表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第28章 帰還同行シード――持ち帰り枠が足りません

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
298/340

同行者枠1――ログル仮承認

ログル、仮承認。仮でも、荷物ではありません。


 帰還門の光が、ログルの足元に丸い輪を作った。


【同行者枠:1】

【登録対象:ログル】

【分類審査:最終】

【状態:仮承認待ち】


「ログル、入って」

「はい」


 ログルは輪の中に入る。

 ベルは書類を構え、ゼルドは門の柱に手を置き、ネムは死亡受付側で判子を持つ。

 ハコベエ箱は試食禁止の札を貼られ、今日は本当に静かだった。


【対象確認】

【旧分類:神様側貸与記録端末】

【新分類申請:同行者】

【確認:自己意志】


「ぼくは、コヨリ様と同行します」


【確認:勇者意志】


「ログルは、わたしの同行者。相棒。荷物でも端末でもない。一緒に帰る」


【確認:拠点側承認】


 ゼルドが魔王印を掲げる。

「魔王ゼルド、承認する。ログルは勇者の相棒である」


 ベルが書類を差し出す。

「分類修正に異議はございません。むしろ旧分類に異議があります」


 ネムが判子を押す。

「死亡受付側も承認します。ログルさんがいないと、コヨリさんの死亡受付で会話が荒れます」

「そこ理由!?」


【再分類中】


 長い。

 長い長い長い。


 光の中に、死因ログと成功ログが浮かぶ。

 黒狼、ミミック、罠、時間、帰還門。

 初めて罠を避けた時。ミーナのパンを残した時。ゼルドと休戦した時。ベルが書類で神様に殴りかかった時。


【分類:相棒】


「ほら」


 ログルがこちらを見る。


「荷物じゃない」

「......はい」

「端末じゃない」

「はい」

「相棒」

「はい。相棒です」


【同行者枠:1】

【ログル同行:仮承認】


 その瞬間、帰還門の奥がひずんだ。


「仮承認で帰還線が再計算されています」

「今!?」

「今です」


【帰還線揺れ】

【足元注意】

【次の一手:静止推奨】


「動かない!」


 全員止まる。

 なのに、ハコベエ割引券だけがアイテム欄でぴょこっと跳ねた。


「お前ええええええええ!」


 叫んだので、ターンが進んだ。


「あ」

「勇者様」


 帰還線が跳ね、足元が半歩ずれる。

 その半歩が死因になった。


【死亡ログ】

【死因:ログル仮承認直後にハコベエ割引券へ反応し、帰還線揺れで足元をずらした】

【評価:仮承認中は割引券を無視しましょう】

【総死亡回数:1099回】

【新規獲得:相棒同行意志 Lv.1】


 拠点で、ログルの宝石に文字が残っていた。


【ログル同行:仮承認】


「よかった」

「はい」

「割引券はあとで封印する」

「商業接続が抵抗するかと」

「強すぎる!」


 同行者枠の白い札が、一枚だけ光っていた。

 昨日までは「0」と表示されていた場所だ。何度見ても、そこに「1」とある。たった一つの数字なのに、わたしはずっと見ていられた。


【同行者枠:1】

【登録対象:ログル】

【分類:相棒】

【承認:仮】


「仮」


 わたしはそこだけ指差した。


「仮って何」

「正式承認前の状態です」

「分かる。分かるけど、むかつく」

「ぼくは、仮でもうれしいです」


 ログルは静かに言った。いつもなら「油断しないでください」とか「仮は仮です」とか言いそうなのに、今日はそれを言わない。


 わたしは少し照れたので、わざとえらそうに腕を組んだ。


「ほら。荷物じゃない」

「はい」

「端末でもない」

「はい」

「相棒」

「......はい。相棒です」


 その返事だけで、千回死んだぶんの何かが少し報われた気がした。


 もちろん、神様のクソゲーは、そこで感動だけさせてはくれない。


【注意:仮承認状態では帰還門が不安定です】

【注意:同行者が離れた場合、承認が解除されます】

【注意:同行者が近すぎる場合、接触事故が発生します】


「距離感めんどくさ!」

「近すぎても離れすぎてもだめなようです」

「相棒判定が繊細!」


 試験床には、二本の青い線が引かれていた。一本はわたし用。もう一本はログル用。二人で並んで歩き、一定距離を保ったまま帰還門の前まで進むらしい。簡単そうに見える。簡単そうに見えるものは、だいたい罠だ。


