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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第2章 解析神獣ログルと死因図鑑

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死因図鑑は、埋めるものじゃなくて使うもの

小ダンジョン攻略です。

今回は死因図鑑を使います。

死ぬためではなく、生きるために。

 初心者向け訓練倉庫の中は、ぜんぜん初心者向けじゃなかった。


 薄暗い通路。色の違う床。壁の穴。部屋の中央に宝箱。床はきれいな四角に区切られていて、まるで見えないマス目があるみたいだった。一歩進めば、相手も一歩動く。ゲームなら楽しい。現実でやると、胃がきゅっとなる。もう配置だけでわかる。


「これ、先生が作ったテストじゃなくて、意地悪な上級生が作った迷路だ!」

「右の床、罠反応」

「はい止まる!」


 足を引っ込め、小石を投げた。かちん。床が跳ね、空気だけが天井へ飛んだ。


「わたし、飛ばなかった!」

「成功です」

「今の見た!? 見たよね!? わたし、床に勝ったよね!?」

「はい。床への勝利として記録します」

「その記録名はちょっと弱そう!」

「やった! 床に勝った!」

「敵は床だけではありません」

「やめて! 勝利の余韻が三秒もない!」


 最初の部屋に、宝箱があった。金色のふち。赤い飾り。前とそっくり。でも、学習した。近づかない。


「ログル、呼吸は?」

「しています」

「はい敵! 小石!」


 ぽい、と投げる。宝箱がばくんと開き、歯をむき出しにした。


「こわっ! 宝箱界の校則違反!」


 ミミックが飛びかかってくる。一歩下がり、前にある罠の位置を思い出す。死因図鑑室で見た、バネ床の形。そこへ誘導する。


「こっちこっち! やーい、箱なのに足あるの変なの!」

「挑発が小学生です」

「小学生だもん!」


 ミミックが跳ねる。罠を踏む。ばいん、と飛ぶ。天井にぶつかり、床に落ちた。


「罠、こっちが使うと楽しい!」

「調子に乗ると死因になります」

「はい、静かにします!」


 奥の通路には、薬草らしき草が三本。食べない。摘む前に小石を投げる。一つは煙、ひとつは爆発、最後だけ緑の光。


「薬草発見! 食べる前にわかるの天才!」

「投げ識別が安定してきました」


【スキル更新:投げ識別】


 通路の先に、古い札が落ちていた。青く光っている。たぶん、鑑定机の強化素材。でも、周りの床が怪しい。色が微妙に違う。


「ログル、これ全部罠?」

「全部ではありません。半分ほどです」

「半分もあるの!? お弁当のおかずなら多い方だよ!」


 死因図鑑を思い出す。角ウサギで転んだ時。ミミックで噛まれた時。バネ床で飛ばされた時。嫌だけど、全部覚えている。


「死因図鑑って、わたしを笑う部屋じゃないんだね」

「はい。勇者様が、次に死なないための地図です」

「じゃあ使う。ぜったい使う」


 小石を投げる。罠を起動する。一マス横に進む。壁際の色が薄い床を避ける。宝箱もどきの死体を踏み台にしない。踏み台にしたら噛まれそうだから。


 少しずつ、少しずつ進む。やっと青い札に手が届いた。


【入手:古い識別札】


「取った!」


 その瞬間、奥の壁から、かたん、と音がした。新しい罠かと思って、札を抱えたまま固まる。


「ログル、今のなに?」

「出口の扉が開いた音です」

「出口の音まで怖い! この倉庫、音響まで意地悪!」

「出口まで油断しないでください」

「わかってる! 帰るまでが遠足! 出口までが攻略!」


 最後の通路で、壁の穴から小さな角ウサギが飛び出した。前ならびっくりして転んでいた。でも今回は、ログルの声が早い。


「左」

「はい!」


 左へ跳び、角ウサギはそのまま罠床へ突っ込んだ。ばいん。角ウサギが天井に消えた。


「ごめん! でも先に来たのそっち!」

「生存優先です」


 出口を抜けた瞬間、白い光が広がった。拠点だ。死んで戻ったんじゃない。生きて戻った。


【成功ログ】

【初心者向け訓練倉庫:生還】

【クリア時レベル:Lv2】

【最大HP:19】

【持ち帰り成功:古い識別札】

【鑑定机機能拡張】

【解放スキル:床ぺた確認】

【次回シード開始:Lv1/HP15】


「待って。レベル2、もう終わり?」

「シードをまたぐと、基本レベルは戻ります」

「神様ァ! 成長返して!」

「ただし、スキルと拠点機能は残ります」

「じゃあギリギリ許す! いや、やっぱりレベルは惜しい!」


 天井にコメントが出た。


【死亡ログじゃないのは少し残念だけど、成長おめでとう!】


「残念がるなあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ......!」


 死因図鑑室の横に、小さな棚が増えていた。


【成功ログ棚】


 その札を見て、胸を張った。


「死因図鑑は、埋めるものじゃない。使うもの。成功ログを増やすもの!」


 ログルが尻尾を小さく揺らす。


「はい。次は、もっと遠くへ行けると思います」

「うん。次は死なないで帰る。できれば薬草クエストも、ちゃんと終わらせる」

「目標が、とても堅実です」

「勇者だからね!」

「勇者というより、慎重なテスターです」

「たぶんそれが正解!」


 白い拠点の壁に書いた【帰る】の文字が、少しだけ明るく見えた。

【今回の勇者ステータス】


現在シード:シード004

クリア時レベル:Lv2

クリア時最大HP:19

次回開始:Lv1/HP15

クラス:勇者(罠師適性:発現)

基本スキル:【一手一動ワンターン・ワンアクション

保有スキル:【恐怖耐性 Lv.1】【黒狼の爪筋回避 Lv.1】【死ぬ前に一言ツッコむ】【足元確認 Lv.1】【小型敵警戒 Lv.1】【転び慣れ Lv.1】【ミミック警戒 Lv.1】【罠の匂い Lv.1】【未識別仮名づけ】【投げ識別】【床ぺた確認】

拠点施設:【椅子】【死因メモ】【死因図鑑室】【鑑定机】【成功ログ棚】

持ち帰り成功:【古い識別札】

死亡回数:3


【登場人物紹介】

・成功ログ棚:死因図鑑室の横にできました。今回が一件目です。これから増やします。死ぬためじゃなく、帰るために。


第2章を読み続けてくださった方、本当にありがとうございます!ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると、コヨリの成功ログが増える気がします!

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