表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第29章 ネタバレシード――神様の仕様書を読みに行きます

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
301/340

管理画面通知――神様に見つかりました

帰還門の仮接続は、ついに主神の管理画面へ届いた。

ログル同行、拠点接続、全部まとめて見つかります。

コヨリ、仕様書要求モードへ。


帰還門(きかんもん)の細い光は、まだ拠点の床に残っていた。


 元の世界の玄関は、もう見えない。けれど、白い床の奥には、さっきまで向こう側へ伸びていた線が、焼きついたみたいに薄く光っている。コヨリはその線を爪先で踏まないよう、少しだけ離れて立った。踏んだらまた未確定座標で弾かれる気がしたからだ。前回それで死んだ。学習した幼女は、床の光を踏まない。


「ログル」

「はい」

「帰れたかもしれないやつ、まだ残ってる?」

「残っています。ただし、触るとまた弾かれる可能性が高いです」

「触らない。今日はえらい」

「かなりえらいです」


 ログルはコヨリの腕の中で、額の宝石を淡く光らせた。白い光ではない。虹色でもない。赤と白が混ざった、熱を持たない警告灯みたいな色だった。


「ログル、その光、だいぶ嫌」

「ぼくも嫌です」

「本人も嫌なんだ」

「はい。神様側の回線が、勝手に開こうとしています」


 その瞬間、帰還門予定地の上に、白い四角い窓が開いた。アドミニスがいつも出していた、軽くて、白くて、嫌に親切そうな管理画面。その角が、今は妙に鋭く見えた。


【管理画面通知】

【帰還門仮接続を検知】

【対象:勇者コヨリ】

【同行者:ログル】

【拠点接続:管理外】


「管理外って言い方、なに」

「神様が管理していない接続です」

「それ、わたしが悪いみたいに出すのやめてほしい。神様の管理が雑だったからこっちで作ったんだけど」


 白い窓の向こうから、懐かしいくらい軽い声が聞こえた。


「勇者ちゃん。そこ、開けちゃったんだ」


 コヨリは一歩だけ後ろに下がった。逃げたのではない。距離を取った。ローグライクでは、ボス前で一歩下がるのは大事だ。特に、相手が神様で、説明不足で、初見殺しの実績があり、笑顔で人を千回以上死なせるタイプの場合は。


「開けた」

「そっか。うーん、困ったなあ」

「困ったのはこっち。神様、仕様書出して」

「またそれ?」

「またそれじゃない! まだ一回もちゃんと出してない!」


 窓の奥のアドミニスは、いつもの白い神官服で、いつもの中性的な笑顔を浮かべていた。けれど、その笑顔の端に、ほんの少しだけ疲れが混ざっている。コヨリはそれを見つけてしまい、余計に腹が立った。


 疲れているなら、最初から相談すればよかったのだ。


「勇者ちゃん。帰還門はね、まだ完成していないんだ」

「知ってる。仮って出てた」

「ログルを連れて行くのも、まだ正式な処理じゃない」

「知ってる。だから正式にする」

「それは、少し難しいかな」


 ログルの体が、腕の中で小さく震えた。


【ログル個体記録:照合中】

【返却対象:検出】

【分類:神様側貸与端末】


 コヨリは窓を見たまま、ログルを抱く腕に力を込めた。


「返さない」

「勇者ちゃん」

「ログルは端末じゃない。相棒。二十八回くらい言った気がするけど、神様の耳、未識別の壺に入ってるの?」

「壺には入っていないよ」

「じゃあ聞いて!」


 アドミニスはすぐには返事をしなかった。白い窓の向こうで、神様の指が見えない卓を撫でるように動く。管理画面の文字が、何度も書き換わった。


【拠点接続:例外】

【死因ログ圧縮束:例外】

【思い出ログ棚:例外】

【魔王相談窓口:例外】

【ログル人格形成:例外】


「例外ばっかり」

「コヨリ様が、例外ばかり作りました」

「え、わたしのせい?」

「良い意味でです」

「良い意味の例外なら、神様が困った顔するのおかしくない?」


 ログルは答えなかった。代わりに、宝石の光がもう一段、白く濁る。


 アドミニスが、少しだけ笑った。


「管理画面の扉を開けるよ。勇者ちゃんが知りたいなら、見せるしかない」

「今さら隠しても遅いからね」

「うん。遅いね」


 拠点の奥で、何か重いものが外れる音がした。椅子しかなかった白い部屋から、死因図鑑室、鑑定机、厨房、思い出ログ棚、罠訓練場、魔物休憩所、魔王相談窓口、仕様書保管棚、帰還門建設予定地まで増え続けた拠点。そのいちばん奥に、今までなかった扉が現れる。


 白い扉だった。


 けれど、清潔ではない。表面には、古い死亡ログが薄い爪痕みたいに刻まれている。


【管理画面の扉:開錠可能】


 コヨリは深呼吸した。


「ログル」

「はい」

「神様の部屋ってこと?」

「近いと思います」

「じゃあ、土足で行く」

「拠点内に靴の概念はありません」

「気持ちの問題!」


 コヨリは扉へ向かって歩き出した。白い窓の向こうで、アドミニスは止めなかった。止められないのか、止めないのかは分からない。


 ただ、管理画面の隅に、小さな文字が浮かんでいた。


【閲覧権限:勇者コヨリ】

【同伴権限:ログル】

【警告:閲覧後、未確認には戻れません】


「ネタバレ注意ってこと?」

「かなり、そうです」

「よし。こっちは千百回死んでる。今さらネタバレで傷つくと思うなよ、神様」


 そう言って扉を開けた瞬間、白い光が二人を飲み込んだ。

【今回の勇者ステータス】

現在シード:管理画面シード/ネタバレシード

死亡回数:1100回(この話では増加なし)

クラス:帰還者/死因学者/拠点管理人 複合状態

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション

獲得済み主要スキル:【危険察知 Lv.3】【未識別警戒 Lv.3】【足元確認 Lv.3】【射線確認 Lv.2】【満腹度管理 Lv.2】【帰還接続管理 Lv.1】【相棒同行意志 Lv.1】

【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【管理画面警戒 Lv.1】

拠点施設:【椅子】【死因図鑑室】【鑑定机】【厨房】【思い出ログ棚】【罠訓練場】【魔物休憩所】【シード地図室】【反省会テーブル】【拠点酒場】【魔王相談窓口】【魔王軍資料室】【死因研究室】【仕様書保管棚】【一フレーム道場】【帰還門建設予定地】【管理画面の扉】


【登場人物紹介】

・この話の焦点:神様に見つかった直後なので、全員の立場が「管理画面と向き合う側」に変わっています。

・コヨリ:神様の仕様書を読む側に回った幼女勇者。怒りと怖さを抱えつつ、帰る意志だけは曲げない。

・ログル:解析神獣。端末扱いから相棒へ再分類されつつある。冷静だが、もう完全に情がある。

・アドミニス:主神。世界を救いたかった目的は本物だが、説明不足と死亡ログ運用が最悪すぎるクソ運営。


【ローグライクあるある解説】

ボス前で一歩下がる、警告ログを見てから触る、未確定床を踏まない、という「一手を惜しまない安全確認」を拠点側で処理。最終盤でも基本は一歩確認です。


少しでも楽しんでいただけましたら、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると、とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。感想・評価・レビューお願いします!励みになります
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
ギルド酒場るすと公式サイト

異世界ゲームバー転生おじさん(42)
影森ゆらは今日も死ぬ
千回死亡幼女勇者 異世界Any%
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