「ログル、歩幅」

「ぼくは小さいので、二歩で勇者様の一歩程度です」

「じゃあ、わたしがゆっくり」

「床に時間制限があります」

「ゆっくりさせて!」


 床の端に、薄く数字が出た。


【同期歩行試験:30ターン】


 ログルは小さく息を吐いた。


「勇者様。ぼくが肩に乗るほうが」

「接触事故って出てた」

「はい」

「じゃあ並んで歩く」


 一歩。わたしが進む。ログルが二歩分、小さく走る。距離は保てている。床の青い線が明るくなる。


「いける」

「油断は」

「しない!」


 前方に、白い風が吹いた。軽い押し戻し風。同行者との距離を乱すタイプだ。わたしは踏ん張り、ログルは爪を床に立てる。


「ログル、右の壁!」

「はい!」


 ログルが壁際へ寄る。わたしも半歩寄る。青い線が保たれる。いい。いける。


 次に、床から【持ち帰り札】が一枚飛び出した。札はひらひら舞い、わたしの顔に貼りつく。


「見えない!」

「勇者様、止まってください!」

「止まるとターンは?」

「行動しなければ進みませんが、札が顔に貼りついている状態は危険です」

「顔面持ち帰り札!」


 札をはがすと一手。はがさなければ前が見えない。わたしはそっと札をつまんだ。はがす。一手。


 その一手で、ログルが二歩ぶん進んでしまった。距離が近づく。


【警告:同行者接触範囲】


「ログル、待って!」

「待っています!」

「世界判定が待ってくれない!」


 白い風がもう一度吹いた。ログルの体がふわりと浮き、わたしの胸元へ飛んでくる。反射的に抱きとめた。


【接触事故】

【仮承認:不安定化】


「抱っこもだめなの!?」

「相棒距離としては適切ですが、試験距離としては近すぎます!」

「試験が情緒を分かってない!」


 床が抜ける直前、ログルは小さく笑った。


「でも、落ちる時は一緒ですね」

「そこ喜ぶところじゃないいいいいいい!」

 落ちたあと、ログルは少しだけ毛並みを整えながら、「抱きとめていただいたこと自体は、嫌ではありません」と言った。わたしは顔が熱くなったので、帰還門の距離判定に文句を言うふりをした。相棒距離と試験距離が違うなら、両方を覚えるしかない。罠の種類が増えたと思えばいい。思えばいいけど、情緒を罠扱いするのは、やっぱり納得いかなかった。


 仮承認試験のあと、わたしとログルは床に線を引いて、相棒距離の練習をした。近すぎると不安定。遠すぎると同行判定が切れる。ちょうどいい距離は、思ったより狭い。


「相棒なのに、距離が大事なの変じゃない?」

「相棒だから、でしょう」

「ログルが急にいいこと言った」

「たまには言います」


 わたしは一歩下がる。ログルも一歩下がる。青い線は保たれた。次に、わたしが半歩だけ前へ出る。ログルが首を傾げる。


【警告:近すぎます】


「門がうるさい!」

「ですが、正確です」

「抱っこ禁止の相棒試験、心に悪い!」


 ゼルドが横で見学しながら、真顔で言った。


「余も相棒距離を測るべきか」

「魔王さんは通路距離から!」


 ベルがすぐにメモを取る。相棒距離、通路距離、書類距離。帰還門攻略は、いつの間にか距離の授業になっていた。


【今回の勇者ステータス】

現在シード:帰還同行シード

死亡回数:1099回

クラス:帰還者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【帰還門感知 Lv.3】

【死因学習 Lv.5】

【総合盤面確認 Lv.4】

【帰宅猶予線形成 Lv.1】

【帰還持ち帰り管理 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【相棒同行意志 Lv.1】


【登場人物紹介】

コヨリ:仮でもログルが相棒分類になったことを喜ぶ。

ログル:相棒と言われて素直にうれしそうにする。

帰還門:情緒を理解しない距離感試験を出す。


【ローグライクあるある解説】

同期歩行試験回。護衛対象や同行者と距離を保つタイプのミッションは、足並みが崩れるだけで事故になります。押し戻し風、顔面札、接触判定で細かい一手のズレを死因にしています。 仮承認回。識別済みでも呪いが残る腕輪のように、「承認されたが安全ではない」状態です。同行者枠に入ったあとも、距離や判定で死ぬ緊張を残しています。


ログル仮承認の続きを楽しみにしていただけましたら、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。感想・評価・レビューお願いします!励みになります
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
ギルド酒場るすと公式サイト

異世界ゲームバー転生おじさん(42)
影森ゆらは今日も死ぬ
千回死亡幼女勇者 異世界Any%
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