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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第5章 罠だらけ王都と罠師ビルド

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開かない扉と、罠師コヨリ

古い扉の前に立ちます。

開ければ帰れるとは限りません。

でも、欠片は落ちます。

 古い大扉の前で、わたしは縁のスープを飲んだ。


 拠点厨房で登録したレシピを、今回の成功周回では材料を集めて再現できた。味は相変わらず少し焦げている。でも、温かい。


【現在の盤面】

コヨリ:Lv8/HP52/52/満腹度78/100

同行:ログル、スリップ、トラッパ

床:正面落とし穴、左右に矢罠、鍵穴ミミック反応

扉:帰還因子に似た微弱反応

現在状態:行動待ち


「Lv8」

 わたしは小さく言った。

「入口ではLv1で五回死んだのに」

「道中で警備人形を罠に誘導し、経験値を稼ぎました」

「ちゃんと準備して来たってことだよね」

「はい」


 低いまま無理やり突っ込む必要はない。

 死んで覚えて、道具を集めて、食べて、レベルを上げて、それでも足りないところをログで埋める。


 わたしは、そうやってここまで来た。


 扉には、あの文字がある。


【帰る者は、開けるな】

【開ける者は、帰れない】


「性格悪い看板」

「否定できません」

「でも、帰るって書いてある」


 スリップが正面へ行こうとして、わたしは袖をつかんだ。


「正面、落とし穴」

「おっと」

「王都では一歩目がだいたい死ぬ」

「説得力がすごいな、お嬢ちゃん」

「死んだからね!」


 トラッパが床の線を見る。


「壊すと別の罠が起きる。組み替える」

「うん。壊さない。踏ませる。動かす。順番を見る」


 まず、落とし穴の向きを変える。

 トラッパが金具をゆるめ、わたしが安全確認棒二号で板を押す。


 警備人形が奥から二体来る。


「スリップ、右に引いて!」

「任せろ!」


 スリップが壁を蹴る。今度はバケツを避けた。

 警備人形が一歩。霜ふり床で滑る。向きを変えた落とし穴へ落ちる。


「よし!」


 次に、火皿。

 扉へ直接火球は撃たない。反射板がある。


「ころころ火球」


 火球は床を転がり、遠くの火皿に入った。

 火皿が灯る。扉の表面の反射板が、一瞬だけ下がる。


「ログル、鍵穴」

「右は呼吸。左は無反応。ただし左の床に針」

「じゃあ立つ場所は斜め後ろ」


 鍵穴に手を伸ばす。

 鍵開け見習いの感覚が、指先に少しだけ乗る。


 かちゃり。


 扉が開く、と思った。


 開かなかった。


 代わりに、床の線が全部光った。


「来る!」


 矢。網。ばね。回転壁。

 でも、順番は見えている。


 矢は先に小石で撃たせた。網は安全確認棒で落とした。回転壁は一歩待つのではなく、外側へ回る。ばねは警備人形に踏ませる。


 最後の罠線が、扉の中央に戻った。


「勇者様。今です」


 わたしは、扉の金具に手を伸ばした。


「開けるんじゃない」

 トラッパが言う。

「外す」


 金具を外す。

 古い音がした。


 扉は、やっぱり開かなかった。


 でも、表面から小さな欠片が落ちた。

 黒い金具の欠片。冷たくて、手のひらに乗せると、白い拠点の壁を思い出す。


【帰還因子候補:扉の欠片】

初期反応を確認

本体門ではありません

開放条件:不足


「本体じゃないの!?」

「はい」

「帰れると思ったのに、欠片だけ!? 神様ァ! 帰宅ルートを分割するなああああああああ!」


 叫んだあと、わたしは欠片を握った。


「でも、これがあるってことは、扉は本当にあるんだよね」

「はい。少なくとも、帰還に関係する機構は存在します」

「じゃあ探す。罠だらけでも、扉が噛んでも、探す」


 ログルが、静かにうなずいた。


「記録します。勇者様は、扉の欠片を得ました」


 トラッパがわたしの足元を見て、少しだけ笑った。


「いい盤面の見方だった」

「踏み方じゃなくて?」

「見方」

「やった。だいぶ褒め方が進化した」


 ログルの宝石が光る。


【クラス解放:罠師】

【新規獲得:盤面確認 Lv.1】

【拠点施設:罠訓練場】解放候補


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 白い拠点に戻ると、死因図鑑室の横に新しい扉ができていた。


 扉には、落とし穴と矢印床と安全確認棒の絵がある。


「罠訓練場?」

「はい。拠点施設として解放されました」

「拠点にまで罠を持ち込むの!?」

「安全に練習できます」

「安全な罠って言葉がもう信用できない!」


 壁には、古い扉金具の絵が浮かんでいた。


【帰る】

【食べてから帰る】

【忘れない】


 その横に、わたしは指で書き足した。


【扉を探す】


 ログルが隣に座る。


「次は?」

「まっすぐ立つと撃たれる場所です」

「それ、もう立てないじゃん」

「移動しないと進めません」

「神様ァ! 立っても歩いても殺すなああああああああ!」


 白い拠点に、わたしの叫びが響いた。


 扉は開かなかった。

 でも、欠片は残った。


 帰る道は、まだ遠い。けれど、ないわけじゃない。


【今回のクリアログ】


現在シード:シード027

クリア時レベル:Lv8

クリア時最大HP:52

クリア時HP:24/52

クリア時満腹度:41/100

持ち帰り成功:【古い扉金具】【王都罠メモ】【安全確認棒二号】

ロスト:【安全確認棒一号】【未識別の腕輪】【拾った鉄釘】

拠点登録:【王都罠メモ】【古い扉金具】

解放施設:【罠訓練場】

獲得因子:【帰還因子:扉の欠片】初期反応

死亡回数:35回


【今回の勇者ステータス】


クラス:罠師

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】


【恐怖耐性 Lv.1】

【危険察知 Lv.2】

【足元確認 Lv.3】

【罠感知 Lv.3】

【未識別警戒 Lv.3】

【魔法安全確認 Lv.1】

【属性識別 Lv.1】

【満腹度節約 Lv.1】

【スープ回復 Lv.1】

【壁ぎわ逃げ Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


クラス解放:【罠師】

新規獲得:【盤面確認 Lv.1】

新規獲得:【扉順確認 Lv.1】

新規獲得:【鍵開け見習い Lv.1】

統合:【ワイヤー確認 Lv.1】+【連鎖罠警戒 Lv.1】+【罠配線警戒 Lv.1】→【盤面確認 Lv.1】

拠点施設:【罠訓練場】

帰還因子候補:【扉の欠片】初期反応


【登場人物紹介】


コヨリ:王都の入口で死にまくり、最後はLv8まで育てて罠門を攻略した幼女勇者。

ログル:床・壁・影・上・水流・鍵穴・扉順を見続けた解析神獣。

スリップ:盗賊少年。罠を避ける動きと、たまに罠を食らう姿を見せてくれた。

トラッパ:罠職人。罠を壊さず組み替える考え方を教えた。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

コヨリの罠だらけ王都攻略を少しでも楽しんでいただけましたら、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると、とても励みになります!

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