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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第6章 射線の谷と弓使いクラス

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木の矢、鉄の矢、銀の矢

矢には種類があります。

木、鉄、銀。素材が変われば死に方も変わります。

当てても死ぬ。それが射線の谷です。


 拠点の床には、赤い線が増えた。


 一本目は、前回わたしが踏んで死んだ射線。二本目は、ログルが予測した崖上からの射線。三本目は、わたしが「たぶん安全」と言って、ログルに「たぶんは死因です」と返された線。


 床が、だんだん不吉なあみだくじみたいになっている。


「ログル。これ、全部覚えるの?」

「全部覚える必要はありません」

「よかった」

「踏む前に見ればいいです」

「もっとむずかしい!」


 作戦机の上に、三種類の矢が置かれた。


 木の矢。軽い。たくさん拾える。威力は低め。

 鉄の矢。重い。強い。外すと心も重い。

 銀の矢。貫通する。後ろまで抜ける。後ろに何がいるか知らないと地獄。


「銀、強そう!」

「その感想がもう危ないです」

「だって銀だよ? 高そうだよ?」

「値段と安全性は一致しません」

「異世界、そういうところ現実的!」


 ログルは木の矢を一本くわえて、わたしの前に置いた。


「まずは木の矢からです」

「軽い。幼女向け」

「軽率向けではありません」

「言い方!」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 再び矢鳴(やな)り谷。


 今回は入口で死ななかった。岩陰から岩陰へ移動し、足元のマス目と、崖上の影を交互に見る。ログルの宝石が赤く光ったら止まる。青く光ったら進む。


 少しだけ、分かってきた。


「わたし、成長してる?」

「はい。前より死ににくい方向へ進んでいます」

「ほめ方が死因図鑑!」


 最初に出てきたのは、山ネズミだった。


 小さい。速い。かわいい顔で、こちらを噛む気満々だ。


 わたしは木の矢をつがえる。距離は三マス。ここなら安全だ。


「撃ちます」

「はい」


 木の矢は山ネズミに当たり、ぽこんと小さな音を立てた。倒れない。山ネズミは一マス近づく。


 もう一本。外れた。山ネズミがまた近づく。


 もう一本。かすった。山ネズミが、わたしの目の前に来た。


 HPは1。


「ログル」

「下がってください」

「木の矢なら軽い! 軽いってことは当たる!」

「その理屈は、だいぶ軽いです」

「うるさい! いけえええ!」


 木の矢は、山ネズミの耳の横をすんっと抜けた。


 わたしの一手は終わった。


 山ネズミの一手が来た。


 ぽこん。


【死亡ログ】

【死因:HP1で木の矢を空振りした】

【評価:軽い命中率でした】

【死亡回数:36 → 37】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


「木の矢、軽すぎた」

「判断が軽かったです」


 拠点で反省して、すぐ再挑戦した。


 次は鉄の矢だ。重いぶん強い。強いなら倒せる。倒せるなら生きる。


「わたし、今度こそ学んだ」

「その言い方は、死亡ログ上かなり危険です」


 谷スライムが通路に出た。ぷるぷるしているが、近づくと体当たりしてくる。わたしは鉄の矢を構えた。


 距離二マス。


 撃つ。命中。谷スライムの体が大きくへこんだ。けれど倒れない。


 スライムが一マス近づく。


 HPは1。


「下がってください」

「鉄の矢ならいける!」

「重さで命中率は上がりません」

「でも気持ちは強い!」

「気持ちはダメージ計算に入りません」


 わたしは鉄の矢を引いた。重い。腕がぷるぷるする。弦を離した瞬間、矢は半マスずれて壁に刺さった。


 敵ターン。


 谷スライムが、ぺちん。


【死亡ログ】

【死因:HP1で鉄の矢を空振りした】

【評価:重いのは矢ではなく判断ミス】

【死亡回数:37 → 38】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 死神ネムは、木のスタンプと鉄のスタンプを死因図鑑に押した。


