表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第1章 チュートリアルで死ぬ幼女勇者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/56

木剣をくれる少年と、薬草採取クエスト

チュートリアル村です。

木剣です。薬草です。

だいたい安全なはずです。

 異世界の空は、腹が立つくらい青かった。


 こよりは草むらから顔を上げ、口に入った葉っぱをぺっぺっと吐いた。


「帰りたい」


 開始三秒で本音が出た。


 目の前には、小さな村があった。


 村の入口には、木の柵がゆるく曲がりながら続いていた。石造りの井戸の横では、にわとりが一羽、こよりを見て首をかしげている。


「見ないで。わたしも状況わかってない」


 煙突から白い煙が上がり、畑では村人が普通に鍬を振っていた。

 普通すぎる。

 だからこそ、信用できない。


「平和な村ほど、外に変な犬とかいるんだよ。ゲームで学んだもん」


 いかにも最初の村、という感じだった。

 門の横には看板がある。


【ようこそ ミルカ村へ】


「ほんとにチュートリアル村だ......」


 こよりが近づくと、村人たちはにこやかに迎えてくれた。


「あらまあ、小さな勇者様だねえ」

「王都からのお達しは本当だったのか」

「まずは村長の家に行くといい」


 みんな親切だった。

 だからこそ怖かった。


 ローグライクをやり込んだこよりは知っている。

 親切な村の外に、親切じゃない敵がいることを。


 村長の家で話を聞くと、流れは神様の説明通りだった。


 魔王が北の城にいること。

 勇者は旅立たなければならないこと。

 まずは森の浅い場所で薬草を採ってくること。


「薬草採取......」


「勇者様には、これを」


 村長は木の剣を差し出した。


 小さい。

 軽い。

 そして、いかにも弱い。


「これで魔王を?」


「最初は誰でも一歩目からですじゃ」


「魔王、待ってくれるタイプ?」


 村長は笑っていた。


 答えはなかった。


 家を出ると、同じくらいの年の少年が待っていた。日に焼けた顔。短い髪。手には、もう一本の木剣。


「勇者様!」


「勇者様って呼ばれるの、まだ慣れない」


「おれ、カイ! これ、父さんが作った木剣。村長のより握りやすいと思う」


「いいの?」


「勇者様が魔王を倒せば、みんな助かるんだろ?」


 少年カイは、まっすぐ笑った。


 こよりは木剣を受け取った。


 こっちの方が、たしかに握りやすい。手の小ささに合わせて削ってある。


 それが、少しだけ嬉しかった。


「ありがとう。カイ」


「うん!」


 こよりは、木剣を腰に差した。


【装備変更】

【木剣:村長支給品】から【思いやりの木剣】へ変更されました。

【攻撃力:低い】

【握りやすさ:高い】


【現在ステータス】

【Lv1/HP15/15】

【装備:思いやりの木剣】

【防具:なし】


「防具なしって出す必要ある?」

「表示は正直です」

「正直すぎる表示、きらい!」


 光の文字にツッコんでも、返事はない。


 こよりは村の外へ出た。


 草原は広い。

 道は一本。

 森は近い。


 足元に小さな青い草が生えている。


「これが薬草かな」


 しゃがみ込む。

 採る。

 袋に入れる。


【薬草を入手しました】


「こういうのでいいんだよ。こういうので」


 こよりは慎重に周囲を見た。


 鳥の声。

 草の音。

 遠くの風車。

 今のところ危険はない。


 けれど、村の大人が言っていた。


 森の浅い場所。


 浅い場所という言葉は、深い場所があるという意味だ。


 こよりは木剣を握った。


「薬草を三つ採ったら帰る。欲張らない。宝箱があっても開けない。変な実は食べない。知らない穴には入らない」


 自分に言い聞かせる。


 一つ目。

 二つ目。


 三つ目の薬草を見つけた時、森の奥で枝が折れる音がした。


 ぱきり。


 こよりは固まった。


「帰ろう」


 判断は早かった。


 だが、帰り道の草が揺れた。


 黒い何かが、木々の間からこちらを見ていた。


 犬ではない。

 狼でもない。


 狼にしては、大きすぎる。


 その目が、赤く光った。


「......チュートリアル、だよね?」


 返事はない。


 黒い獣が、一歩出た。


 こよりは木剣を抜いた。

 手が震えた。


 村は、すぐそこに見えている。


 たぶん走れば間に合う。

 

 たぶん。

 それは、ローグライクで一番信用してはいけない言葉だった。


勇者のクラス:勇者

保有スキル:なし

死亡回数:0

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