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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第29章 ネタバレシード――神様の仕様書を読みに行きます

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アドミニス面談――軽い神様の重い本音

アドミニス本人と、ようやく正面から話します。

軽い神様の口から、軽くない本音が出ます。

でも謝罪はまだ足りません。

 アドミニスとの面談室は、白すぎた。


 床も壁も天井も白い。机も椅子も白い。窓はない。逃げ道もない。いや、神様相手に逃げ道がどうとか言うのも変だけれど、コヨリはまず出口を探した。ローグライクの癖だ。部屋に入ったら出口、敵、罠、アイテム、射線。神様との面談でも基本は変わらない。


「出口を探してる?」


 向かいの椅子に、アドミニスが座っていた。


 白い神官服。中性的な顔。いつもの笑顔。けれど、二十八章の管理画面で見た時よりも、少し疲れている。白い部屋の中で、アドミニスだけが、うっすら影を落としていた。


「探してる」

「僕、攻撃しないよ」

「初見殺しの神様が言っても信用できない」

「ひどいなあ」

「千百回死んでる幼女の発言だから、重く受け止めて」


 アドミニスは、苦笑した。


 ログルはコヨリの隣にいる。ベルの正式抗議文の控え、ネムの受付外通行証、ゼルドの役割表への異議申立。全部、コヨリの近くにある。武器ではない。けれど、ここでは武器より効く。


「世界を救いたかったんだ」


 アドミニスは、いきなりそう言った。


 コヨリは瞬きをした。


「知ってる」

「え」

「もう見た。滅亡シード群も、検証ログも、仕様書も」

「そっか」


 アドミニスは、少しだけ肩を落とした。


「本当は、きみに見せるつもりじゃなかった」

「それがだめ」

「うん」

「見せるつもりじゃないものを、わたしの死亡ログで作らないで」

「うん」


 アドミニスの返事は短い。


 いつもの「バグじゃないよ。仕様だよ」も、「今回は惜しかったね」もない。軽い言葉を出す余裕がないのか、出してはいけないと分かっているのか。コヨリにはまだ分からない。


「きみなら、何度死んでも戻ってこられると思った」


 アドミニスが言う。


「戻りたくて戻ったんじゃない」


 コヨリはすぐに返した。


「痛かった」

「うん」

「怖かった」

「うん」

「帰りたかった」

「うん」

「初死亡おめでとうって言われたの、まだ怒ってる」

「......うん」


 白い部屋に、沈黙が落ちた。


 ログルが隣で少し身じろぎする。アドミニスはログルを見た。


「ログルも、変わったね」

「はい」

「僕の端末だったのに」

「今は違います」


 ログルの声は震えなかった。


「ぼくは、コヨリ様の相棒です」


 アドミニスは目を細めた。寂しそうにも、嬉しそうにも見える。ずるい顔だ、とコヨリは思った。


「そっか。うん。そうだね」


 コヨリは机に手を置いた。


「神様」

「なに」

「世界を助けたかったのは、わかった」

「うん」

「でも、わたしを説明なしで千回以上死なせていい理由にはならない」

「うん」

「ログルを端末扱いしていい理由にもならない」

「うん」

「魔王さんを便利なラスボスにしていい理由にもならない」

「うん」

「ミーナさんやカイを、役割って呼んでいい理由にもならない」

「うん」


 アドミニスは、全部うなずいた。


「ごめん」


 コヨリは片手を上げた。


「それ、最後まで取っておいて」

「なんで?」

「みんなで殴る時に使う」


 アドミニスは、少しだけ目を丸くした。


「殴るの?」

「殴る」

「僕、神様だから死なないよ」

「知ってる。死なないけど、ちゃんと負けてもらう」


 ログルが横から小さく言った。


「経験値は出ないと思います」

「そこ今言う!?」

「重要情報です」

「0EXPラスボス、腹立つなあ!」


 アドミニスが、ほんの少し笑った。今までの軽い笑いではない。負けを認め始めた人の笑いだった。


「勇者ちゃん」

「なに」

「助けてほしい」


 コヨリは黙った。


 最初からそう言えばよかったのに、と思う。何度も思う。今でも思う。けれど、今言ったことは、聞こえなかったふりをしない。


「最初から、そう言って」

「うん」


 面談室の奥に、最後の条件画面が開いた。


【帰還最終シード条件:開示待ち】


 コヨリは深呼吸する。


「見る」


 アドミニスは、止めなかった。


面談室の机の下に、コヨリは罠がないか一度だけ覗いた。アドミニスは少し困った顔をしたが、何も言わなかった。


「神様の部屋でも確認するんだね」

「する。信用と罠確認は別」

「名言みたいだ」

「名言じゃなくて死因対策」


 アドミニスは、その返しに少しだけ息を吐いた。笑ったのではない。たぶん、ようやく自分がどれだけ信用を削ったのか、目の前で見せられているのだ。


コヨリは、アドミニスの笑顔を見ながら思った。嫌いだ。まだ嫌いだ。でも、全部嫌いではないところが腹立たしい。世界を救いたかった気持ちは、たぶん本物だからだ。


「神様」

「なに」

「わたし、理解はする」

「うん」

「許すかは別」

「うん」


 アドミニスは、その別をちゃんと受け取った顔をした。

【今回の勇者ステータス】

現在シード:管理画面シード/ネタバレシード

死亡回数:1100回(この話では増加なし)

クラス:帰還者/死因学者/拠点管理人 複合状態

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション

獲得済み主要スキル:【危険察知 Lv.3】【未識別警戒 Lv.3】【足元確認 Lv.3】【射線確認 Lv.2】【満腹度管理 Lv.2】【帰還接続管理 Lv.1】【相棒再分類拒否 Lv.1】

【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【主神面談 Lv.1】

拠点施設:【椅子】【死因図鑑室】【鑑定机】【厨房】【思い出ログ棚】【罠訓練場】【魔物休憩所】【シード地図室】【反省会テーブル】【拠点酒場】【魔王相談窓口】【魔王軍資料室】【死因研究室】【仕様書保管棚】【一フレーム道場】【帰還門建設予定地】【管理画面の扉】


【登場人物紹介】

・この話の焦点:アドミニスが言い訳ではなく短い謝罪に近づく面談回です。

・コヨリ:神様の仕様書を読む側に回った幼女勇者。怒りと怖さを抱えつつ、帰る意志だけは曲げない。

・ログル:解析神獣。端末扱いから相棒へ再分類されつつある。冷静だが、もう完全に情がある。

・アドミニス:主神。世界を救いたかった目的は本物だが、説明不足と死亡ログ運用が最悪すぎるクソ運営。


【ローグライクあるある解説】

ラスボス前会話を、出口・罠・射線確認の癖から始めています。対話でも安全確認するのが、死に覚え幼女勇者の成長です。


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