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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第7章 魔物使いシードとドラゴン幼体

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魔物まんじゅうを食べる前に、変身先を確認しよう

魔物使いらしく変身アイテムが登場。

相手の気持ちを知る前に、弱点を知ろう。

未識別を食べるな。何度目だ。


 ミーナは、手のひらに乗る小さなまんじゅうを出した。


 白い皮に、肉球の焼き印。中からは、ほんのり甘い匂いがする。見た目だけなら完全におやつだった。


 コヨリは一歩下がった。


「食べ物だ」

「食べ物ですね」

「食べ物の顔をしたトラブルだ」

「勇者様の判断が正しいです」


 ミーナは笑った。


「魔物使いなら、相手の気持ちを知るのも大事だよ。これは魔物まんじゅう。食べると、少しだけ魔物の性質を借りられる」

「借りる?」

「変身です」

「ログル、食べ物に変身効果がついてる」

「はい」

「おやつ欄じゃなくて罠欄じゃん」


 ログルは宝石を光らせる。


「未識別状態です。どの魔物の性質かは不明」

「じゃあ食べない」

「賢明です」

「わたしは成長した」

「はい」


 その瞬間、ピヨラが横から鼻を近づけた。


「ピヨ、あまい」

「だめ! ピヨラ、食べちゃだめ!」


 コヨリは慌ててまんじゅうを取り返そうとした。ピヨラは食べていない。そこまではよかった。


 問題は、コヨリがつかんだまんじゅうが、指から滑り、跳ね、なぜか自分の口に入ったことだった。


「んむっ」

「勇者様」

「食べてない。これは事故。口に入っただけ」

「嚥下しました」

「言い方が医学!」


 視界がぐにゃりと歪む。


 体が縮む。手が消える。足も消える。かわりに、頭の上に傘のようなものが広がる。地面がやけに近い。


 コヨリは、まねっこキノコになった。


「......ログル」

「はい」

「今のわたし、かわいい?」

「危険です」

「かわいいか聞いた」

「小さいです」

「評価を逃げた」


 まねっこキノコの体は、動くたびに胞子が出る。攻撃力は低い。ただし、周囲の声まねができるらしい。


 試しに、コヨリはログルの声をまねた。


「勇者様、今のは確認不足です」

「似ていますが腹が立ちます」

「自分の声で言われると刺さるね」


 ピヨラがあたりを見回した。


「ピヨ、コヨリいない」

「ここ」

「キノコしゃべった」

「わたし!」

「キノコ、こわい!」


 ピヨラの目に涙がたまる。鼻先に火花が浮かぶ。


 コヨリは、自分のキノコボディを見た。どう見ても火に弱い。


「あ」

「相性最悪です」


 火花が落ちた。


【死因:まねっこキノコに変身し、ピヨラの火花で焼かれた】

【評価:相手の気持ちを知る前に弱点を知りましょう】

【死亡回数:47 → 48】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 死亡受付で、コヨリは妙に冷静だった。


「敗因を分析します」

「どうぞ」

「未識別変身アイテムの誤飲。変身先の弱点未確認。同行魔物との相性不一致」

「正確です」

「あと、キノコ姿のわたしは少しかわいかった」

「評価欄に不要です」

「書いて」

「書きません」


 ネムは事務的に死因ログを閉じた。


「今回、未識別警戒の更新候補ですね」

「食べるつもりはなかった」

「事故食いも警戒対象です」

「そんな食べ方まで管理するの?」

「コヨリさんの場合は」

「個別対応やめて」


 拠点で、ログルはまんじゅうの模型を置いた。


「魔物まんじゅうは、投げて識別できます」

「食べ物を投げるの、行儀悪くない?」

「命のほうが大事です」

「正論が強い」

「また、変身中は弱点も引き継ぎます」

「相手の気持ちっていうか、相手の弱点まで借りるの、重すぎる」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 次の周回。コヨリは魔物まんじゅうを食べなかった。


 ピヨラからも遠ざけた。手に持つ前に深呼吸した。ログルと一緒に、指差し確認もした。


「魔物まんじゅう、未識別」

「はい」

「投げる先、爆ぜ毛玉じゃない」

「はい」

「ピヨラの口に入らない距離」

「はい」

「わたしの口にも入らない」

「非常に大事です」


 コヨリはまんじゅうを小石のように投げた。草食スライムに当たると、まんじゅうはぷるんと震え、薄い緑色に変わった。


【識別:草食スライムまんじゅう】


 食べると、少しの間だけ体が弾力を持つ。ただし、跳ねすぎると罠を踏む。


「便利だけど事故るやつ」

「ローグライクらしい性能です」

「褒め言葉みたいに言わないで」


 コヨリは半分だけ食べた。体がぷるんと弾む。倍速ウサギの攻撃を一度だけ受け流す。だが調子に乗って跳ねる前に、壁に手をついた。


「跳ねない。跳ねない。わたしは今、スライムではなく勇者」

「よい自己暗示です」

「魔物使い、精神管理が忙しい」


【新規獲得:魔物まんじゅう識別 Lv.1】

【新規獲得:変身先確認 Lv.1】

【新規獲得:弱点も引き継ぐ Lv.1】


【今回の死亡ログ】

死亡時レベル:Lv5

死亡時HP:0/34

今回の死因:【まねっこキノコに変身し、ピヨラの火花で焼かれた】

評価:【相手の気持ちを知る前に弱点を知りましょう】

死亡回数:48回


【今回の勇者ステータス】

現在シード:シード041

クラス:魔物使い候補

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】

【未識別警戒 Lv.3】

【食材識別 Lv.2】

【魔法安全確認 Lv.1】

【ピヨラ記録 Lv.1】

【おとも位置確認 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【魔物まんじゅう識別 Lv.1】

新規獲得:【変身先確認 Lv.1】

新規獲得:【弱点も引き継ぐ Lv.1】

新規獲得:【誤飲警戒 Lv.1】

統合候補:【魔物まんじゅう識別】【変身先確認】【弱点も引き継ぐ】→【変身事故警戒 Lv.1】


【登場人物紹介】

魔物まんじゅう:食べると魔物の性質を借りる。未識別で食べるとだいたい事故る。

まねっこキノコ:声まねできるキノコ。火に弱い。ログルの声まねは精神に刺さる。

ピヨラ:キノコになったコヨリを認識できず、火花で焼いてしまった。本人に悪気はない。


【ローグライクあるあるメモ】

変身アイテムやモンスター肉系は、強力な能力を得られる一方で、姿・弱点・操作感まで変わる事故要素です。戻るタイミング、弱点、仲間との相性を確認しないと、強化のつもりが死因になります。今回は「未識別変身+弱点引き継ぎ」の回でした。


少しでも楽しんでいただけたら、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると励みになります。コヨリの次の事故も、たぶん学びになります!

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