表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第10章 帰還門は魔王城地下三十層にある

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/340

射線の谷、地下に再就職する

十六階から二十階は、射線とモンスターハウスの階層です。

遠くの敵は安全ではありません。

遠くから死ぬだけです。

 十六階に降りると、通路がやたらと長かった。


 壁と壁の間に、まっすぐな道が続いている。奥には弓コボルトが一体。距離はある。けれど、距離があるから安全という考えは、射線の谷で何度も矢に変えられた。


「ログル、射線」

「通っています」

「ですよね! 通ってる顔してるもん、この通路!」

「通路に顔はありません」

「あるよ、性格悪い顔!」


 コヨリは一マス横のくぼみに入り、弓コボルトの矢を壁に刺させた。矢が飛ぶ音は、何度聞いても心臓に悪い。だが、怖いからこそ見える。射線、距離、壁、角。全部、前に死んで覚えた。


 十七階には、跳弾壁があった。小石を投げると壁で跳ね返る。うまく使えば、角の向こうの敵に当てられる。うまく使えなければ、自分に戻る。


 コヨリは小石袋改から貫通小石を取り出した。


「ログル、跳ね返り角度」

「左壁に当てれば、弓コボルトに当たります。ただし、二回跳ねると戻ります」

「一回だけ跳ねさせる」

「力加減に注意してください」

「わたし、できる子」


 投げた小石は、弓コボルトを倒し、壁で跳ね、さらに壺割り小僧に当たり、もう一度壁で跳ねた。


「あ」

「戻ります」

「戻らないでえええええええ!」


 HP1のコヨリの額に、小石がこつんと当たった。痛みは小さい。HPは正直だった。


 暗転。


【死亡ログ】

【死因:貫通小石が壁で跳ね返って自分に当たった】

【評価:敵は倒しました。自分も倒れました】

【累計死亡回数:71回】

【シード100内死亡回数:7回】

【新規獲得:跳弾先確認 Lv.1】


 次の挑戦では、コヨリは跳ね返り先に自分がいないことを確認した。小石を投げる前に、ログルが宝石で薄い線を描く。線の最後が自分の顔に戻ってこない。それだけで安心できるのが、すでに嫌な成長だった。


