神様、攻略メモを読んで対策している疑惑
21Fからは、神様送信用ログを元にした対策フロア。
正解行動を取っているのに、その正解が狙われます。
つまり、神様が攻略メモを読んでいる疑惑が濃厚です。
21Fの入口には、看板が立っていた。
【これまでの学習を活かしましょう】
コヨリは看板を見た瞬間、顔をしかめた。
「ログル。この看板、敵」
「まだ看板です」
「敵の看板」
「可能性はあります」
「これまでの学習を活かしましょう、って書いてある場所で学習を活かすと死ぬんだよ。わたし、知ってる」
「その警戒は正しいです」
通路の先には、部屋がある。入口から見える範囲だけでも、アイテムがいくつも落ちていた。巻物、草、杖、壺。部屋の奥には階段もある。
そして部屋の名前が、ログルの宝石に表示された。
【モンスターハウス】
コヨリは部屋の入口で止まった。
「止まる。入口で止まる。モンスターハウスで最初にアイテムを拾わない。部屋に入る前に確認。これが正解」
「はい」
「えらい?」
「かなりえらいです」
「じゃあ足元確認」
コヨリは足元を見た。
普通の床に見える。
「ログル、罠反応は?」
「薄いです」
「薄いって何」
「神様送信用ログに基づく偽装の可能性があります」
「それ、濃いより嫌!」
それでも、コヨリは止まるしかない。モンスターハウスに突っ込むより、入口停止の方が正しい。
正しいはずだった。足元が、白く光る。
「止まった場所が!?」
「転送罠です!」
「入口停止を読まれたああああああああ!」
景色がひっくり返り、コヨリはモンスターハウスの中央に落ちた。
周囲を敵が囲む。足元にはアイテム。遠くに階段。完璧に嫌な配置。
「わたし、正解したよね!?」
「はい。正解行動を狙われました」
「正解を狩るなあああああ!」
敵の一手が動く。コヨリは巻物に手を伸ばす。未識別。読んだら助かるかもしれない。大部屋化かもしれない。おにぎり化かもしれない。
迷った一瞬で、倍速ヤマネコが二歩来た。
【死亡ログ】
【死因:モンスターハウス入口で止まった足元が転送罠だった】
【評価:正解行動も読まれています】
【累計死亡回数:84回】
【死因再演迷宮内死亡回数:8回】
【新規獲得:正解行動の足元確認 Lv.1】
拠点に戻ったコヨリは、反省会テーブルをばんばん叩いた。
「ずるい! 入口で止まったのに! ちゃんと止まったのに!」
「はい」
「正解を罠にしたら、じゃあどうすればいいの!」
「正解行動の前に、その正解が読まれていないか確認する必要があります」
「正解の確認って何!? テストの答え合わせの答え合わせ!?」
「近いです」
「神様ァ! 幼女に二重チェックを要求するなあああああ!」
ログルは、神様送信用ログを表示した。
【神様送信用ログ】
死因:モンスターハウスで最初にアイテムを拾った。
対策候補:入口で停止、敵配置確認、巻物使用判断。
コヨリはそれを見て、目を細めた。
「ここに書いてある」
「はい」
「入口で停止って」
「はい」
「だから、止まった場所に転送罠を置いた?」
「可能性が高いです」
コヨリはしばらく黙った。
「神様、わたしの攻略メモ読んでる」
「はい」
「読んで、次の罠を作ってる」
「はい」
「最低」
その言葉だけは、叫びではなかった。
再突入後、コヨリは入口で止まらなかった。正確には、入口の一歩手前で止まった。
「ログル、ここは?」
「罠反応なし。射線も切れています」
「入口の床は?」
「転送罠反応あり」
「やっぱり!」
コヨリは小石を入口の床へ投げた。床が白く光り、転送罠が空振りする。
「正解行動の足も見る!」
「はい。かなり良いです」
「わたし、神様の嫌がらせに詳しくなってる」
「悲しい成長ですが、有効です」
モンスターハウスは、入口の外から処理した。眠りの巻物を投げ込み、鈍足の杖で倍速敵を止め、爆ぜ岩を誘導する。部屋の中のアイテムは、全部後回し。
敵が眠り、爆風が収まり、罠が見えてから、コヨリは部屋へ入った。
