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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第11章(第2部) 死因学者と死亡ログ改ざん

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神様、攻略メモを読んで対策している疑惑

21Fからは、神様送信用ログを元にした対策フロア。

正解行動を取っているのに、その正解が狙われます。

つまり、神様が攻略メモを読んでいる疑惑が濃厚です。

 21Fの入口には、看板が立っていた。


【これまでの学習を活かしましょう】


 コヨリは看板を見た瞬間、顔をしかめた。


「ログル。この看板、敵」

「まだ看板です」

「敵の看板」

「可能性はあります」

「これまでの学習を活かしましょう、って書いてある場所で学習を活かすと死ぬんだよ。わたし、知ってる」

「その警戒は正しいです」


 通路の先には、部屋がある。入口から見える範囲だけでも、アイテムがいくつも落ちていた。巻物、草、杖、壺。部屋の奥には階段もある。


 そして部屋の名前が、ログルの宝石に表示された。


【モンスターハウス】


 コヨリは部屋の入口で止まった。


「止まる。入口で止まる。モンスターハウスで最初にアイテムを拾わない。部屋に入る前に確認。これが正解」


「はい」

「えらい?」

「かなりえらいです」

「じゃあ足元確認」


 コヨリは足元を見た。


 普通の床に見える。


「ログル、罠反応は?」

「薄いです」

「薄いって何」

「神様送信用ログに基づく偽装の可能性があります」

「それ、濃いより嫌!」


 それでも、コヨリは止まるしかない。モンスターハウスに突っ込むより、入口停止の方が正しい。


 正しいはずだった。足元が、白く光る。


「止まった場所が!?」


「転送罠です!」

「入口停止を読まれたああああああああ!」


 景色がひっくり返り、コヨリはモンスターハウスの中央に落ちた。

 周囲を敵が囲む。足元にはアイテム。遠くに階段。完璧に嫌な配置。


「わたし、正解したよね!?」

「はい。正解行動を狙われました」

「正解を狩るなあああああ!」


 敵の一手が動く。コヨリは巻物に手を伸ばす。未識別。読んだら助かるかもしれない。大部屋化かもしれない。おにぎり化かもしれない。


 迷った一瞬で、倍速ヤマネコが二歩来た。


【死亡ログ】

【死因:モンスターハウス入口で止まった足元が転送罠だった】

【評価:正解行動も読まれています】

【累計死亡回数:84回】

【死因再演迷宮内死亡回数:8回】

【新規獲得:正解行動の足元確認 Lv.1】


 拠点に戻ったコヨリは、反省会テーブルをばんばん叩いた。


「ずるい! 入口で止まったのに! ちゃんと止まったのに!」

「はい」

「正解を罠にしたら、じゃあどうすればいいの!」

「正解行動の前に、その正解が読まれていないか確認する必要があります」

「正解の確認って何!? テストの答え合わせの答え合わせ!?」

「近いです」

「神様ァ! 幼女に二重チェックを要求するなあああああ!」


 ログルは、神様送信用ログを表示した。


【神様送信用ログ】

死因:モンスターハウスで最初にアイテムを拾った。

対策候補:入口で停止、敵配置確認、巻物使用判断。


 コヨリはそれを見て、目を細めた。


「ここに書いてある」

「はい」

「入口で停止って」

「はい」

「だから、止まった場所に転送罠を置いた?」

「可能性が高いです」


 コヨリはしばらく黙った。


「神様、わたしの攻略メモ読んでる」

「はい」

「読んで、次の罠を作ってる」

「はい」

「最低」


 その言葉だけは、叫びではなかった。


 再突入後、コヨリは入口で止まらなかった。正確には、入口の一歩手前で止まった。


「ログル、ここは?」

「罠反応なし。射線も切れています」

「入口の床は?」

「転送罠反応あり」

「やっぱり!」


 コヨリは小石を入口の床へ投げた。床が白く光り、転送罠が空振りする。


「正解行動の足も見る!」

「はい。かなり良いです」

「わたし、神様の嫌がらせに詳しくなってる」

「悲しい成長ですが、有効です」


