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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第29章 ネタバレシード――神様の仕様書を読みに行きます

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神様の検証ログ――勇者死亡回数一覧

千百回の死亡回数が、ただのカウンターではなかったと判明します。

ギャグ死因も、神様には検証ログでした。

コヨリ、怒りながら少しだけ迷います。


 神様の検証ログは、仕様書よりもずっと無機質だった。


 白い管理画面に、数字が並ぶ。色もない。音もない。ただ、コヨリの死んだ回数が、淡々と積み上げられている。本人が見るには、なかなか趣味の悪い画面だった。


【勇者死亡回数:1100】

【有効死因ログ:1092】

【ギャグ死因:分類保留】

【滅亡回避候補:抽出中】


「ギャグ死因って何」

「おそらく、ハコベエ様関連や宴会開始の巻物関連です」

「納得したくない」


 画面を触ると、死亡一覧が開いた。第1死因、黒狼。第2死因、落下。第3死因、ミミック。番号は延々と続く。途中から、コヨリでも覚えきれていない死因がある。ネムの受付で「またですね」と言われすぎて、逆に記憶が薄いものもある。


「これ、全部神様が見てたの?」

「はい」

「死因を?」

「はい」

「わたしが文句言ったログも?」

「おそらく」

「じゃあ、神様、あんなに文句言われてまだ仕様書出さなかったの?」

「はい」

「殴る理由が、また増えた」


 ログルは止めなかった。むしろ、少しだけうなずいた。


 コヨリが一覧をスクロールすると、画面の右側に別の列が出た。


【失敗ルート】

【世界崩壊率】

【帰還因子残存率】

【ログル同行可能性】


「ログル同行可能性」


 コヨリはそこだけ声に出した。


 初期の頃は、ほとんどゼロだった。魔王に近づくシード、帰還門を見つけるシード、持ち帰り枠を整理するシードを越えるたびに、少しずつ数字が増えている。けれど、その数字が上がるたび、死亡回数も増えていた。


「わたしが死ぬほど、ログルと帰れる可能性が上がってた?」

「結果としては」

「結果って言い方、ずるい」

「はい。ずるいです」


 ログルは、今度はごまかさなかった。


 画面の奥に、アドミニスのメモが残っていた。いつもの軽い口調ではない。短い、神様の作業メモだった。


【勇者コヨリは、失敗分岐を保持したまま次判断へ進める】

【死亡時の精神崩壊率:想定より低】

【帰還意志:高】

【ログルとの相互依存:想定外】

【世界種形成:想定外】


「想定外ばっかり」

「はい」

「わたし、神様の予定よりだいぶ面倒な勇者になってる?」

「かなり」

「よし」


 少しだけ胸を張った。面倒な勇者でいい。神様の思った通りに死んで、思った通りに諦めて、思った通りに帰るなんて絶対に嫌だ。


 しかし、次の画面で、コヨリの顔から笑いが消えた。


【滅亡回避候補】

【シード001:失敗】

【シード012:失敗】

【シード027:失敗】

【シード066:失敗】

【シード088:失敗】

【シード100:失敗】

【拠点接続型帰還:候補】


「全部、失敗?」

「シード単位では、そう表示されています」

「魔王倒しても?」

「失敗」

「逃げても?」

「失敗」

「神様が助けても?」

「失敗」


 コヨリは画面の前で黙った。


 アドミニスは遊んでいたわけではない。いや、遊んでいるみたいな言い方はたくさんした。初死亡おめでとうとか、惜しかったねとか、良い死亡ログだったよとか、今思い出しても腹立つ。けれど、その奥で神様は、ずっと失敗の山を見ていたのかもしれない。


「世界を助けようとしてたの?」


 コヨリの声は、思ったより小さかった。


「そのようです」


 ログルが答える。


「じゃあ」


 コヨリは拳を握った。


「最初からそう言ってよ」


 画面は何も返さない。


 検証ログの下に、アドミニスの古いメモが一つだけ残っている。


【勇者ちゃんには、まだ言わない】

【怖がらせるから】


 コヨリは、その文字を見て、むしろ一番腹が立った。


「怖がらせるから言わないって、何」

「......」

「言わないで死なせるほうが、ずっとこわいよ」


 ログルは答えなかった。


 白い管理画面が、次のページを開く。


【滅亡シード群:閲覧可能】


 コヨリは深呼吸した。


「見る」

「はい」

「泣きそうでも、見る」


 ログルが隣に並ぶ。


「ぼくも見ます」


 二人は、滅びた世界の一覧へ進んだ。


一覧の途中には、奇妙な空欄もあった。死亡していないのに、検証対象として残された日。コヨリが拠点で料理を食べた日、ログルを撫でた日、ゼルドと休戦の話をした日。


「死んでない日も、記録されてる」

「はい。成功寄りのログです」

「神様、成功ログも見てたんだ」

「見ていたはずです」

「じゃあ、なんで死亡ログばっかり喜んだの」


 誰も答えなかった。アドミニスの言葉の軽さが、またひとつ重くなる。


検証ログの下には、アドミニスが消しかけたらしいメモも残っていた。


【勇者ちゃんは、思ったより怒る】

【怒っても、次の一手を考える】

【怒りは攻略資源かもしれない】


「怒りを資源にするな」

「ですが、実際に何度か打開につながっています」

「ログルまで資源扱いしないで!」


 それでも、怒ったから立てた日がある。コヨリは否定しきれず、むすっとした。

【今回の勇者ステータス】

現在シード:管理画面シード/ネタバレシード

死亡回数:1100回(この話では増加なし)

クラス:帰還者/死因学者/拠点管理人 複合状態

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション

獲得済み主要スキル:【危険察知 Lv.3】【未識別警戒 Lv.3】【足元確認 Lv.3】【射線確認 Lv.2】【満腹度管理 Lv.2】【帰還接続管理 Lv.1】【相棒再分類拒否 Lv.1】

【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【検証ログ読解 Lv.1】

拠点施設:【椅子】【死因図鑑室】【鑑定机】【厨房】【思い出ログ棚】【罠訓練場】【魔物休憩所】【シード地図室】【反省会テーブル】【拠点酒場】【魔王相談窓口】【魔王軍資料室】【死因研究室】【仕様書保管棚】【一フレーム道場】【帰還門建設予定地】【管理画面の扉】


【登場人物紹介】

・この話の焦点:死亡回数カウンターの意味が、検証ログとして反転します。

・コヨリ:神様の仕様書を読む側に回った幼女勇者。怒りと怖さを抱えつつ、帰る意志だけは曲げない。

・ログル:解析神獣。端末扱いから相棒へ再分類されつつある。冷静だが、もう完全に情がある。

・アドミニスの記録:主神。世界を救いたかった目的は本物だが、説明不足と死亡ログ運用が最悪すぎるクソ運営。


【ローグライクあるある解説】

死亡回数一覧をリザルト画面ではなく攻略ログに変換。死因別・分岐別に失敗を潰していく「死に覚え」の総決算です。


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