「拾うのは最後」
「はい」
「でも拾う時、すごくうれしい」
「それは分かります」
「ログルも?」
「整理したいので」
「理由が事務!」
23Fには、階段前宝箱があった。
コヨリは目をそらした。
「見ない」
「はい」
「階段へ行く」
「はい」
「宝箱を見ないわたし、えらい」
「かなりえらいです」
階段に足を乗せた。すると、階段が、ぽっかりと大きな口を開けた。
「階段が噛むなあああああ!」
階段ミミックだった。
【死亡ログ】
【死因:宝箱を無視して偽階段に噛まれた】
【評価:欲張らなくても噛まれる時代です】
【累計死亡回数:85回】
【死因再演迷宮内死亡回数:9回】
【新規獲得:階段も確認 Lv.1】
拠点で、コヨリは床に突っ伏した。
「もう何を信じればいいの」
「本物の階段は、床の接続反応が安定しています」
「ログル、そういうの先に教えて」
「今、死因から学習しました」
「わたしの命が授業料!」
「はい」
「はいじゃない!」
再挑戦では、コヨリは階段にも小石を投げた。階段が怒って口を開けたので、偽物だと分かった。本物の階段は、部屋の端に薄く隠れていた。
「宝箱を疑い、草を疑い、壺を疑い、店を疑い、階段を疑う」
「順調に成長しています」
「勇者じゃなくて疑心暗鬼のプロになってる!」
25Fへ進むと、神様送信用ログが壁一面に表示された。
【対策候補:入口停止】
【対策候補:階段前宝箱無視】
【対策候補:未識別品は安全地帯で使用】
【対策候補:モンスターハウスは入口処理】
全部、コヨリが死んで覚えたことだった。
それが、次の罠の材料になっている。
「ログル」
「はい」
「これ、もう送っちゃダメなやつだよ」
「はい」
「神様に全部見せたら、わたしの正解が、次の死因になる」
「その通りです」
ログルの宝石が、低く光った。
「勇者様。次の階層から、神様送信系統に直接干渉します」
「危ない?」
「危ないです」
「死ぬ?」
「可能性は高いです」
「じゃあ、死ぬ前に言っとく」
コヨリは壁のログをにらんだ。
「わたしの死に方を、勝手に罠にするな」
神様送信用ログの文字が、ほんの一瞬だけ乱れた。
【今回の死亡ログ】
今回増えた死亡回数:2回
累計死亡回数:85回
死因再演迷宮内死亡回数:9回
死因1:【モンスターハウス入口で止まった足元が転送罠だった】
評価:【正解行動も読まれています】
新規獲得:【正解行動の足元確認 Lv.1】
死因2:【宝箱を無視して偽階段に噛まれた】
評価:【欲張らなくても噛まれる時代です】
新規獲得:【階段も確認 Lv.1】
【今回の勇者ステータス】
現在領域:死因再演迷宮25F到達
累計死亡回数:85回
死因再演迷宮内死亡回数:9回
クラス:勇者
クラス適性:【死因学者】正式化直前
基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動】
【獲得済みスキル】
【モンスターハウス入口停止 Lv.1】
【正解行動の足元確認 Lv.1】
【階段も確認 Lv.1】
【表示優先順位 Lv.1】
【死因ログ参照 Lv.1】
【今回の新規獲得・更新】
新規獲得:【正解行動の足元確認 Lv.1】
新規獲得:【階段も確認 Lv.1】
判明:【神様送信用ログが対策罠に利用されている】
【登場人物紹介】
コヨリ:正解行動を狩られ、階段にまで噛まれた幼女勇者。もう何も信用できない。
ログル:神様送信用ログが罠生成に利用されている疑惑をほぼ確信した。次はいよいよ送信系統へ干渉する。
偽階段ミミック:宝箱前欲張りを克服したコヨリを噛むために出てきた最悪の階段。
【ローグライクあるあるメモ】
階段前の宝箱を我慢できたら偉い。でも階段そのものが安全とは限らない。それが死因再演迷宮です。正解行動すら読まれると、次の一手確認が必要になります。
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