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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第1章 チュートリアルで死ぬ幼女勇者

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チュートリアル外の黒狼

チュートリアルです。

安全とは言っていません。

幼女勇者、初戦闘。

 黒い狼が、草の上を歩いてくる。


 足音がしない。

 それが一番いやだった。


 こよりは木剣を両手で握った。


「話し合いできるタイプ?」


 黒狼は口を開けた。


 牙が並んでいた。


「できないタイプ!」


 こよりは走った。


 村へ向かって、全力で走った。


 子供の足は遅い。

 けれど必死だった。


 草を蹴る。

 袋の薬草が跳ねる。

 木剣が腰に当たる。


 背後で風が鳴った。


 こよりは横に転がった。


 黒狼の爪が、さっきまで頭のあった場所を裂いた。


「初見殺しは犯罪!」


 叫びながら立つ。


 黒狼はもう振り返っていた。


 速い。

 いや、速すぎる。


 こよりは木剣を構えた。


 真正面から勝てる相手ではない。

 なら、目を狙う。

 鼻を叩く。

 一瞬ひるませて逃げる。


 頭の中で、ゲームの知識が勝手に並ぶ。


 敵の動き。

 距離。

 攻撃後の硬直。


 黒狼が沈む。

 ――その瞬間、世界が少しだけ粘った。

 草の葉が空中で止まり、黒狼の牙だけが、やけに大きく見える。


「え。今、考える時間ある?」


 でも、考えられることと、正解を選べることは別だった。

 こよりは木剣を突き出した。


 一手。


 世界が動いた。


 来る。


「今!」


 こよりは木剣を突き出した。


 だが、黒狼は横に消えた。


 足元の影だけが残る。


「え」


 左から衝撃。


 世界が回った。


 空。

 草。

 黒い毛。

 赤い目。


 こよりの体は地面に転がっていた。


 痛い、と思う前に、息ができなくなった。


 黒狼が近づく。


 木剣は手から離れている。


 こよりは、震える指で草をつかんだ。


「神様......」


 視界が暗くなる。


「これ、絶対......チュートリアルじゃない......」


 黒狼の爪が振り下ろされた。


 そこで画面が、真っ黒になった。


【死亡ログ】

【対象:勇者コヨリ】

【死因:チュートリアル外の黒狼に初見で挑まれた】

【評価:逃げ判断は良好。敵配置が幼女向けではありません】

【死亡回数:1】


 こよりの最初の冒険は、薬草三つで終わった。


勇者のクラス:勇者

保有スキル:なし

死亡回数:1


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