 モンスターハウスは、入口の外から処理した。眠りの巻物を投げ込み、鈍足の杖で倍速敵を止め、爆ぜ岩を誘導する。部屋の中のアイテムは、全部後回し。


 敵が眠り、爆風が収まり、罠が見えてから、コヨリは部屋へ入った。


「拾うのは最後」

「はい」

「でも拾う時、すごくうれしい」

「それは分かります」

「ログルも?」

「整理したいので」

「理由が事務!」


 23Fには、階段前宝箱があった。


 コヨリは目をそらした。


「見ない」

「はい」

「階段へ行く」

「はい」

「宝箱を見ないわたし、えらい」

「かなりえらいです」


 階段に足を乗せた。すると、階段が、ぽっかりと大きな口を開けた。


「階段が噛むなあああああ!」


 階段ミミックだった。


【死亡ログ】

【死因:宝箱を無視して偽階段に噛まれた】

【評価:欲張らなくても噛まれる時代です】

【累計死亡回数:85回】

【死因再演迷宮内死亡回数:9回】

【新規獲得:階段も確認 Lv.1】


 拠点で、コヨリは床に突っ伏した。


「もう何を信じればいいの」

「本物の階段は、床の接続反応が安定しています」

「ログル、そういうの先に教えて」

「今、死因から学習しました」

「わたしの命が授業料!」

「はい」

「はいじゃない!」


 再挑戦では、コヨリは階段にも小石を投げた。階段が怒って口を開けたので、偽物だと分かった。本物の階段は、部屋の端に薄く隠れていた。


「宝箱を疑い、草を疑い、壺を疑い、店を疑い、階段を疑う」

「順調に成長しています」

「勇者じゃなくて疑心暗鬼のプロになってる!」


 25Fへ進むと、神様送信用ログが壁一面に表示された。


【対策候補:入口停止】

【対策候補:階段前宝箱無視】

【対策候補:未識別品は安全地帯で使用】

【対策候補:モンスターハウスは入口処理】


 全部、コヨリが死んで覚えたことだった。


 それが、次の罠の材料になっている。


「ログル」

「はい」

「これ、もう送っちゃダメなやつだよ」

「はい」

「神様に全部見せたら、わたしの正解が、次の死因になる」

「その通りです」


 ログルの宝石が、低く光った。


「勇者様。次の階層から、神様送信系統に直接干渉します」

「危ない?」

「危ないです」

「死ぬ?」

「可能性は高いです」

「じゃあ、死ぬ前に言っとく」


 コヨリは壁のログをにらんだ。


「わたしの死に方を、勝手に罠にするな」


 神様送信用ログの文字が、ほんの一瞬だけ乱れた。


【今回の死亡ログ】

今回増えた死亡回数:2回

累計死亡回数:85回

死因再演迷宮内死亡回数:9回


死因1:【モンスターハウス入口で止まった足元が転送罠だった】

評価:【正解行動も読まれています】

新規獲得:【正解行動の足元確認 Lv.1】


死因2:【宝箱を無視して偽階段に噛まれた】

評価:【欲張らなくても噛まれる時代です】

新規獲得:【階段も確認 Lv.1】


【今回の勇者ステータス】

現在領域:死因再演迷宮25F到達

累計死亡回数:85回

死因再演迷宮内死亡回数:9回

クラス:勇者

クラス適性:【死因学者】正式化直前

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】

【モンスターハウス入口停止 Lv.1】

【正解行動の足元確認 Lv.1】

【階段も確認 Lv.1】

【表示優先順位 Lv.1】

【死因ログ参照 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【正解行動の足元確認 Lv.1】

新規獲得:【階段も確認 Lv.1】

判明:【神様送信用ログが対策罠に利用されている】


【登場人物紹介】

コヨリ:正解行動を狩られ、階段にまで噛まれた幼女勇者。もう何も信用できない。

ログル:神様送信用ログが罠生成に利用されている疑惑をほぼ確信した。次はいよいよ送信系統へ干渉する。

偽階段ミミック:宝箱前欲張りを克服したコヨリを噛むために出てきた最悪の階段。


【ローグライクあるあるメモ】

階段前の宝箱を我慢できたら偉い。でも階段そのものが安全とは限らない。それが死因再演迷宮です。正解行動すら読まれると、次の一手確認が必要になります。


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