確認を」

「もう! 言わせてよ! 名づけるとやる気出るの!」

「では、短くお願いします」

「木剣ちくちく小石ぽいぽい足元じろじろビルド!」

「長いです」

「じゃあ略して、ちくぽいじろ!」

「さらに不安になりました」

「なんで! かわいいじゃん!」

「作戦名にかわいさは不要です」

「じゃあ、死なないビルド!」

「採用します」


 ログルがうなずいた。戦神バルガの映像は、まだ壁で笑っている。


【出発前確認】

【コヨリ:Lv1/HP15/15】

【クラス:勇者】

【基本スキル:一手一動ワンターン・ワンアクション

【所持品:小石袋/思いやりの木剣/薬草メモ】

【拠点施設:椅子/死因メモ/死因図鑑室/鑑定机】

【今回のビルド:死なないビルド】


「ビルド名、地味!」

「生存目的としては最高です」

「たしかに!」


「よし! 気合いだ! 正面から行け!」

「行かない! 横から見る! 石を投げる! 怪しかったら逃げる!」

「それでこそ勇者だ!」

「勇者の意味、神様たちの間でバラバラすぎる!」


 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 次のシードへ入ると、ミルカ村の外れに、本当に古い倉庫があった。石造りの入口。湿った空気。扉の横には看板。


【初心者向け訓練倉庫】

【死亡率:そこそこ】


「帰りたい」

「まだ入っていません」

「入る前から帰りたいの!」


 扉がぎい、と開く。中の暗闇で、何かの舌がぬるっと動いた。


「ログル」

「はい」

「初心者って、なに?」

「少なくとも、あれを置く場所ではありません」

「神様ァ! 初心者の意味、辞書で調べてえええええええええ!」


 叫びながら、わたしは小さい手で、木剣と小石を握りしめた。

【今回の勇者ステータス】

クラス:勇者

保有スキル:【恐怖耐性 Lv.1】【黒狼の爪筋回避 Lv.1】【死ぬ前に一言ツッコむ】【足元確認 Lv.1】【小型敵警戒 Lv.1】【転び慣れ Lv.1】【ミミック警戒 Lv.1】【罠の匂い Lv.1】【未識別仮名づけ】【投げ識別 仮】

新規登場:戦神バルガ

死亡回数:3


【登場人物紹介】

・戦神バルガ:難易度調整担当です。ドラゴン三体は「まだ」置かないそうです。「まだ」という言葉が気になります。


戦神バルガの登場に震えてくださった方、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると励みになります!(倉庫の中身は次回です)

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