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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第29章 ネタバレシード――神様の仕様書を読みに行きます

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滅亡シード群――どの世界も最後は壊れる

魔王が勝っても、勇者が勝っても、世界は壊れていました。

アドミニスの目的が、かなり見えてきます。

でも、やり方は最悪です。

 滅亡シード群は、空だった。


 いや、正確には空ではない。白い管理画面の奥に、無数の小さな世界が浮かんでいる。村、王都、魔王城、森、谷、属性迷宮、罠だらけの通路、パン屋の煙突、初期村の井戸。全部、見たことがあるようで、少しずつ違う。


 それらが、順番に赤く染まっていく。


【シード001:滅亡】

【原因:初期勇者死亡後、魔王軍進軍】

【補足:帰還因子未発見】


【シード012:滅亡】

【原因:食料循環破綻】

【補足:豊穣神実装ミス】


【シード027:滅亡】

【原因:王都罠化暴走】

【補足:罠師権限過剰】


【シード066:滅亡】

【原因:魔王城強制崩壊】

【補足:魔王役割固定失敗】


【シード088:滅亡】

【原因:魂配役不整合】

【補足:同一魂重複負荷】


 コヨリは途中で、画面を止めた。


「待って」

「はい」

「全部、滅亡って出てる」

「はい」

「わたしが死んだあとも?」

「多くは、その後に崩壊しています」


 コヨリは唇を噛んだ。


 自分が死んで拠点へ戻ったあと、シードはリセットされる。そう聞いていた。だから、世界はそこで終わるのだと思っていた。けれど、管理画面には、死後の続きを計算した記録が残っている。コヨリがいなくなった世界が、どう壊れていったか。


 ミーナがパンを配り続けても、食料が尽きる世界。


 カイが木剣を握っても、敵兵にされる世界。


 ゼルドが魔王として踏みとどまっても、城ごと崩れる世界。


 ピヨラが火を怖がりながら誰かを守っても、魔物休憩所ができる前に消える世界。


「ログル」

「はい」

「これ、見たくなかった」

「はい」

「でも、見ないとだめなやつだね」

「はい」


 画面の奥で、アドミニスの古い記録が再生された。


「魔王を倒しても、だめか」


 声は、いつもの軽さが薄い。


「勇者が強くなっても、世界の生成式が最後に壊れる。魔王を弱くしても、別の崩壊点が出る。勇者を逃がしても、帰還因子が足りない。神々が直接介入すると、今度はシードが歪む」


 コヨリは、じっと聞いた。


「じゃあ、死んでも折れずに、失敗を覚えて、次の一手を変えられる勇者が必要だ」


 ログルの宝石が、かすかに震えた。


 コヨリは、自分の手を見た。小さい。八歳くらいの手。剣を持つには頼りなく、盾を構えるには軽く、爆ぜ岩の爆風で簡単に吹き飛ぶ手。それでも、千百回ぶんの失敗を握っている。


「わたしを選んだ理由、それ?」

「おそらく」

「ローグライクやってたから?」

「死に覚えと、分岐判断への適性が高かったのだと思います」

「ゲームの腕を、異世界の死亡検証に使うなあああああああああ!」


 叫んだら、少しだけ息ができた。


 画面の次の行に、もっと嫌な文字が出る。


【検証体:天野こより】

【適性:高】

【精神負荷:高】

【継続可能性:不明】


「検証体って言うな」


 コヨリの声は、今度は小さくなかった。


「わたし、勇者って呼ばれても困ったけど、検証体よりは勇者のほうがまし」


 ログルが隣でうなずく。


「ぼくも、そう思います」


 滅亡シード群の奥に、ひとつだけ赤く染まりきっていない線があった。


【拠点接続型帰還】

【滅亡記録保存:可能性あり】

【世界種外部移植:可能性あり】

【勇者生還:未確定】

【ログル同行:未承認】


「未確定ばっかり」

「はい」

「保証は?」

「ありません」

「神様ァ! 保証なしで千百回死なせるなああああああああああ!」


 管理画面の奥で、アドミニスの声が小さく残っていた。


「保証できたら、最初からそう言えたんだけどね」


 コヨリは画面を睨んだ。


「助けたい世界があるなら」


 声が震える。


「助けてって言って」


 拳を握る。


「実験台にしないで」


 滅亡シード群の赤い光が、少しだけ暗くなった。


 その奥に、魔王役割表の扉が開く。


 ゼルドが怒っていい書類が、そこに待っていた。


赤い世界の中に、ほんの短い青い瞬間もあった。ミーナが子供たちにパンを配る。カイが誰かを逃がす。ゼルドが部下に撤退を命じる。崩壊する直前まで、誰かが誰かを助けようとしていた。


「全部失敗って、雑に言わないで」


 コヨリは画面に向かって言った。


「最後が赤でも、その前に青いところ、あるじゃん」


 ログルは、静かにその青い瞬間へ印をつけた。滅亡シード群の中で、小さな青だけが、帰還門の根へ吸い込まれていく。


青い瞬間に印をつけると、赤い滅亡ログの横に小さな別名がついた。


【完全失敗】が【未保存】へ。

【無価値】が【要接続】へ。


「言い方、変わった」

「勇者様が見方を変えたからです」

「見方でログが変わるの?」

「この拠点は、そういう場所になっています」


 なら、見る。赤だけで終わらせないために、コヨリは青い点を探し続けた。

【今回の勇者ステータス】

現在シード:管理画面シード/ネタバレシード

死亡回数:1100回(この話では増加なし)

クラス:帰還者/死因学者/拠点管理人 複合状態

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション

獲得済み主要スキル:【危険察知 Lv.3】【未識別警戒 Lv.3】【足元確認 Lv.3】【射線確認 Lv.2】【満腹度管理 Lv.2】【帰還接続管理 Lv.1】【相棒再分類拒否 Lv.1】

【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【滅亡シード照合 Lv.1】

拠点施設:【椅子】【死因図鑑室】【鑑定机】【厨房】【思い出ログ棚】【罠訓練場】【魔物休憩所】【シード地図室】【反省会テーブル】【拠点酒場】【魔王相談窓口】【魔王軍資料室】【死因研究室】【仕様書保管棚】【一フレーム道場】【帰還門建設予定地】【管理画面の扉】


【登場人物紹介】

・この話の焦点:滅亡シード群を見て、アドミニスの目的と罪を同時に受け止めます。

・コヨリ:神様の仕様書を読む側に回った幼女勇者。怒りと怖さを抱えつつ、帰る意志だけは曲げない。

・ログル:解析神獣。端末扱いから相棒へ再分類されつつある。冷静だが、もう完全に情がある。

・アドミニスの記録:主神。世界を救いたかった目的は本物だが、説明不足と死亡ログ運用が最悪すぎるクソ運営。


【ローグライクあるある解説】

どのルートも失敗する分岐表を見せる回。ローグライクの周回検証を世界滅亡シミュレーションへ拡張。


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