「素材別死亡、二件目です」

「そろえるな!」

「次は銀ですか」

「予告しないで!」


 でも次は銀だった。


 谷の中腹で、通路に敵が一直線に並んでいた。


 先頭に、丸くて赤い岩みたいな魔物。

 その後ろに谷スライム。さらに矢ガラス。奥に弓コボルト。最後尾に経験値虫。


 見た瞬間、わたしの目が光った。


「一直線!」

「勇者様、先頭の敵を見てください」

「銀の矢なら貫通!」

「先頭の敵が」

「後ろまで一網打尽!」

「勇者様」

「勝った!」


 ログルの宝石が、今までで一番嫌な色で光った。


「先頭の敵、爆ぜ岩です」

「え?」

「ダメージを受けると爆発します」


 聞こえた。


 でも、銀の矢はもう放っていた。


 矢は赤い岩魔物に刺さり、そのまま抜けた。谷スライムを抜き、矢ガラスを抜き、弓コボルトを抜き、奥の経験値虫まで射抜く。


【レベルアップ】

コヨリはLv4になった。

最大HPが少し上がった。

HPが少し回復した。


「やった! 一網打尽! 見た!? 今のわたし、弓使い!」

「勇者様」

「ほめて!」

「一歩下がっていれば、ほめました」

「え?」


 赤い岩魔物に、ひびが入った。


 ぱきん、と音がした。


 わたしは、まだ隣接一マスに立っていた。


「待って」

「はい」

「これ、下がって撃つやつ?」

「はい」

「一歩?」

「一歩です」

「一歩下がればよかったうわあああああああああああん!」


 爆風が、わたしを白く包んだ。


【死亡ログ】

【死因:銀の矢で爆ぜ岩を貫通し、隣接爆風に巻き込まれた】

【評価:一歩下がれば助かりました】

【死亡回数:38 → 39】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 拠点に戻ると、わたしは床に大きく書いた。


【一歩下がろう】


 ログルがその横に、わたしの駒と爆ぜ岩の駒を置く。わたしの駒を一マス後ろにずらす。


「これで生存です」

「一マスゥ......」

「はい。一マスです」

「その一歩が命より重いいいいいいいい!」


 ログルは少しだけ笑ったように見えた。


「次は、その一歩を使いましょう」


【今回の死亡ログ】

死亡時レベル:Lv4

死亡時HP:0/26

死亡時満腹度:83

今回の死因:【銀の矢で爆ぜ岩を貫通し、隣接爆風に巻き込まれた】

評価:【一歩下がれば助かりました】

新規獲得:【弾数管理 Lv.1】【矢種確認 Lv.1】【爆ぜ岩警戒 Lv.1】【一歩下がろう Lv.1】


【今回の勇者ステータス】

現在シード:シード052

死亡回数:39回

クラス:弓使い候補

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】

【恐怖耐性 Lv.1】

【危険察知 Lv.3】

【足元確認 Lv.3】

【罠感知 Lv.3】

【未識別警戒 Lv.3】

【魔法安全確認 Lv.1】

【属性識別 Lv.1】

【盤面確認 Lv.1】

【射線確認 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【弾数管理 Lv.1】

新規獲得:【矢種確認 Lv.1】

新規獲得:【爆ぜ岩警戒 Lv.1】

新規獲得:【一歩下がろう Lv.1】

レベルアップ候補:【射線確認 Lv.1】→【射線確認 Lv.2】


【登場人物紹介】

コヨリ:木、鉄、銀で見事に死亡パターンを増やした幼女勇者。銀は当てたのに死んだ。

ログル:一歩下がれば助かる盤面を見ていた相棒。言ったが、矢のほうが早かった。

ネム:素材別死亡スタンプ係になりつつある死神。

爆ぜ岩:ダメージを受けると爆発する岩系モンスター。一歩下がれば教材、隣接すれば死因。


コヨリの死に覚え攻略を見守っていただける方は、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると励みになります!


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