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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第29章 ネタバレシード――神様の仕様書を読みに行きます

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千回死亡の理由――世界を救うための最悪の検証

コヨリの死亡ログが、何に使われていたのかが明かされます。

世界を救う目的は本物。

でも、それで許される話ではありません。


 アドミニスが開いた画面には、地図ではなく、手順が並んでいた。


 ただの手順ではない。勇者召喚から、死亡ログ収集、シード差分照合、拠点成長、帰還門建設、世界種外部保存まで、全部が一本の線でつながっている。コヨリはそれを見て、まず眉を寄せた。


「これ、攻略チャート?」

「うん。大雑把には」

「神様が作った攻略チャート、信用度低い」

「返す言葉がないね」


 返す言葉はないらしい。珍しい。普段なら「仕様だよ」とか「可能性はあるよ」とか軽く流すところなのに、今日は流さない。


 画面の最初には、こうあった。


【目的:滅亡しないシードの探索】

【手段:勇者死亡ログによる失敗分岐除外】

【必要適性:記憶保持/死因学習/帰還意志/諦めにくさ】


「諦めにくさって、何」

「きみのことだよ」

「ほめてる?」

「ほめてる」

「今ほめられても、殴る予定は変わらない」

「うん」


 次の項目が開く。


【死因ログ用途】

【一、勇者の死亡原因記録】

【二、シード崩壊点の推定】

【三、帰還因子残存率の照合】

【四、ログル同行可能性の抽出】

【五、世界種形成の進行確認】


 コヨリは、手をぎゅっと握った。


「わたしを使って、世界のデバッグしてたの?」


 アドミニスは、すぐに答えなかった。


 それだけで、答えは分かる。


「......うん」


 短い返事だった。


「それは勇者じゃなくてテスターの仕事!」

「うん」

「しかも、命がけのテスター!」

「うん」

「説明なし!」

「うん」

「報酬なし!」

「うん」

「ログルも端末扱い!」

「うん」

「魔王さんはラスボス役固定!」

「うん」

「ミーナさんたちは役割扱い!」

「うん」

「うんしか言わない!」

「言い訳したら、もっと悪いと思って」


 コヨリは口を閉じた。


 たしかに、今言い訳されたら、もっと怒っていたかもしれない。アドミニスが「でも世界のためだから」と言ったら、机を乗り越えて殴っていた。まだ殴らない。殴る場所は、もう決めている。


 画面には、死亡回数ごとの成果が出ている。


【死亡回数100:未識別警戒安定】

【死亡回数300:拠点施設群形成】

【死亡回数500:魔王側異議申立発生】

【死亡回数800:ログル感情形成】

【死亡回数1000:世界種安定候補】

【死亡回数1100:帰還門仮接続成功】


「死にすぎ」

「はい」

「これ、普通の勇者なら心折れるよ」

「だから、きみしかいなかった」

「そこ、きれいな言い方にしないで」


 アドミニスは、目を伏せた。


「そうだね。きみしかいなかった、じゃない。僕が、きみを選んだ」


 白い部屋が静かになる。


 コヨリは、アドミニスを見た。


「選ばれたくなかった」

「うん」

「でも、今ここまで来たのは、わたしの一手」

「うん」

「ログルを相棒にしたのも、わたし」

「うん」

「魔王さんと話したのも、ベルさんに書類出してもらったのも、ネムに怒られたのも、ミーナさんたちを覚えてるのも、わたし」

「うん」


 コヨリは息を吸った。


「だから、神様の計画通りって言われるのは嫌」

「言わない」

「言ったら殴る回数増やす」

「言わないよ」


 ログルの宝石が、画面の下部を照らす。


【帰還最終条件:準備中】

【必要処理:死亡ログ圧縮核】

【必要処理:世界種接続】

【必要処理:ログル再分類本承認】

【必要処理:主神権限解除】


「主神権限解除?」

「最後に、僕を倒す必要がある」


 アドミニスが言った。


 コヨリは、ぱちぱち瞬きした。


「倒す?」

「うん」

「神様を?」

「うん」

「経験値出る?」

「出ない」

「そこ即答!?」


 ログルが冷静に補足する。


「神様は経験値対象外です」

「千回以上死なされたラスボスが0EXPなの、納得いかない!」


 アドミニスは、少しだけ苦笑した。


「でも、ドロップは出すよ」

「何」

「謝罪文、帰還門本起動権限、ログル同行本承認」

「先に出して」

「倒されないと出せない」

「ドロップ仕様、腹立つううううううう!」


 コヨリは机に額をぶつけそうになった。ぶつけたらターン消費ではないが、精神が減る。


 画面の最後に、赤い文字が浮かぶ。


【帰還最終シード:99F】

【死亡時:通常リスポーン不可】


 コヨリの叫びは、次の部屋まで響いた。


画面の端に、コヨリ自身の手書きメモが重なった。反省会テーブルに何度も書いた言葉だ。


【次は、死なない】


 それは何百回も破られた約束だった。けれど、破られるたびに捨てたわけではない。書き直した。少し言い方を変えた。時々泣きながら、時々怒りながら、また壁に貼った。


「わたし、約束破りまくってる」

「でも、捨てていません」


 ログルの言葉に、コヨリは小さくうなずいた。


アドミニスは、そこで初めてコヨリから目をそらした。


「僕は、きみが怒る権利を軽く見ていた」

「うん」

「死んでも戻るなら、取り返しがつくと思っていた」

「つかないよ」

「うん。つかなかった」


 短い会話だった。けれど、コヨリはその一言を、謝罪文の一行目に書かせようと決めた。

【今回の勇者ステータス】

現在シード:管理画面シード/ネタバレシード

死亡回数:1100回(この話では増加なし)

クラス:帰還者/死因学者/拠点管理人 複合状態

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション

獲得済み主要スキル:【危険察知 Lv.3】【未識別警戒 Lv.3】【足元確認 Lv.3】【射線確認 Lv.2】【満腹度管理 Lv.2】【帰還接続管理 Lv.1】【相棒再分類拒否 Lv.1】

【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【神様に説明を求める Lv.1】

拠点施設:【椅子】【死因図鑑室】【鑑定机】【厨房】【思い出ログ棚】【罠訓練場】【魔物休憩所】【シード地図室】【反省会テーブル】【拠点酒場】【魔王相談窓口】【魔王軍資料室】【死因研究室】【仕様書保管棚】【一フレーム道場】【帰還門建設予定地】【管理画面の扉】


【登場人物紹介】

・この話の焦点:千回死亡の理由を明かしつつ、テスター扱いへの怒りを残します。

・コヨリ:神様の仕様書を読む側に回った幼女勇者。怒りと怖さを抱えつつ、帰る意志だけは曲げない。

・ログル:解析神獣。端末扱いから相棒へ再分類されつつある。冷静だが、もう完全に情がある。

・アドミニス:主神。世界を救いたかった目的は本物だが、説明不足と死亡ログ運用が最悪すぎるクソ運営。


【ローグライクあるある解説】

死亡ログをデバッグチャートとして可視化。死に覚えが強さではなく分岐除外になる、という作品の根幹を最終攻略条件へ接続します。


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