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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第5章 罠だらけ王都と罠師ビルド

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鍵穴が噛むし、扉が回るし、ドアまで敵

王都地下へ入ります。

鍵穴が呼吸します。

扉に閉じ込められます。

 王都地下への階段は、思ったよりきれいだった。

 石壁には古い灯り。床には青い線。空気は少し冷たい。

 ただ、扉が多い。


 右の扉。左の扉。壁の小さな扉。床に描かれた扉。扉に見える壁。壁に見える扉。扉の絵が描かれた扉。


「扉ってこんなに種類あるの!? 開けるだけの板じゃないの!?」

「地下区画は、侵入者対策が濃いです」

「王都、全部濃い!」


 スリップが前に出た。


「鍵開けなら任せな」


 細い道具を鍵穴に入れる。かちゃり。

 小さな宝箱が開いた。


 中には鍵が入っていた。


「鍵の箱から鍵が出た」

「王都らしいだろ」

「らしさが分からない!」


 わたしも挑戦してみることになった。


 小さな鍵穴。丸い扉。変な呼吸はない。蝶番は左。床の矢印はなし。


「ログル、いける?」

「今のところ危険反応は薄いです」


 鍵を入れる。

 回す。


 開いた。


「やった!」

「鍵開け見習いとして反応があります」

「盗賊っぽい!」

「勇者様です」

「職業がどんどん迷子!」


 次の扉の鍵穴が、ぷくっと動いた。


「ログル」

「はい。鍵穴が呼吸しています」

「呼吸するなシリーズ増やさないで!」


 鍵穴から小さな歯が見えた。


「鍵穴ミミックです」

「宝箱だけじゃなくて穴もミミック!?」

「穴も油断できません」

「異世界、穴に厳しい!」


 鍵穴ミミックは避けた。

 問題は、その隣の普通そうな回転扉だった。


「押すだけで開く?」

「蝶番がありません」

「じゃあ引く?」

「床に回転軸があります」

「回るの?」


 スリップが言う。


「そこは半回転して抜ける扉だ。タイミングを合わせれば大丈夫」

「タイミング系、嫌い」


 わたしは扉を押した。

 扉が半回転する。

 一マス進む。


 背後で、がこん。


「閉じた」

「勇者様。内部にいます」

「出る」


 押す。

 一ターン進む。

 扉も回る。

 また閉じる。


 引く。

 一ターン進む。

 扉も回る。

 また閉じる。


「出たい! 出たいのに扉が戻ってくる!」


 外からスリップが叫ぶ。


「逆だ! 次は押さずに待て!」


「待つ!」


 わたしは待った。

 待つのは行動ではない。敵も動かない。罠も動かない。


「ログル、動かない」

「待機ではなく、行動待ちのままです」

「扉、空気読んで!」


 しかたなく一歩。扉が回る。

 一歩。扉が回る。


 満腹度が減る。目も回る。


「ぐるぐるでお腹が減るの、納得いかない......」


【死亡ログ】

死亡回数:35回目

死亡時レベル:Lv6

死因:【回転扉トラップから出られず、ぐるぐる回って満腹度切れ】

評価:【扉は開ける前より、開けた後の立ち位置が大事です】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 再挑戦。

 わたしは扉の前で、深く息を吸った。


「鍵穴を見る。蝶番を見る。床を見る。開けた後に立つ場所を見る」

「よろしい」

「あと、扉を信用しない」

「王都では有効です」


 今度は押して入らない。

 扉を半回転だけさせ、隙間ができた瞬間に横へ一マス。

 回転軸の外側に出る。


 扉はぐるんと回ったが、わたしは外にいた。


「勝った!」

「扉順確認が反応しています」


 その後、鍵穴ミミックは安全確認棒でつついた。

 噛まれたのは棒だった。


「棒が先に死んだ」

「役目を果たしました」

「ありがとう、安全確認棒一号......」


 さらに奥へ進むと、古い大扉が見えた。


 他の扉とは違う。

 大きく、黒く、表面に細い文字が刻まれている。


【帰る者は、開けるな】

【開ける者は、帰れない】


 わたしは、声が出なかった。


 帰る。

 その文字だけが、胸の中に刺さった。


「ログル」

「はい」

「帰るって書いてある」

「はい」

「でも、開けるなって書いてある」

「はい」


 スリップも黙った。

 トラッパも、工具を握ったまま動かない。


 ログルの宝石が、淡く光る。


「勇者様。あの扉から、帰還因子に似た反応があります」

「帰れるの?」

「まだ分かりません」

「......そっか。でも、見に行く」


 扉の前には、罠の線が何本も走っていた。

 正面から行けば落ちる。横から行けば刺さる。鍵穴はたぶん噛む。


 でも、帰るという文字がある。


 それだけで、足は止まらなかった。

【今回の死亡ログ】


死亡時レベル:Lv6

死亡時HP:0/39

死亡時満腹度:0/100

今回の死因:【回転扉トラップから出られず、ぐるぐる回って満腹度切れ】

評価:【扉は開ける前より、開けた後の立ち位置が大事です】

ロスト:【安全確認棒一号】【未識別の小瓶】


【今回の勇者ステータス】


現在シード:シード027

再挑戦後レベル:Lv7

最大HP:46

現在HP:33/46

死亡回数:35回

クラス:罠師候補

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】


【恐怖耐性 Lv.1】

【危険察知 Lv.2】

【足元確認 Lv.3】

【罠感知 Lv.3】

【未識別警戒 Lv.3】

【魔法安全確認 Lv.1】

【属性識別 Lv.1】

【遠隔起動 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


新規獲得:【鍵開け見習い Lv.1】

新規獲得:【扉順確認 Lv.1】

新規獲得:【鍵穴呼吸確認 Lv.1】

帰還因子候補:【扉】反応


【登場人物紹介】


スリップ:鍵開けを見せてくれる盗賊少年。回転扉の説明はちょっと遅い。

トラッパ:扉罠の構造を見ている罠職人。壊すより組み替えたい。

コヨリ:扉に閉じ込められて満腹度切れした幼女勇者。


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