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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第7章 魔物使いシードとドラゴン幼体

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仲間AIに通路を塞がれました

ピヨラが一時同行します。

かわいいです。

そして、通路が狭いです。



 ピヨラは、コヨリの後ろを一生懸命ついてきた。


 歩くたびに翼が草をこする。曲がり角では尻尾が遅れて壁に当たる。たまに自分の足を踏んで、ピヨ、と小さく鳴く。


 かわいい。

 とてもかわいい。

 ただし、通路幅に対して少し大きい。


 コヨリは、木の板にメモを書いた。


【ピヨラ同行メモ】

・かわいい

・火がこわい

・翼が壁に当たる

・尻尾も当たる

・かわいい

・かわいいで事故は消えない


 ログルが覗きこんだ。


「かわいいが二回あります」

「重要情報だから」

「攻略情報は三行です」

「かわいいも精神バフ」

「多少は認めます」


 シード041の森は、奥へ進むほどダンジョンらしくなっていく。草の道は細く、木の根が壁のように絡み合い、曲がり角の先が見えない。魔物は友好的なものが多いが、驚くと動きが変わる。敵意がなくても、進路を塞がれれば詰む。


 コヨリは以前覚えた射線確認を使い、通路の奥を見た。


 前方三マスに弓コボルト。後方五マスに倍速ウサギ。右は壁。左は草食スライムが寝ている。


「よし、前を小石で止めて、後ろは一歩下がって」

「勇者様、後ろにピヨラさんがいます」

「あ」


 ピヨラは、コヨリのすぐ後ろにいた。目をきらきらさせている。守る気満々の顔だ。


「ピヨ、コヨリ守る」

「ありがとう。でも今は、後ろに下がって」

「ピヨ?」

「後ろ。わたしの後ろ」

「ピヨ、コヨリの前、守る」


 ピヨラが前に出た。


 通路が完全に塞がった。


 コヨリは、すっと真顔になった。


「ログル」

「はい」

「かわいい壁ができた」

「はい」

「どかせる?」

「指示は一手です」

「終わった」


 後ろから倍速ウサギが二回動いた。ぽこ。ぽこ。


【HP:24 → 11】


「倍速で背中を叩くな! もちつきじゃない!」

「前方、弓コボルトが構えています」

「ピヨラ、しゃがんで!」

「ピヨ、しゃがむ?」

「しゃがんで!」

「ピヨ!」


 ピヨラがしゃがんだ。通路は塞がったままだった。高さではなく横幅の問題だった。


「違う! かわいいけど違う!」


 弓コボルトの矢が飛んだ。後ろから倍速ウサギがさらに二回動いた。


 画面暗転。


【死因:ピヨラが通路を塞ぎ、後ろから倍速ウサギに殴られた】

【評価:かわいい壁にも退路確認が必要です】

【死亡回数:46 → 47】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 拠点に戻ると、コヨリは無言で看板を作った。


【味方は思い通りに動かない】


 少し考えて、その下に書き足す。


【でも、そこがかわいい】


 ログルは看板を見つめた。


「反省していますか」

「してる」

「二行目が甘いです」

「反省と愛着は両立する」


 リュシアが酒場のカウンターから笑った。


「ちび勇者ちゃん、だいぶ飼い主の顔になってきたね」

「飼い主っていうか、保護者? いや、勇者? いや、なにこれ」

「魔物使い候補です」

「魔物に使われ候補じゃなくて?」


 ログルは床に通路の図を描いた。コヨリ、ピヨラ、倍速ウサギ、弓コボルト。駒を動かすたびに、コヨリの顔が渋くなる。


「ここでピヨラさんに細かい指示を出すと」

「一手消費」

「はい」

「ここでわたしが一歩横へ」

「壁です」

「ここでピヨラに待機」

「待機指示も一手です」

「味方コマの操作難易度、高すぎない?」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 次の周回。コヨリは、ピヨラに事前の合図を教えた。


 長い説明は危険地帯ではできない。だから、短い合図だけ。


「ぴた、は止まる」

「ピタ」

「すみっこ、は通路の端」

「すみっこ」

「こわい、はわたしの後ろ」

「ピヨ、こわい」

「それは今の気持ち?」

「ピヨ」

「かわいいけど、訓練が進まない」


 森の通路で、再び倍速ウサギが来る。


「ピヨラ、すみっこ」

「ピヨ!」


 ピヨラは道の端に寄った。完全ではないが、コヨリが一マス動ける隙間ができた。コヨリは小石を投げ、弓コボルトの構えを崩す。倍速ウサギは、ピヨラの横を抜けようとして草食スライムにぶつかった。


 盤面が、少しだけ生きるほうへ傾く。


【新規獲得:おとも位置確認 Lv.1】

【新規獲得:味方通路塞ぎ警戒 Lv.1】


「ログル、今の見た?」

「はい。成功ログです」

「成功ログ! 久しぶりに聞くと泣きそう」

「泣くと視界が悪くなります」

「情緒にも安全確認入れてくるじゃん」


 ピヨラは胸を張った。


「ピヨ、すみっこできた」

「えらい! すごい! 天才!」

「ピヨ!」

「喜んで前に出ないで! 天才、待機!」

【今回の死亡ログ】

死亡時レベル:Lv4

死亡時HP:0/28

今回の死因:【ピヨラが通路を塞ぎ、後ろから倍速ウサギに殴られた】

評価:【かわいい壁にも退路確認が必要です】

死亡回数:47回


【今回の勇者ステータス】

現在シード:シード041

クラス:魔物使い候補

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】

【射線確認 Lv.3】

【間合い管理 Lv.1】

【一歩下がろう Lv.1】

【魔物なでなで Lv.1】

【ピヨラ記録 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【おとも位置確認 Lv.1】

新規獲得:【味方通路塞ぎ警戒 Lv.1】

新規獲得:【指示ターン警戒 Lv.1】

統合候補:【おとも位置確認】【味方通路塞ぎ警戒】【指示ターン警戒】→【おとも管理 Lv.1】


【登場人物紹介】

ピヨラ:守りたい気持ちはある。通路幅の概念はまだ弱い。

倍速ウサギ:かわいい見た目で二回動く。幼女の背中をもちつきにしてはいけない。

ログル:味方の位置まで盤面に入れるべきだと冷静に教える相棒。


【ローグライクあるあるメモ】

仲間や召喚モンスターが通路を塞ぐ、思った場所に動かない、指示のためにターンを使う。これは仲間システム系の超定番事故です。敵より味方の位置で詰むこともあります。今回は「かわいい味方が壁になる」回でした。


コヨリの死に覚え攻略を見守っていただける方は、ブックマーク・評価・コメント・レビューで応援いただけると励みになります!


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