 十八階で遠投の腕輪を拾った。前に店で事故ったやつだ。コヨリは床に置いたまま、腕を組む。


「使えば強い」

「はい」

「でも、回復薬まで敵に投げる」

「装備確認をすれば防げます」

「それ、前に防げなかった」

「だから確認します」


 コヨリは腕輪に【遠投】と仮札をつけ、装備しないまま保存壺へ入れた。勝った気がした。使っていないのに勝った気がするアイテムは、だいたい危険だ。


 十九階で、部屋に入った瞬間、音が変わった。


 床が赤く光る。壁の陰から敵がわらわら出る。眠り粉コウモリ、倍速ヤマネコ、矢ガラス、盾コボルト、爆ぜ岩。部屋の奥には、きらきら光るアイテムが山ほど落ちていた。


 コヨリの目が輝く。


「アイテムいっぱい」

「勇者様、止まってください」

「でも、あれ、識別の巻物っぽい」

「止まってください」

「あっち、壺もある」

「止まってください」

「一個だけ拾って」

「死にます」

「一個だけ!」


 拾った。


 倍速ヤマネコが二回動いた。矢ガラスが撃った。眠り粉が飛んだ。爆ぜ岩が近づいた。部屋いっぱいの敵が、たった一手で現実になった。


 暗転。


【死亡ログ】

【死因:モンスターハウスで最初にアイテムを拾った】

【評価:拾う前に生き残りましょう】

【累計死亡回数:72回】

【シード100内死亡回数:8回】

【新規獲得:拾う前に周囲確認 Lv.1】


 拠点の反省会テーブルに、コヨリは涙目で書いた。


【モンスターハウスでは拾わない】


 少し考えて、その下に書き足す。


【でも最後には拾いたい】


 ログルが横に【生き残ってから】と書いた。


「ログル、わたしの欲望に現実を混ぜないで」

「混ぜないと死にます」

「もう死んだ!」


 成功周回では、コヨリは部屋の入口で止まった。部屋の中にはアイテムがある。欲しい。すごく欲しい。けれど、今拾うと死ぬ。ログルの宝石が赤い射線と敵の移動先を映す。


「眠りの巻物」

「ここなら読めます。読んだ瞬間、倍速ヤマネコは一歩近づきます」

「鈍足の杖」

「先に倍速ヤマネコへ」

「爆ぜ岩」

「敵の中心へ誘導できます。ただし、近づきすぎないでください」

「拾うのは?」

「最後です」

「つらい」

「最後です」


 コヨリは唇を噛み、眠りの巻物を読んだ。白い粉が部屋に広がる。倍速ヤマネコだけは半分起きていたので、鈍足の杖で動きを落とす。爆ぜ岩を小石で誘導し、敵の群れの中心で爆発させた。部屋の端に残った矢ガラスは、壁で射線を切る。


 アイテムを拾ったのは、最後だった。


「拾える。生きて拾える」

「はい」

「モンスターハウス、ちょっと好きかも」

「その感情は危険です」

「分かってる。でもアイテムいっぱい」

「欲望レイヤーを非表示にします」

「わたしの心を地図機能で消すな!」


 二十階には、魔王軍連絡所があった。机の上にはベルの通信メモが残っている。


【二十階到達、お疲れ様でございます】

【ここから先、魔王軍管理区域と神様側旧仕様が混在します】

【店内試食、遠投、未識別巻物の危険使用は禁止です】

【魔王様は現在、強制魔王戦延期届に署名中です】


 コヨリはメモを読んで、じんわり目頭が熱くなった。


「魔王さん、戦わないために書類書いてる」

「はい」

「ラスボスなのに、事務で助けてくれるの、おかしくない?」

「この世界では、かなり重要な協力です」

「神様より魔王軍の方が味方っぽい!」


 次の階段は、魔王軍の紋章が刻まれていた。二十一階から先は、ただのダンジョンではない。人の顔と、記録と、神様の古い仕様が混ざる場所だ。

【今回の死亡ログ】

今回増えた死亡回数:2回

累計死亡回数:72回

シード100内死亡回数:8回


主な死因1:【貫通小石が壁で跳ね返って自分に当たった】

評価:【敵は倒しました。自分も倒れました】

新規獲得:【跳弾先確認 Lv.1】


主な死因2:【モンスターハウスで最初にアイテムを拾った】

評価:【拾う前に生き残りましょう】

新規獲得:【拾う前に周囲確認 Lv.1】


【今回の勇者ステータス】

現在シード:シード100

到達階層:魔王城地下20F到達

次回開始:Lv1/HP15

クラス:勇者

副適性:地図師/死因学者候補

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】

【射線確認 Lv.1】

【間合い管理 Lv.1】

【跳弾先確認 Lv.1】

【拾う前に周囲確認 Lv.1】

【店内装備禁止 Lv.1】

【壺は先に識別 Lv.1】

【未識別警戒 Lv.3】兆候


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【跳弾先確認 Lv.1】

新規獲得:【拾う前に周囲確認 Lv.1】

更新候補:【射線確認 Lv.1】→【射線確認 Lv.2】兆候

中継記録:【魔王城地下20F】


【登場人物紹介】

コヨリ:アイテムに目がくらんでモンスターハウスに負けた幼女勇者。最後には拾えた。

ログル:欲望レイヤーを非表示にしようとした相棒。機能としては便利だが、心には悪い。

ベル:通信メモで支援する魔王軍秘書。魔王様の延期届まで管理している。

魔王ゼルド:まだ姿は見えないが、強制魔王戦を避けるため書類を書いている苦労人。


【ローグライクあるあるメモ】

モンスターハウスでは、最初にアイテムを拾うとだいたい死にます。まず入口で止まる。敵を見る。射線を見る。打開アイテムを使う。拾うのは最後です。最後まで残っていたら、ですが。


コヨリの深層攻略を応援していただける方は、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。感想・評価・レビューお願いします!励みになります
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
ギルド酒場るすと公式サイト

異世界ゲームバー転生おじさん(42)
影森ゆらは今日も死ぬ
千回死亡幼女勇者 異世界Any%
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