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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第2章 解析神獣ログルと死因図鑑

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白い部屋に、変な生き物が生えた

死後拠点に新しい仲間が追加されました。

かわいいです。

でも口が悪いです。


 白い部屋に、椅子がひとつ。壁には、小さな指で書いた文字が残っていた。


()()


 うん。大事。そこだけは絶対に消えていない。


「よし。次こそ死なない。黒狼も角ウサギも、今度会ったら遠くから石を投げる。勇者だけど石を投げる。安全第一!」


 わたし、天野(あまの)こより。見た目は八歳くらい。職業、勇者。現在の戦績、二回死亡。もういやだ。勇者ってこんなに早く死ぬ仕事なの? 入社初日に二回労災って、会社なら新聞に載るよ?


 椅子から立ち上がった瞬間、部屋の床がぽこんと鳴った。


「ぽこん?」


 床から白い台座が生えた。生えた。畑の大根みたいに。


「いやいやいや! 床から家具が生えるな! びっくりするでしょ!」


 台座の上には、丸い毛玉が乗っていた。白い小狐みたいで、フェレットみたいで、リスみたいで、額に虹色の宝石がついている。ぴくぴく動く耳。ふわふわの尻尾。正直、かわいい。


「......かわいい」


 毛玉が目を開けた。


「解析神獣ログルです。勇者様の死亡ログ、シード差分、未識別品、罠反応などを補助します」

「しゃべった! かわいいのに事務員みたい!」


 ログルは前足をそろえて、ぺこりと頭を下げた。礼儀正しい。これは当たりサポートかもしれない。


「よかった! まともな仲間だ! 神様、やればできるじゃん!」


 ログルの額の宝石が光った。


【死因:黒狼による初見殺し】

【死因:角ウサギ接触後、転落】

【総評:警戒心はありますが、足元と横方向に弱いです】


「初対面で人の死に方を読むなあああ!」

「申し訳ありません。神様から、勇者様は死亡ログで伸びるタイプだと聞いています」

「言い方! わたしは朝顔じゃない! 死んだら伸びる植物じゃない!」


 その時、天井から軽い声が降ってきた。


【やあ勇者ちゃん! 便利な解析ペットを送っておいたよ! これで死亡ログ管理も快適だね!】


「神様ァ! 快適に死にたくないんだけど!」


 ログルは宝石の光を消し、わたしを見上げた。


「ぼくは、神様支給の補助端末です。勇者様の生存率向上を目的としています」

「補助端末って、自分で言って悲しくない?」

「今は、そういう機能です」


 今は。なんだか、その言い方だけ、少し引っかかった。


 しゃがんで、ログルの目線に合わせる。


「じゃあログル。あなた、わたしをすぐ殺す神様側? それとも、死なないようにしてくれる側?」

「記録上は神様側です」

「うわ、正直!」

「ですが、勇者様の目的は魔王討伐ではなく、帰還だと判断しました」


 ログルは、わたしにこの世界のルールを改めて教えてくれた。


 1.勇者(わたし)が動くと敵も動く

 2.考えるだけなら基本ターン消費なし

 3.ただし選べる行動は一手

 4.大声・攻撃・移動・アイテム使用は行動扱い


「じゃあ、ずっと考えてたら無敵なの!?」

「満腹度が減ります」

「考えるだけでお腹減るの!? 宿題じゃん!.あ.....ローグライクかこれ!」


 ログルは壁を見る。わたしが書いた【帰る】の文字。


「優先記録を更新します。勇者様の主目的は、元の世界への帰還。死亡ログより上位に置きます」

「......そこ、ちゃんと覚えてくれるんだ」

「はい。死亡理由より、大事そうでしたので」


 胸の奥が、ちょっとだけ熱くなった。そっと、ログルの頭に指を伸ばした。


「なでてもいい?」

「解析中の接触は非推奨です」

「じゃあ解析してない時なら?」

「......短時間なら、許可します」

「今、ちょっと照れた! かわいい!」

「照れていません。宝石の温度上昇は仕様です」

「出た! 都合が悪いと仕様!」


 指先でふわふわの毛をなでると、ログルの尻尾が一回だけ揺れた。本人はすごく真面目な顔をしている。そこがまた、ずるい。神様は軽い。世界は雑。わたしは弱い。でも、この小さい白い生き物は、少なくとも【帰る】を一番上に置いてくれた。


「よし。ログル、相棒ね」

「相棒登録は、まだ権限がありません」

「空気読んで! 今いい感じだったよ!」

「申し訳ありません。感動処理は未実装です」

「感動に実装とか言うな!」


 ログルの宝石が、少しだけ赤く光った。


「次のシードに危険反応があります。このシード、あまり親切ではありません。足元をよく見てください」

「足元ね。わかった。足元確認、超大事。小学生でもわかる。廊下は走らない。異世界は踏まない」

「勇者様、後半が不穏です」

「不穏なのは世界の方!」


 ログルは小さな前足で、わたしの木剣をこんこん叩いた。


「装備確認。木剣一本。小石袋なし。防具なし。食料なし」

「言わないで! 遠足の持ち物チェックなら先生に怒られるやつ!」

「次回から小石袋を推奨します」

「勇者の必需品が小石袋なの、かなしい!」


 白い部屋の床に、光の輪が開く。また、あの世界へ行く時間だ。


 木剣を握り、ログルを肩に乗せた。


「次こそ、薬草を採って帰る。死なないで。普通に。ちゃんと。小学生でもできるおつかいみたいに!」

「勇者様。普通のおつかいに黒狼は出ません」

「だからこの世界がおかしいんだよおおおおおおおおおお!」


 叫びながら、三回目の異世界へ落ちた。

【今回の勇者ステータス】

クラス:勇者

保有スキル:【恐怖耐性 Lv.1】【黒狼の爪筋回避 Lv.1】【死ぬ前に一言ツッコむ】【足元確認 Lv.1】【小型敵警戒 Lv.1】【転び慣れ Lv.1】

死亡回数:2

新規登録:解析神獣ログル


【登場人物紹介】

・解析神獣ログル:白くてふわふわで、額に虹色の宝石があります。感動処理は未実装です。でも尻尾は揺れます。そういうところがずるいです。


ログルが仲間に加わった今回、楽しんでいただけましたか?ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると、ログルの尻尾が揺れます(たぶん)!


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