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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第29章 ネタバレシード――神様の仕様書を読みに行きます

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帰還最終条件――死んだら全部終わります

ついに最終シードの条件が開示されます。

99F、Lv1、HP15、通常リスポーン不可。

最後だけ本気で死ねません。

 帰還最終条件は、帰還門建設予定地の中央に表示された。


 白い床の根が一斉に光り、拠点中の施設から細い線が集まってくる。死因図鑑室、思い出ログ棚、魔王相談窓口、ベルの書類、ネムの受付外通行証、一フレーム道場。全部が、ひとつの円へつながった。


「ログル」

「はい」

「これ、見たら戻れないやつ?」

「おそらく、見るだけなら戻れます」

「おそらくって言った」

「神様の仕様ですので」

「その言葉、ほんと信用できない」


 管理画面に、赤い文字が浮かぶ。


【帰還最終シード】

【階層:99F】

【開始状態:Lv1/HP15】

【同行者:ログル】

【持ち込み枠:制限あり】

【通常リスポーン:不可】

【死亡時:拠点接続破棄】

【ログル同行権:消失】

【死因ログ保存:不可】


 コヨリは、一行ずつ読んだ。


 99F。


 Lv1。


 HP15。


 ログル同行。


 通常リスポーン不可。


 死因ログ保存不可。


「死因ログ保存不可!?」

「はい」

「死んでも学べないの!?」

「はい」

「最後だけローグライクから急に別ゲーにするなああああああああああああああ!」


 ログルは少し考えたあと、冷静に言った。


「いえ。むしろ、最もローグライクに近いです」

「嫌な説得力出さないで!」


 管理画面の下に、さらに詳細が出る。


【深層敵候補】

【倍速ヤマネコ王】

【三倍速処刑弓】

【時止め喰らい】

【思考割込神域兵】

【保存壺荒らし】

【階段前の誘惑】

【忘却罠】

【帰還鍵喰い】


「敵名が全部ひどい!」

「深層ですので」

「深層なら何してもいいと思うなあああああ!」


 一フレーム道場で見た三倍速の影が、頭をよぎる。相談中にも目だけ動いた、時止め喰らい。罠王都で踏みかけた見えている罠。射線の谷で覚えた、撃つ前に隣を見る癖。食料不足シードで、満腹度が尽きる怖さ。全部が、この99Fに詰め込まれる。


 コヨリは、手持ち欄の仮表示を見た。


【持ち込み候補】

帰還鍵(ホームキー)

【ネムの受付外通行証】

【ベルの正式抗議文】

【ゼルドの影符】

【思い出ログ接続糸】

【ログル】


「ログル、アイテム欄に入ってる?」

「同行者欄です」

「よかった」

「ただし、同行者欄も一枠です」

「枠いいいいいいいい!」


 ベルが横から言う。


「正式抗議文は、持ち込み優先度が高いです」

「ベルさん、それ戦闘で使うの?」

「主神様に受領させるために必要です」

「ラスボス戦の必須アイテムが抗議文なの、だいぶこの作品らしい」


 ゼルドは黒い札を差し出す。


「余の影符だ。深層で一度だけ使え」

「魔王さん、ありがとう」

「ただし、使いどころを誤るな」

「アイテム説明が完全に強い杖」


 ネムは受付外通行証を確認する。


「死亡処理の穴を一度だけ見られます」

「一度だけ?」

「はい」

「ケチ!」

「死神の権限にも限度があります」


 管理画面に、最後の確認が出た。


【挑戦条件】

【死亡回数:1100回以上】

【帰還因子:名前/座標/時間/記憶/縁/扉】

【拠点世界種:仮安定】

【ログル分類:相棒/仮承認】

【主神権限解除:未達成】


「主神権限解除、最後に殴るやつだよね」

「はい」

「経験値は?」

「0です」

「言わなくていい!」


 コヨリは、表示を見つめた。


 死んだら全部終わる。


 正確には、コヨリが消えるとは書いていない。けれど、拠点接続が破棄される。ログル同行権が消える。死因ログが保存されない。つまり、ここまで積み上げたものが、次の一手に変わらない。


 死んでもやり直せる物語で、やり直せない場所に行く。


「怖い」


 コヨリは、正直に言った。


 ログルが隣でうなずく。


「ぼくも、怖いです」


 その答えが、少しだけ嬉しかった。怖いのが自分だけではない。ログルも一緒に怖がっている。なら、一緒に行ける。


「でも、帰る」

「はい」

「ログルと」

「はい」


 管理画面に、最後の選択肢が出る。


【挑戦しますか?】

【はい】

【まだ泣く】


「選択肢おかしい!」

「神様の配慮でしょうか」

「配慮するならリスポーンつけて!」


 コヨリは【まだ泣く】を見て、少しだけ迷った。


 そして、まだ押さなかった。


「先に、壁に書く」


 最後の準備が残っていた。


深層敵候補の欄には、まだ空白があった。名前のない敵。能力未確定。速度不明。ログルの宝石が、そこだけ嫌な沈黙を返す。


「未識別敵ってこと?」

「はい。敵にも未識別があります」

「やめて!」


 コヨリは、手持ち候補の識別の巻物を見た。アイテムだけでなく、敵の能力を見抜くためにも使えるかもしれない。たった一枚。読む場所を間違えたら終わる。


「最後まで、識別大事」

「はい」


持ち込み候補を見ながら、コヨリは反省会テーブルの端に新しい札を書いた。


【持っていくものより、使う順番】


「名言です」

「生存標語」

「深層では、強いアイテムを持っていても使えなければ死にます」

「はい、怖い正論」


 識別の巻物をいつ読むか。影符をいつ切るか。抗議文を最後まで残すか。もう戦いは始まっている。

【今回の勇者ステータス】

現在シード:管理画面シード/ネタバレシード

死亡回数:1100回(この話では増加なし)

クラス:帰還者/死因学者/拠点管理人 複合状態

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション

獲得済み主要スキル:【危険察知 Lv.3】【未識別警戒 Lv.3】【足元確認 Lv.3】【射線確認 Lv.2】【満腹度管理 Lv.2】【帰還接続管理 Lv.1】【相棒再分類拒否 Lv.2】【神域死亡処理警戒 Lv.1】

【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【帰還最終条件確認 Lv.1】

拠点施設:【椅子】【死因図鑑室】【鑑定机】【厨房】【思い出ログ棚】【罠訓練場】【魔物休憩所】【シード地図室】【反省会テーブル】【拠点酒場】【魔王相談窓口】【魔王軍資料室】【死因研究室】【仕様書保管棚】【一フレーム道場】【帰還門建設予定地】【管理画面の扉】


【登場人物紹介】

・この話の焦点:99Fの条件と深層理不尽敵の候補を明示し、最終準備へ入ります。

・コヨリ:神様の仕様書を読む側に回った幼女勇者。怒りと怖さを抱えつつ、帰る意志だけは曲げない。

・ログル:解析神獣。端末扱いから相棒へ再分類されつつある。冷静だが、もう完全に情がある。

・ベル:魔王軍秘書。正式抗議文で神様を詰める有能事務担当。書類は物理的にも重い。

・ゼルド:魔王。ラスボス役を押しつけられていた被害者代表。怒り方が静かで怖い。

・ネム:死神受付。淡々としているが、最終シードの死亡処理にはいつもより慎重。


【ローグライクあるある解説】

99F・Lv1・HP15・通常リスポーン不可・深層敵候補を明示。未識別、満腹度、倍速、三倍速、時間停止、持ち込み枠を30章の主要課題として整理しています。


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